不動産屋あるある話

文字数 627文字

 テレビ取材は有り難いのだが、事故物件は困りものだ。

 私の勤める不動産屋に良くあるのが事故物件の話だ。いわゆる、人が老衰や病気以外で死んだ場合。その事を借り主に報告する義務がある。大抵、聞かなきゃ教えないのと言うのが、普通だ。だが、うちの社長は曲がった事が大嫌い。商売は正直が命とすら言う人だ。

 だから、いくつか抱えている事故物件を貸すとき。又は売るとき、必ず説明するのだ。
事故物件が売れるのか?と思うだろう。
これが意外と売れるのだ。
 別に土地が欲しいだけではなく。その建物も有効活用するのだ。
例えば社宅とか事務所とか、店舗にする豪の者までいる。

 常連の社長曰く、人が死んだら事故物件なら、大抵事故物件だわな、だそうである。
確かに。
 そんなある日、仕事をしていると二人の男が現れた。スーツを着た男とジャンパーを羽織った男が来た。
う~ん、嫌な予感、と思えば。
そいつらはいきなり、

「事故物件を探している」

と言った。
やっぱり!こいつら多分、テレビ局の連中だ。
私はニヤリと笑って。

「テレビの取材ですか?」

と聞いた。彼らは狼狽えて、

「そうだ、それなりの謝礼は払う」

と慌てて言った。
 謝礼は有り難いが、物件の評判が悪くなると困るのだ。そこで、

「映しても良いけど、回りは分からない様にね」

と念を押すと。笑顔でホッとした様に、

「勿論だ!」

と強調した。
 返事をしたのは、背広の男。
どうやらこいつが、ディレクターだな。
そしてジャンパーの男は、カメラマンか演出家だなとふんだ。
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