【拾伍】現実はいつも残酷で
文字数 770文字
「それは間違いなく『地獄変』の連中だ。ひと昔前に流行ったカラーギャングみたいなもんで、奴ら、メンバー全員服の色を黒で統一してる。ライヴハウスにもそんな奴がいたろ?」
祐太朗は淀みなく肯定した。上がりきっていた息もようやく収まってきている。弓永が、やっぱりなと納得すると、祐太朗は、
「でも、連中、何であんな首尾よくおれを狙えたんだ?」
「奴ら、最近は近隣の新興勢力とやり合ってて気が立ってるんだ。きっと、お前をそのお仲間か何かだと勘違いして、ライヴハウスから追跡してたんだろうよ」
「おれを暴力しか能のないチンピラと一緒にしないで欲しいね」
「まぁ、そういうな――にしても、お前、相変わらずケンカだけは強いよな。運動神経は学内でも底辺だったのに」
「ケンカはセンスだ。運動神経じゃない」
「だとしても、だ。しかし、ついてたな。地獄変については警察内部でも対策案が出てるんだが、奴らの嗅覚は野良犬並でな。警察が出張るとすぐその姿を消しちまう。――でも、お前に危ないって声を掛けたのは誰だったんだ?」
それは祐太朗にもわからなかった。ひとついえるのは、あの声は女性の物で、しかもどこか懐かしい感じがしたということだ。それを聞いた弓永は何かを確信したように唸った。
「何だ?」
「いや、何でもない」
「いってみろよ。正解したら地獄へのペア招待券でもくれてやるさ」
「そんな片道切符はいらんね。それに地獄にいくにも、お前なんかと誰が一緒にいくか。……ま、とにかく気をつけな。何かあればおれに連絡しろ」
「弓永さん――」詩織が割って入った。「さっきいってたショウちゃんのお父さんって?」
口ごもる弓永――詩織は何もいわずに弓永が口を開くのを待った。
「中西翔太の父親は、地獄変のリーダー、本郷慎也なんです」
祐太朗は淀みなく肯定した。上がりきっていた息もようやく収まってきている。弓永が、やっぱりなと納得すると、祐太朗は、
「でも、連中、何であんな首尾よくおれを狙えたんだ?」
「奴ら、最近は近隣の新興勢力とやり合ってて気が立ってるんだ。きっと、お前をそのお仲間か何かだと勘違いして、ライヴハウスから追跡してたんだろうよ」
「おれを暴力しか能のないチンピラと一緒にしないで欲しいね」
「まぁ、そういうな――にしても、お前、相変わらずケンカだけは強いよな。運動神経は学内でも底辺だったのに」
「ケンカはセンスだ。運動神経じゃない」
「だとしても、だ。しかし、ついてたな。地獄変については警察内部でも対策案が出てるんだが、奴らの嗅覚は野良犬並でな。警察が出張るとすぐその姿を消しちまう。――でも、お前に危ないって声を掛けたのは誰だったんだ?」
それは祐太朗にもわからなかった。ひとついえるのは、あの声は女性の物で、しかもどこか懐かしい感じがしたということだ。それを聞いた弓永は何かを確信したように唸った。
「何だ?」
「いや、何でもない」
「いってみろよ。正解したら地獄へのペア招待券でもくれてやるさ」
「そんな片道切符はいらんね。それに地獄にいくにも、お前なんかと誰が一緒にいくか。……ま、とにかく気をつけな。何かあればおれに連絡しろ」
「弓永さん――」詩織が割って入った。「さっきいってたショウちゃんのお父さんって?」
口ごもる弓永――詩織は何もいわずに弓永が口を開くのを待った。
「中西翔太の父親は、地獄変のリーダー、本郷慎也なんです」