第9話

文字数 1,074文字

「すいませ~ん、島田様~~。今~、C区と~交戦中なので~~す。ですから~怪我もしていますし~。私たちの事は~~。どうか気にしないで下さい~~」
 無表情の島田が僕の隣に座った。
「なんか起きたの?」
 途端に優しくなった島田には、お冷が配られる。
 弥生が島田の席の隣に座ると、
「夜鶴さんに言ったほうがいいのかな。怪我もしてるし……何か起きそうよ……」
 僕の腕の怪我を見て不安気な声を発した。
 島田が瞬く間に好戦的な顔になった。
「いや、島田さんや夜鶴さんたちを巻き込みたくはないんだ。それと、3年前の野球ではすまなかったね。確か右肩だったっけ。僕はA区にある女性を探しに来ただけなんだ」
 僕とヨハにもお冷が配られる。
「いやいや! 気にしてねーぜ! 右肩だったかも忘れたー! もう3年前だしな! それより、なんかスリルあるんじゃねえか?! 俺に手伝わせてー!!」
 島田は3年前から全然変わっていなかった。
 弥生もそうだ。
 島田と弥生はタンメンと餃子二皿を頼んだ。
 注文したチャーシューメンと野菜炒めが届いた。
 チャーシューメンの肉はトロトロとしていて、口の中に油をまんべんなく染み込ました。すごく美味だった。
 野菜炒めを食べずにいると、ヨハと島田が口を開いた。
「雷蔵様~~。お野菜を取りませんと~~。いけませ~ん」
「そうだぞ! 野菜を食べて、俺にスリルと戦争くれ!!」
「雷蔵様~~。お野菜~~」
「野菜食べて、俺にスリルー」
 
 素晴らしい食事の後。

 外は雨から雪になっていた。
「なあ、何か起きたんだろ。なら協力出来るんじゃないのか?」
 島田は食い下がる。
「いや、命の危険があるんだ」
「大丈夫だって、藤元がいるんだぜ」
 弥生がニッコリと微笑んで、
「何か危険なことが起きたら、すぐに言ってね。うちの旦那も私も協力するから。すぐにすっ飛んでいくからね……」
 心配げな弥生が好戦的な島田を青緑荘へ連れて行くと、僕は非合法なことをしているんだったと、今になって気が付いた。スリー・C・バックアップの横流しをしようとしているんだった。
 僕は一体?
「雷蔵様~~。そんな険しい表情~~。初めて見ました~~? お加減いかがですか~~?」
 ヨハの間延びした声が聞き取りにくくなった。
 河守 輝の言葉が頭に響いた。
(因果応報という言葉……知らないの。……悪いことを密かにしていても、いつかは日の目にでるものよ……)
 
 晴美さん……。
 僕は君を……。
 因果応報か……。
 今ではその言葉が怖くなった……。
 でも、僕はどうしてもお金がほしいんだ……。
 僕はこれからどうしたらいいんだ……。
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