第3話 え? また・・・・?
文字数 3,757文字
カッパと別れた翼 は、なぜ急にカッパが見えるようになったか考えた。
だが、思い当たる節 はない。
「う~ん、分からん!
分からないものは、分からない!
つまり、分からないことは考えても無駄。
それに今までカッパなんて見たことはなかった。
だから、これからも見えるはがない。
疲れてカッパを見たような気がしただけに違いない。
うん! そうだ、そうに違いない!」
そう自分に言い聞かせた。
そして気分を切り替え、デートの待合場所へと急ぐ。
雪はあいかわらず降り続き、足下の雪は徐々に嵩 を増す。
いつの間にか辺りは暗くなり街頭が点いていた。
だが降る雪に乱反射され役に立っていない。
それにもかかわらず雪明かりで道は見えるので歩くのには困らない。
ただ、対向して走ってくる車のヘッドライトが眩 しい。
おそらく雪で前が見えづらいのでアップにして走る車が多いのだろう。
迷惑この上ない。
雪が車のヘッドライトを拡散し、眩 しくないようにしてくれないだろうか?
そのくらいは役にたってくれないかと翼は思った。
暫 く歩いていると小走り にこちらへやって来る人影が見えた。
「あぶないなぁ雪道で走るなんて、こけてもしらないよ・・・。」
翼は呆 れて、そう呟 いた。
だが・・。
長野市の人は転 びそうで転ばないのである。
大学時代、この市にスキー帰りに寄ったことがある。
その時、観光がてら雪道を歩いた時のことだ。
足が雪で滑るため、恐る恐る慎重に翼は歩いていた。
それを横目にこの市の人達は皆、雪などないかのように早く歩くのである。
いや、歩くというより足を滑らせてスキーをしているかのように進む。
関心した翼はそれをまねた。
そして物の見事にコケたのである。
それも盛大に、両手をアワアワとさせながら・・・
周りの人は、翼がこけるのを見ていたのだろう。
笑いながら大丈夫かと助け起こしてくれたのである。
幸いにも雪がクッション代わりをして、倒れても怪我をすることはなかった。
しかしこれは翼にとって大学時代における忘れられない黒歴史の1ページとなった。
大変に恥ずかしく忘れたい記憶の一つと言える。
このような経験から、翼は今、急ぎながらも慎重 に歩いているのである。
こちらに向かってくる人であるが、後ろから絶えず車のヘッドライトがあたる。
そのためシルエットのように黒く見えるだけで、顔や服装などはわからない。
シルエットの様子からは、小柄な女性のように見えた。
ただ・・・
冬で厚着をしてプロポーションなどわかるはずはないのであるが・・。
見惚 れるほどのプロポーションである事が見て取れた。
目が釘付け となっていた翼は、慌てて視線を反 らした。
女性をまじまじと見つめて、痴漢とかに思われたらまずいと思ったからだ。
この翼の行動は間違ってはいない。
しかし・・。
しばらく目を釘付けしていたのに、急に視線をそらすのはわざとらしく見える。
だが初心 な男とは、このような行動をとるものなのである。
翼が俯き 加減に歩いていると、やがてその女性が直 ぐ側に来た。
そして横を通り過ぎようとした時である。
女性の足下が目に入った。
「えっ!!」
思わず声を上げた翼に、女性がギクリとして立ち止まる。
翼は恐る恐るゆっくりと顔を上げ、その女性を見た。
女性は驚いた顔で翼を見ていた。
女性は戸惑った様子で翼に声をかける。
「あ、あの・・。私が見えるの?」
翼はその言葉に、コクリと頷 いた。
翼が先程見た女性の足下 であるが、素足だったのである。
それも水かきが付いていた。
そう、彼女はカッパであった。
今日、二人目?の未知との遭遇である。
その女性はというと、すこぶる美人であった。
冬なのに薄いセクシーな服を着ており、ハチキレンバカリの胸元だ。
思わず翼はチラリと胸元を見てしまい、慌てて目を逸 らす。
「あらまぁ、顔を赤くして、可愛 いこと。」
そう言って、その人?は妖艶 に微笑 んだ。
翼はなんとも罰が悪く、また下を向く。
「ねぇ、君、私が本当に見えるのね。」
「・・・はい。」
「へぇ~・・、百年ぶりかしらね、そういう人は・・。」
「え? 百年ぶり?!」
驚いて翼は顔をあげた。
するとその女性は、すこし拗 ねた顔をする。
「坊や、私の年齢のことを考えたでしょ?」
「あ・・、いや、その・・・。」
「ふふふふふふ、まぁ、いいわ。
私達は人と違う世界の住人だもの、驚くのは無理はないわね。
でもね、言っておくけど、私は人間に例 えると17歳くらいよ?」
「へっ!!」
翼は素っ頓狂 な声を上げた。
いやいやいや! 17歳なんて有り得ないでしょ!
だって妖艶の美女ですよ!
現代の17歳の女性なんて言っては失礼ですけど、今の彼女とくらべたら小学生のように見えますよ?
きゃあ~、このペンダント、かわゆい! だの、ねぇねぇ、この服どう? 可愛すぎない?とか言って、かわいこぶりっこ全盛期の年齢ですよ?
かわいさだけを求めて、妖艶さなどという言葉はゴミ箱に捨てているんですよ?
おそらく20代の女性でも同じだと思うよ?
それに、このカッパの女性のようなプロポーションの子、まずいない!
いるとしても海外の映画に出てくる女優ぐらいですよ?
ぜ~ったいに、純日本人ではあり得ません!
そう翼は心の中で叫んでいた。
そう・・日本中の女性を敵に回すような事を翼は考えたのである。
そんな様子の翼を見て、カッパである女性は声をかける。
「あら? また変な事を考えているでしょう?」
そう言われ、翼は顔をブンブンと横に振る。
その勢いは扇風機も真っ青、頭に積もった雪がふっとんだのである。
ふとんがふっとんだ、どころでは無い勢いであった。
「まぁ、いいわ、ねぇ、私が見えたなら、カッパのオジサンを見なかった?」
「え? あ、はい、見ました。」
それを聞いた女性はグンと顔を近づけ、勢いよく翼に聞く。
「どこで!!」
「あ、いや、ここから300m位の所で・・、チャリに乗っていましたけど。」
「そう! ありがとう!」
そう言って女性は踵 をかえして、さきほどカッパがチャリとともに倒れた場所に行こうとした。
それに翼が尋 ねる。
「あ、あの、その人が何かしたのですか?」
「あのバカね、私の彼氏なの。」
「え? あ、あのオジサンが彼氏ですか!!」
「ん?! 何? なんか文句ある?」
女性に睨 まれ、翼はギクリとした。
「い、いえ別に! 文句などとんでもありませしぇんれす!、はい!」
「はぁ~・・・、まぁいいわ。
ねぇ坊や・・・。」
「は、はい!!」
「いいこと、女性と男性の間に年なんて関係ないの。」
「そ、そういうものですか?!」
「ふふふふ、そうよ。」
「し、失礼しました!」
「あら、どうしたの? なにオドオドとしてるよ?
私、怖かったかしら?」
「あ、いぇ、その・・あの・・。」
「そっか、ごめんね、ついカッとしちゃったわ。
でもね、覚えておいて、女性は恋に生きているの。
でもね、そのため恋におちる相手は誰でもいいわけじゃないのよ?
女性の持っている直感、感性をバカにしちゃぁ、いけないわよ?
当然相手の経済力も魅力には入るけどもね。
とはいえ、経済力は二の次になる事もあるけどさ。」
「はぁ・・。」
「いいこと、あなたはペラペラな男になっちゃだめよ?」
「え?」
「見かけや見栄 だけの男になるなって言っているの!」
「はい!」
「それから見かけ倒しの女に欺 されないよう、目を鍛 えないさいよ?」
「はい!!」
「うん、分かればよろしい、じゃあね。」
そう言って立ち去ろうとした女性に、思わず翼は声をかけた。
「あ、あの!!」
「?」
「今日、突然、僕は貴方 たちが見えるようになったんです。」
「そうなの? だから何?」
「その、どうして見えるようになったのかな、と。」
「ああ、そういう事かぁ・・・。」
「知っている事があったなら教えていただけませんか?」
「え? 別に見えたからってどうしたの?
気にする事もないじゃん。」
「い、いや、困るんです!」
「どうして?」
「他の人と自分が違っていたら困るでしょ?」
「なんで?」
「だって、例えば道を歩いていて突然何もないのによけていたら、変な人だと思われますよ?
それとか他の人が見えないのに、うっかりあそこにカッパがいるよ、などと言ったら、周りから精神科に見てもらうべきだと言われちゃいます!」
「え~、別にいいじゃん、そんなの。」
「いや! よくない!」
そう言って、翼は思わずその女性に顔を近づけ叫んでいた。
女性はのけぞって、手を前にだす。
「ちょっ!
ど~どうどう! お、落ち着きなさい!」
「あ! す、すみません。」
「まぁ、貴方が何故困るのかはわからないけど・・・。」
ここまで説明して、何故わからない? と、翼はカクン、と、肩を落とした。
最初に出会ったカッパは、偶然 たまたま見れただけで、もう見れることはないと思っていた。
だが、すぐに別のカッパ・・女性を見れたことから、たまたまの偶然、宝くじに当たった確率から、”何処でもドア”で、どこにでもいけるようになったようなものだと思いはじめた。
つまり、今日からたカッパが日常的に見れるようになってしまったという事である。
翼がカッパが見える体質をなんとかしたいと思うのは当然の必然であった。
だが、思い当たる
「う~ん、分からん!
分からないものは、分からない!
つまり、分からないことは考えても無駄。
それに今までカッパなんて見たことはなかった。
だから、これからも見えるはがない。
疲れてカッパを見たような気がしただけに違いない。
うん! そうだ、そうに違いない!」
そう自分に言い聞かせた。
そして気分を切り替え、デートの待合場所へと急ぐ。
雪はあいかわらず降り続き、足下の雪は徐々に
いつの間にか辺りは暗くなり街頭が点いていた。
だが降る雪に乱反射され役に立っていない。
それにもかかわらず雪明かりで道は見えるので歩くのには困らない。
ただ、対向して走ってくる車のヘッドライトが
おそらく雪で前が見えづらいのでアップにして走る車が多いのだろう。
迷惑この上ない。
雪が車のヘッドライトを拡散し、
そのくらいは役にたってくれないかと翼は思った。
「あぶないなぁ雪道で走るなんて、こけてもしらないよ・・・。」
翼は
だが・・。
長野市の人は
大学時代、この市にスキー帰りに寄ったことがある。
その時、観光がてら雪道を歩いた時のことだ。
足が雪で滑るため、恐る恐る慎重に翼は歩いていた。
それを横目にこの市の人達は皆、雪などないかのように早く歩くのである。
いや、歩くというより足を滑らせてスキーをしているかのように進む。
関心した翼はそれをまねた。
そして物の見事にコケたのである。
それも盛大に、両手をアワアワとさせながら・・・
周りの人は、翼がこけるのを見ていたのだろう。
笑いながら大丈夫かと助け起こしてくれたのである。
幸いにも雪がクッション代わりをして、倒れても怪我をすることはなかった。
しかしこれは翼にとって大学時代における忘れられない黒歴史の1ページとなった。
大変に恥ずかしく忘れたい記憶の一つと言える。
このような経験から、翼は今、急ぎながらも
こちらに向かってくる人であるが、後ろから絶えず車のヘッドライトがあたる。
そのためシルエットのように黒く見えるだけで、顔や服装などはわからない。
シルエットの様子からは、小柄な女性のように見えた。
ただ・・・
冬で厚着をしてプロポーションなどわかるはずはないのであるが・・。
目が
女性をまじまじと見つめて、痴漢とかに思われたらまずいと思ったからだ。
この翼の行動は間違ってはいない。
しかし・・。
しばらく目を釘付けしていたのに、急に視線をそらすのはわざとらしく見える。
だが
翼が
そして横を通り過ぎようとした時である。
女性の足下が目に入った。
「えっ!!」
思わず声を上げた翼に、女性がギクリとして立ち止まる。
翼は恐る恐るゆっくりと顔を上げ、その女性を見た。
女性は驚いた顔で翼を見ていた。
女性は戸惑った様子で翼に声をかける。
「あ、あの・・。私が見えるの?」
翼はその言葉に、コクリと
翼が先程見た女性の
それも水かきが付いていた。
そう、彼女はカッパであった。
今日、二人目?の未知との遭遇である。
その女性はというと、すこぶる美人であった。
冬なのに薄いセクシーな服を着ており、ハチキレンバカリの胸元だ。
思わず翼はチラリと胸元を見てしまい、慌てて目を
「あらまぁ、顔を赤くして、
そう言って、その人?は
翼はなんとも罰が悪く、また下を向く。
「ねぇ、君、私が本当に見えるのね。」
「・・・はい。」
「へぇ~・・、百年ぶりかしらね、そういう人は・・。」
「え? 百年ぶり?!」
驚いて翼は顔をあげた。
するとその女性は、すこし
「坊や、私の年齢のことを考えたでしょ?」
「あ・・、いや、その・・・。」
「ふふふふふふ、まぁ、いいわ。
私達は人と違う世界の住人だもの、驚くのは無理はないわね。
でもね、言っておくけど、私は人間に
「へっ!!」
翼は
いやいやいや! 17歳なんて有り得ないでしょ!
だって妖艶の美女ですよ!
現代の17歳の女性なんて言っては失礼ですけど、今の彼女とくらべたら小学生のように見えますよ?
きゃあ~、このペンダント、かわゆい! だの、ねぇねぇ、この服どう? 可愛すぎない?とか言って、かわいこぶりっこ全盛期の年齢ですよ?
かわいさだけを求めて、妖艶さなどという言葉はゴミ箱に捨てているんですよ?
おそらく20代の女性でも同じだと思うよ?
それに、このカッパの女性のようなプロポーションの子、まずいない!
いるとしても海外の映画に出てくる女優ぐらいですよ?
ぜ~ったいに、純日本人ではあり得ません!
そう翼は心の中で叫んでいた。
そう・・日本中の女性を敵に回すような事を翼は考えたのである。
そんな様子の翼を見て、カッパである女性は声をかける。
「あら? また変な事を考えているでしょう?」
そう言われ、翼は顔をブンブンと横に振る。
その勢いは扇風機も真っ青、頭に積もった雪がふっとんだのである。
ふとんがふっとんだ、どころでは無い勢いであった。
「まぁ、いいわ、ねぇ、私が見えたなら、カッパのオジサンを見なかった?」
「え? あ、はい、見ました。」
それを聞いた女性はグンと顔を近づけ、勢いよく翼に聞く。
「どこで!!」
「あ、いや、ここから300m位の所で・・、チャリに乗っていましたけど。」
「そう! ありがとう!」
そう言って女性は
それに翼が
「あ、あの、その人が何かしたのですか?」
「あのバカね、私の彼氏なの。」
「え? あ、あのオジサンが彼氏ですか!!」
「ん?! 何? なんか文句ある?」
女性に
「い、いえ別に! 文句などとんでもありませしぇんれす!、はい!」
「はぁ~・・・、まぁいいわ。
ねぇ坊や・・・。」
「は、はい!!」
「いいこと、女性と男性の間に年なんて関係ないの。」
「そ、そういうものですか?!」
「ふふふふ、そうよ。」
「し、失礼しました!」
「あら、どうしたの? なにオドオドとしてるよ?
私、怖かったかしら?」
「あ、いぇ、その・・あの・・。」
「そっか、ごめんね、ついカッとしちゃったわ。
でもね、覚えておいて、女性は恋に生きているの。
でもね、そのため恋におちる相手は誰でもいいわけじゃないのよ?
女性の持っている直感、感性をバカにしちゃぁ、いけないわよ?
当然相手の経済力も魅力には入るけどもね。
とはいえ、経済力は二の次になる事もあるけどさ。」
「はぁ・・。」
「いいこと、あなたはペラペラな男になっちゃだめよ?」
「え?」
「見かけや
「はい!」
「それから見かけ倒しの女に
「はい!!」
「うん、分かればよろしい、じゃあね。」
そう言って立ち去ろうとした女性に、思わず翼は声をかけた。
「あ、あの!!」
「?」
「今日、突然、僕は
「そうなの? だから何?」
「その、どうして見えるようになったのかな、と。」
「ああ、そういう事かぁ・・・。」
「知っている事があったなら教えていただけませんか?」
「え? 別に見えたからってどうしたの?
気にする事もないじゃん。」
「い、いや、困るんです!」
「どうして?」
「他の人と自分が違っていたら困るでしょ?」
「なんで?」
「だって、例えば道を歩いていて突然何もないのによけていたら、変な人だと思われますよ?
それとか他の人が見えないのに、うっかりあそこにカッパがいるよ、などと言ったら、周りから精神科に見てもらうべきだと言われちゃいます!」
「え~、別にいいじゃん、そんなの。」
「いや! よくない!」
そう言って、翼は思わずその女性に顔を近づけ叫んでいた。
女性はのけぞって、手を前にだす。
「ちょっ!
ど~どうどう! お、落ち着きなさい!」
「あ! す、すみません。」
「まぁ、貴方が何故困るのかはわからないけど・・・。」
ここまで説明して、何故わからない? と、翼はカクン、と、肩を落とした。
最初に出会ったカッパは、
だが、すぐに別のカッパ・・女性を見れたことから、たまたまの偶然、宝くじに当たった確率から、”何処でもドア”で、どこにでもいけるようになったようなものだと思いはじめた。
つまり、今日からたカッパが日常的に見れるようになってしまったという事である。
翼がカッパが見える体質をなんとかしたいと思うのは当然の必然であった。