第37話 脱出
文字数 1,648文字
信二のそばに古代史研究会のメンバーが駆け寄る。
「信二、大丈夫?」
弥生が信二の腕の傷を見る。
「ああ、かすり傷だ。血も止まったし、心配ないよ」
弥生がほっとした表情を浮かべる。
「信二さん、すごいですね。見直しましたよ」
「何だよ、金次郎。見直しましたって」
「でも、正直、信二さんがサタケに勝つことよりも、斬られることしかイメージができなくて、心配でした」
「何だよ、伊代まで。そんなに俺を信用していないのかよ」
そんなやり取りにメンバー全員が笑顔を見せる。
「小町先輩はどうやってここに?」
弥生が小町を見て質問する。
「古墳パークに行ったときに、葛城さんに会ったのよ。そしたら案の定、古代史研究会のメンバーの姿が見えないって話があって」
と言って、小町があきれた顔で信二ら三人の顔を見る。
「まあ、いろいろあって。で、いつの間にかこうなっていて……」
三人は頭をかいて照れ笑いを浮かべている。
「先生からも無茶をするなって言われてたわよね」
藤原も苦笑いを浮かべている。
「それはともかく、その後葛城さんにクニやサタケのこと、あとここへの入り口を聞いて、みんなを追って来たのよ。で、ここに着いてからは秘かに古墳の後ろに隠れて、じっと様子をうかがっていたのよ」
「しかし、一人でここまで来て、しかもあのサタケに近寄って蹴りを見舞うなんて、相変わらず大胆ですね……」
金次郎が驚いた顔で小町を見ると、他のメンバーもうなずく。
「そういえば、サタケ、いや伊東君は?」
藤原が肩を落としているサタケのほうを見る。
「刀が折れたから、サタケはもういなくなったのよ。ね、伊東君?」
と呼びかけて、小町がサタケに近づこうとする。
その瞬間、肩を落としていたサタケが立ち上がる。小町はとっさに身構える。
「よくも、私の長年の野望を打ち砕いてくれたな。このままでは済まさない。お前たちを道連れにしてやる!」
サタケはそう叫ぶと、その場に倒れ込んだ。
すると、サタケが乗り移ったときから伊東の体から出ていた怪しい青白い妖気が消えていった。
「う、うん。俺は一体どうしたんだ? 確か刀を手にして……」
「伊東君」
「伊東さん!」
メンバーは伊東が元に戻ったのを見て喜ぶ。
しかし、次の瞬間、全員の顔色が変わる。
突然、地下都市が大地震が来たかのように激しく揺れ始めたのだ。
「何? 何が起きたの?」
全員がパニック状態になる。
揺れはさらに激しくなる。地面にはひびが入り始める。そして、地下都市内の櫓や建物が次々と倒れていく。天井の岩も少しずつ崩れ始めていた。
「みんな、ここを脱出しよう」
信二がそう叫んだ瞬間、
「無理よ。門のところはすでに天井が崩れて塞がれている。あそこは通れないわ」
真理が門の方向を指さす。
「そんな……真理さん、他に入り口はないんですか?」
「他に……」
真理は少し考えた後で、何かを思いついて藤原と弥生の顔を見る。
「お二人は古墳のほうからここに来たんですよね」
真理の顔を見た藤原も声を上げる。
「そうか。僕たちがきた道はまだ塞がれていないかもしれない、行ってみよう」
藤原が古墳からここへ来た入り口に向かって走り出す。他のメンバーも全員ついていく。
「大丈夫だ。ここは通れる。ここから脱出しよう」
「はい!」
全員がその入り口に入っていき、地下都市を脱出する。
最後まで残っていた真理が、崩れていく地下都市をじっと見ている。
「真理さん、ここも崩れそうだ、早く逃げないと!」
信二がいつまでもその場から動かないでいる真理に声をかける。
「わかりました」
真理は目を閉じて手を合わせると、地下都市に向かって祈りを捧げる。
「サタケ、それにここで暮らしていたみなさん。どうか安らかに……」
目を開けると、真理もすぐに地下都市を離れていった。
その瞬間、天井の岩が一気に崩れて、地下都市は完全に崩壊してしまった。
「信二、大丈夫?」
弥生が信二の腕の傷を見る。
「ああ、かすり傷だ。血も止まったし、心配ないよ」
弥生がほっとした表情を浮かべる。
「信二さん、すごいですね。見直しましたよ」
「何だよ、金次郎。見直しましたって」
「でも、正直、信二さんがサタケに勝つことよりも、斬られることしかイメージができなくて、心配でした」
「何だよ、伊代まで。そんなに俺を信用していないのかよ」
そんなやり取りにメンバー全員が笑顔を見せる。
「小町先輩はどうやってここに?」
弥生が小町を見て質問する。
「古墳パークに行ったときに、葛城さんに会ったのよ。そしたら案の定、古代史研究会のメンバーの姿が見えないって話があって」
と言って、小町があきれた顔で信二ら三人の顔を見る。
「まあ、いろいろあって。で、いつの間にかこうなっていて……」
三人は頭をかいて照れ笑いを浮かべている。
「先生からも無茶をするなって言われてたわよね」
藤原も苦笑いを浮かべている。
「それはともかく、その後葛城さんにクニやサタケのこと、あとここへの入り口を聞いて、みんなを追って来たのよ。で、ここに着いてからは秘かに古墳の後ろに隠れて、じっと様子をうかがっていたのよ」
「しかし、一人でここまで来て、しかもあのサタケに近寄って蹴りを見舞うなんて、相変わらず大胆ですね……」
金次郎が驚いた顔で小町を見ると、他のメンバーもうなずく。
「そういえば、サタケ、いや伊東君は?」
藤原が肩を落としているサタケのほうを見る。
「刀が折れたから、サタケはもういなくなったのよ。ね、伊東君?」
と呼びかけて、小町がサタケに近づこうとする。
その瞬間、肩を落としていたサタケが立ち上がる。小町はとっさに身構える。
「よくも、私の長年の野望を打ち砕いてくれたな。このままでは済まさない。お前たちを道連れにしてやる!」
サタケはそう叫ぶと、その場に倒れ込んだ。
すると、サタケが乗り移ったときから伊東の体から出ていた怪しい青白い妖気が消えていった。
「う、うん。俺は一体どうしたんだ? 確か刀を手にして……」
「伊東君」
「伊東さん!」
メンバーは伊東が元に戻ったのを見て喜ぶ。
しかし、次の瞬間、全員の顔色が変わる。
突然、地下都市が大地震が来たかのように激しく揺れ始めたのだ。
「何? 何が起きたの?」
全員がパニック状態になる。
揺れはさらに激しくなる。地面にはひびが入り始める。そして、地下都市内の櫓や建物が次々と倒れていく。天井の岩も少しずつ崩れ始めていた。
「みんな、ここを脱出しよう」
信二がそう叫んだ瞬間、
「無理よ。門のところはすでに天井が崩れて塞がれている。あそこは通れないわ」
真理が門の方向を指さす。
「そんな……真理さん、他に入り口はないんですか?」
「他に……」
真理は少し考えた後で、何かを思いついて藤原と弥生の顔を見る。
「お二人は古墳のほうからここに来たんですよね」
真理の顔を見た藤原も声を上げる。
「そうか。僕たちがきた道はまだ塞がれていないかもしれない、行ってみよう」
藤原が古墳からここへ来た入り口に向かって走り出す。他のメンバーも全員ついていく。
「大丈夫だ。ここは通れる。ここから脱出しよう」
「はい!」
全員がその入り口に入っていき、地下都市を脱出する。
最後まで残っていた真理が、崩れていく地下都市をじっと見ている。
「真理さん、ここも崩れそうだ、早く逃げないと!」
信二がいつまでもその場から動かないでいる真理に声をかける。
「わかりました」
真理は目を閉じて手を合わせると、地下都市に向かって祈りを捧げる。
「サタケ、それにここで暮らしていたみなさん。どうか安らかに……」
目を開けると、真理もすぐに地下都市を離れていった。
その瞬間、天井の岩が一気に崩れて、地下都市は完全に崩壊してしまった。