第3話
文字数 480文字
チャラついたカップルと別れ、少し休憩をはさんでからしばらく歩くと、背中に何かが落ちる気配を感じた。
「段田さん後ろ、後ろ」音声さんが大声で背中のリュックを指さしてきた。
「何? 何?」と慌ててそれを地面におろして確認してみると、体長十センチほどの大きなクモが乗っていた。
「タランチュラだ! 猛毒を持っているぞ」金井ディレクターが叫んだ。
タランチュラが日本に生息していないことは、もちろん承知していた。だが、当然、口に出すような野暮はしない。おもちゃと丸わかりのそれをつまみ上げると、敢えて首元に持っていく。
「うっ、痛い、噛まれた!」
よろよろとその場に倒れ込むと、バタバタと大げさに暴れまわった。
大丈夫かとスタッフたちが駆け寄ると、カメラマン扮するガイドが、小型の注射器の様な物を取り出し、手際よく段田の腕に当てた。
頭の中で『その時、段田フミヒロは猛毒のタランチュラに襲われたが、スタッフの用意していた血清により、一命を取り留めた』というナレーションが流れた。急に元気を取り戻したという体で再び歩き出すと、その後もヘビやサソリなどで同様の茶番を演じていく。
「段田さん後ろ、後ろ」音声さんが大声で背中のリュックを指さしてきた。
「何? 何?」と慌ててそれを地面におろして確認してみると、体長十センチほどの大きなクモが乗っていた。
「タランチュラだ! 猛毒を持っているぞ」金井ディレクターが叫んだ。
タランチュラが日本に生息していないことは、もちろん承知していた。だが、当然、口に出すような野暮はしない。おもちゃと丸わかりのそれをつまみ上げると、敢えて首元に持っていく。
「うっ、痛い、噛まれた!」
よろよろとその場に倒れ込むと、バタバタと大げさに暴れまわった。
大丈夫かとスタッフたちが駆け寄ると、カメラマン扮するガイドが、小型の注射器の様な物を取り出し、手際よく段田の腕に当てた。
頭の中で『その時、段田フミヒロは猛毒のタランチュラに襲われたが、スタッフの用意していた血清により、一命を取り留めた』というナレーションが流れた。急に元気を取り戻したという体で再び歩き出すと、その後もヘビやサソリなどで同様の茶番を演じていく。