#4 冒険編

文字数 1,379文字

森の中に舞い降りた5人。鉛子を先頭に、森の中を進みます。

「何で私までこんなところに」

万年筆子は不満をこぼします。でも内心はホッとしているのです。一人置いてきぼりになったらと思うだけで、インクが漏れてしまいそうでした。

順調に森を進むA君は、ドキドキです。
それは、森の魔物が怖いのではなく、お姫様に会ったら何て言おうか、それが心配でハートをフル回転していたのです。

そんなA君のドキドキは、別のドキドキに変わります。
出たのです! 森の魔物が!

魔物は大勢で5人を襲います。追い剝ぎですか?
理由は分かりません。とにかく襲ってきます。

鉛子と消し子はA君の手を取り、逃げます。
万年筆子は魔物と交渉しています。あっ、交渉決裂です。万年筆子は全速力で走りますが、おしゃれなハイヒールがそれを妨げます。万事休す! 万年筆子。日頃の行いが倍返しで襲ってきます。四色ボルツは俊足で逃げます。それはきっと名前のおかげなのでしょう。

「みんなー、早くー、逃げてー」

余裕の四色ボルツが振り返って叫びます。

「うわー」

お約束通り、A君が転びます。不憫な子です、A君はこの森で、生き延びることが出来るのでしょうか? お城ではお姫様が待っていますよ。

”僕はモテないんだー”
A君の心の叫びが聞こえてきそうです。そんなことは百も承知ですよ。それでも君は挑むのでしょう? その僅かな可能性に賭けて。まるで博打ですね。

「消し子! あの邪悪な魔物を消し去りなさい」
鉛子は芯を尖らせて叫びます。芯の強い子です。

「は〜い」

消し子は友達の黒板消し子を召喚します。

「呼んだ〜」
「うん。あれを消してくれる〜」
「いいよ〜」

消し子と、その仲間達はいつも呑気のようです。でも仕事は早いのです。
魔物達は、あれよあれよと消えていきます。

「じゃあ〜ね〜」
「うん。ありがとね〜」

ひと仕事を終えた黒板消し子は、元の世界に戻っていきました。

こうして無事に森を抜けることが出来ました。

「私を置いて行かないでー」
万年筆子は泣きながら皆んなのところに走ったそうですよ。



のどかな田園の道を5人は進みます。

美しい風景に見入る5人は、ここに来た目的も忘れそうです。だからでしょうか。雨が降ってきました。これはチョー子先生の適齢期を逃した悔し涙か、それともただの嫌がらせなのか分かりません。

鉛子はA君と消し子のために傘を描きます。万年筆子と四色ボルツも真似をします。

ここで運命が分かれたようです。万年筆子と四色ボルツが描いた傘は、雨でインクが滲んでしまいました。傘から雨が漏れだします。

四色ボルツは撥水性のある服を着ていたため、あまり問題がありません。しかし万年筆子は悲惨です。豪華な衣装にインクが垂れていきます。慌てる万年筆子。そこに鉛子が傘を描きます。

鉛子は優しさも兼ねた、芯の強い子です。チョー子先生の嫉妬にも負けません。

「ありがとう、ですわ」
「さあ、先を急ぎましょう」

鉛子の優しさに、万年筆子のペン先から何やら溢れるものが。
それはインクなのか、それとも……

雨は上がり晴天となりました。綺麗な青空が広がります。そして5人の前にお城が見えてきました。

さあ、続きは『登城編』でお会い致しましょう。
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登場人物紹介

中学生のA君

同じクラスに好きな女の子がいます

???

少年A君のクラスメイト。大変 人気があります。

鉛筆の申し子、鉛子

芯の強い人です

消しゴムの申し子、消し子

彼女の綺麗好きは、あらゆる筆記男子から羨望と憧れの対象になっています

万年筆の申し子、万年筆子

伝統と格式を備えたお嬢様

四色ボールペンの申し子、四色

黒、赤、緑、青、の色を持ち、かつ一人で四役もこなす器用な方

チョークのチョー子先生

いつも体操着姿で教育熱心な先生。チョーク投げが得意です。

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