第2話

文字数 1,073文字

「さっきからなんなんですか皆さん?
それって隠さなきゃいけない情報なんじゃ
ないですか?
『空飛ぶ絵のペンギン』なんて
不思議現象にもほどがあるでしょ!?
しかも僕は余所者なのになんでそんなに
オープンに話してるんですかっ?
僕がそれを公にして金儲けしようって
企んでるかもしれないでしょう!」

僕は何をこんなに怒っているんだろう?
みんなはなんで落ち着いているんだろう?
怒りのせいなのか
空腹のせいなのか
フラフラしている僕に

「まあ、余所者には見る事できねーからな」

そうぶっきらぼうに言ったのは
『鉄矢さん』だった。

「そうなのよねー。
私達も見ようと思ったら見えなくなったり
けっこう気まぐれ現象よね」
「だな。よそモンでたまたま運良く見れても
次見ようと思ったらペンギン動かないしな」
「証拠は残らないんだ。
映像とかには動いて映らない」
「だからさ、別に言いふらす事もしねーけど
隠す事もねーんだ」

僕はヘナヘナと椅子に座り込んだ。
そうか。そう言う事か。
じゃあ僕はこの1ヶ月何をしてたんだろう?

僕には見えないんだ…。


「だけどさ、お前は余所者じゃないらしい」

「え?」

『鉄矢さん』の言葉に不意を突かれて
突然迫り来る彼から逃げる間も無く
僕の頭はヒョイっと上に向けられた。

「………!!!」

声を出すことは出来なかった。

僕の目に飛び込んできたのは
店の天井。ではなく…


真っ暗な星空。
そして
頭上に広がる一面の緑のオーロラの帯。


「これ、お前にも見えてるんだろ?」
鉄矢さんの声が優しく聞こえた。

「オーロラなんて初めて見たわ」
「店にいながら満天の星とオーロラかぁ」
「最高だぁなぁ」
「兄ちゃん、ペンギン達に気に入られたな」
「じゃないとここに来れないもんな」
「あなたこの店どのくらい探したの?」
「1週間か2週間か…」

「1ヶ月です…」
僕はあまりの光景にまだ呆然としながら
ボンヤリと答えた。

「1ヶ月!!」
「執念だねー!お前粘り強えーな!」
「気に入ったぜ兄ちゃん!」
「ペンギン達もそこに惚れたのかね?
鉄ちゃん?」


「まあそれもあるけど…コイツはさ、
稼ぎたいとか有名になりたいとか
そんなのは実は二の次で
単純に見つけたかったから探し続けたんだ。
『空飛ぶ絵のペンギン』を見つけたいって。
だからペンギン達はそれに応えたんだ、
と、俺は思うね」

僕は息を飲んだ。
多分それは
自分でも気づかなかった事を
言い当てられたから。

「やりたい事に理由なんていらない。
と、俺は思うけどね」

ホントに?
仕事にならないのに。
お金にならないのに。

「南極の蜃気楼の次は南極のオーロラね。
とっても素敵」

いつの間にか僕の隣で
上品な女の人が一緒に上を見上げていた。
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