第4話

文字数 805文字

「店のオーロラの下でシティコーラルかぁ。
タカフミさん流石だなー。俺にも1杯」
「かしこまりました」

鉄矢さんの言葉が気になって僕は聞いた。
「何か意味があるんですか?」

答えてくれたのは美味しそうに一口飲んだ
マダムだった。

「シティコーラルはね、
華やかで都会的なブルーと緑のお酒を
幅を持たせた『コーラルスタイル』の塩が
引き立ててくれる。
都会にいながらリゾート気分を味わえる
そんなカクテルなのよ」

「まるでこのオーロラみたいだろ」
鉄矢さんはタカフミさんと乾杯していた。

僕は周りを見渡した。

BARの中でオーロラを見ながら
お酒を楽しむ人達。
この権利を大枚はたいて欲しがる人もいる。
でも、その人たちには見えないオーロラ。
お金にはならないし
お金にはかえられない。

だけど…?
だから…?

「凄く贅沢ですね」

ポツリと呟く僕に、3人は静かに微笑んだ。
そして鉄矢さんは僕に聞いた。

「ホントはわかってるんだろ?
お前に情報が流れたみたいに、たまに
外部でも見えちゃう奴がいる。
タイミングが合えば映像に捉えることが
出来るかもしれない。
お前の根性と探索能力があれば
ここでスクープを狙えるだろう。
お前はどうしたい?
一攫千金して豪華クルーズで南極行って
オーロラを見るか。それとも…」

それとも…

「僕、ここでオーロラ見る事にします」

ここで『すこし不思議』と隣り合わせに
毎日を過ごしている人達と一緒に
普通の生活をしてみたいと思った。

子供の頃のあの僕の毎日みたいに。

すると

「お、兄ちゃん。ここに居つく気だな」
「オレ早速頼みがあるんだけど、
ばあちゃんの猫がいなくなってさー。
探してくんない?」
「私は音信不通のダーリンを探してぇ」
「もうすぐ同窓会なんだけどこの子が
見つからなくてさぁ」
「そんなことよりコロッケサンドの
いいアイデア見つけてくれよ」


鉄矢さんは面白そうにこう言った。
「迷探偵誕生だな。しっかり金とれよ」


こうして僕の就職難は呆気なく終わり
探偵人生がスタートした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み