１５
文字数 1,019文字
「ペアシューはいかが？」
あまりにも息が合っていたので、それが二人分の声だと気がつくのに時間がかかった。そして、それが羊とは似ても似つかない声であることも。
えっ、何ですって？
もうすぐ終点、ひょうたん型のシューはいかが？
小舟は三温糖とかザラメみたいな色の砂浜にめり込むようにして止まっていた。マドレーヌみたいな形をしたクッキーが点々と見える。羊はもうどこにも居なくて、毛糸の束の代わりにあめの糸で作ったブランケットがゾーイの膝に乗っていた。近くにはカニの形をした飴玉が転がっている。
そこは丘のような小島で、その頂上にはそっくりの双子がいた。足は小さいのか座っているのか見えない。
丘のさらに奥にはもっと大きな、島か大陸か、広々と続く陸地が見えた。でも大陸って大きな島みたいなものよね、とゾーイはぼんやり考えた。
ホイップクリームと
カスタードクリーム
「 「彼は混ざっているのが苦手だったね」 」
だから君は……
だから君は……
何の話をしてるの？
言いかけて、ゾーイは急に自分がどこにいるのか気づいた。奥のほうに大きくそびえたつ塔が見えたのだ。
ここ……まさか、女王様の城の前？
えっ、ちょ、ちょっと、ここに着くの早すぎやしない？！
あたしをここに突き落としたウサギとさっきの男の子も捕まえなくちゃいけないのにもっと遊んでいたかった？
もっと探検したかった？
違う、違うわ。
ここに留まりたいなんてありえないけど、こんなの急すぎるじゃない！！
……そう、チェスをしてたらいきなり王と王がかちあっちゃったみたいだわ。
こんなの罠としか思えない
どんなに景色が美しくても、いまのゾーイは絶対に、ここには留まり続けたくなかった。
それが何故なのか、自分でも分からなかった。
……それがここ
……ここがマラコーの海
マラコーによって浮いたコマは、盤のルールには従わない
そう、もう盤なんてはるか遠くに行っちゃった
最短距離なんてない
正しいルートなんてない
そもそもここは現実だと思ってるの？
忘れていること、覚えてないの？
二人の言うこと、そしてそのタイミングはさっきまでと違ってだんだんずれてきた。
この二人の言っていることは同じ？
それとも違う？
……ああ、あたし、
どっちが先に喋っているのかしら、
どのセリフとどのセリフが対応してるのかしら？
（混乱、してる）
*＊To Be Continued＊*
