けしごむ 

文字数 354文字

 
 押しつけられて
 ぼくは自分を削った。

 敷かれた紙の上に散らされた鉛筆の粉
 ぼくと一緒に死んでいく。

 千切れてく体は痛くなんてないけれど
 ぼくにさらわれていく文字たちはどうなんだろう。
 声は聴かせてくれない。
 だってぼくがその声を失わせていくんだから。

 黒だったきみと
 白だったぼくが
 混ざりあって灰色になり
 ノートの上からも指先からも捨てられてしまう。

 手のひらに(はら)われて落ちていく。
 吹きかけられた息で飛んでいく。
 もう終わり。
 ぼくの存在理由はほんの一瞬だけだった。

 遠ざかっていく机を見ながら、ぼくは思う。
 ぼくの命を削って作ったその白い場所に
 新しい何かが生まれるんだと。
 それはきっと
 今度こそ素敵な何かなんだと。

 あの人の手に鉛筆が持ちかえられる。
 願いを込めて
 ぼくは床に散った。
 
 
 
 
 
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