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文字数 732文字

 だが彼らは、ついぞ名刺を渡さなかった。
地方局かなとも思ったが、まあ良いかと。
私は資料を取り出そうとしたら。彼らが地図を広げた。
ゼンリンではなく国土地理院の物だった。
まったく素人めがと、私はその上に資料を乗っけた。そして、

「何処が宜しいですか?」

と聞けば。ディレクターが資料を退けて。

「この辺りの山の中。無いかな?」

と地図の一地点を指差した。
 成る程、事故物件の心霊騒ぎの下調べは済んでいるんだなと、私はその住所を調べた。
まったく、分かりづらい。
 すると一件、目ぼしい物件があった。
しかも、一戸建て。近くに舗装された道路に、街灯もあるし、勿論、人が住める物件だった。

 何故、事故物件なのかは、資料の最後に書かれてあった。
一家心中、トチ狂った親父が嫁と子供を殺して自分も首をつったとあった。
何とも悲惨だ。幽霊でも出そうな話だった。
 だがこいつは、山の中だから事故物件好きの、例の社長なら買うだろう。
何せ、事故物件は格安だ。
町中なら建て直しもきくが、こんな山の中なら持ち主は早く売りたいだろう。
うってつけだった。私は、

「外を撮るのは無しね。売れるから」

と言うと。

「分かった。下見、良いか」

とディレクター、私は頷いた。
 すると、不動産屋の社用車ではなく。彼らの車に乗せられた。
 成る程ね、何でだろう?他のテレビ局に見られたくないのかな?不動産屋の社用車には、社名が横に書いてあるからな。
 ふーん、大した機密主義だ。

 その場所は、街から離れた山の中。車で1時間近くかかった。遠いと思っていると、ようやく着いた。
業者を頼んで草は刈ってあったので。
突然、ポツンと一軒家の感じは否めなかった。
しかも静かで、空気も良さそうだが、コンビニも自販機も無い。
 当然、バス停すら無かった。
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