#5 登城編

文字数 1,383文字

5人はお城の前まで来ました。

お城はお堀に囲まれています。中に入るには、そこに架かる橋を渡らなければなりません。しかしその橋は今、跳ね上がっています。

「お城に入りたいのですが、橋を降ろしてもらえませんか?」
『ダメだー。さっきの雨で増水したから橋は降ろせない』

つれないお返事が返ってきました。

「僕には会ってくれないんだー」

A君は挫けてしまいます。根性なしです。ヘタレです。

「僕達に任せて!」

四色ボルツが名乗り出ます。一体、何をしようというのでしょうか。

四色ボルツは5人のいる場所からお城まで円弧を描きます。それを赤、緑、青で描き分け、虹の橋を完成させました。

5人は、その虹の橋を渡ってお城に入ることが出来ました。四色ボルツは四色を出し入れしてパチパチと音を立て、得意がります。
うるさいです。



やっと目的地に到着しました。早速、お姫様と謁見です。

A君のソワソワ、モジモジが止まりません。
しっかりしなさい!

「あの〜」
「何の用ですか? 私は忙しいのです。手短にお願いします」

お姫様は朝からメールのチェックに余念がありません。毎日、大量のメールが送られてくるようです。タブレットを擦り擦りしながら、A君を見ようともしません。

「失礼な!」

万年筆子が怒り出します。お嬢様育ちですから。

「何ですか?」

お姫様がこちらを向きました。gJobです。万年筆子。

鉛子がその鋭い芯先をA君に突き刺します。

「痛っ! あの〜、これを受け取ってください」
「お手紙ですか? eメールではなくて」
「そうです。お願いします」
「その辺に置いておいてください」

「今、読んではくれませんか?」
「えー」

鉛子の提案にA君は顔を真っ赤にします。

「内容は何ですか?」

お姫様はさらりと質問します。A君は、更に顔を赤くしてしまいます。まるで赤鬼のようです。それでも鉛子の芯先を見て勇気を振り絞ります。

「ら、ら、ららら、ラブレターです」

A君は歌うように答えました。歌手になる希望は絶たれました。

「分かりました。後で拝見し検討致します」
「お願いしまーす」

お姫様にとってラブレターは日常茶飯事のようです。A君の想いが埋もれてしまわないか心配です。

A君はやっとお姫様に手紙を渡すことが出来ました。その感動でA君は動けなくなったようです。

「まだ、何か?」
「……」
「ああ、そうでしたね」

お姫様は手馴れて様子でA君に受取書を渡しました。お姫様のサイン入りです。A君は受取書を手に嬉しくて舞い上がってしまいます。その結果はどうなるのでしょうか? 楽しみです。



さて、お約束通り、有頂天のA君は現実世界に強制送還されました。机の上で目を覚ましたA君は、あれは夢だったのかと思い落胆しました。しかしその手には、お姫様から貰った受取書があります。

A君のドキドキ、ソワソワが止まりません。明日、どんな顔で会えばいいんだ。そんな贅沢な悩みを抱えてしまったようです。
好きにしてください。

そういえば、チョー子先生はどうしたのでしょうか。

「あの子達、遅いわねー」

王女様のチョー子先生はお城でまだ、5人の到着を待っているようです。
これだから適齢期を……これは内緒でしたね。

【おわり】
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登場人物紹介

中学生のA君

同じクラスに好きな女の子がいます

???

少年A君のクラスメイト。大変 人気があります。

鉛筆の申し子、鉛子

芯の強い人です

消しゴムの申し子、消し子

彼女の綺麗好きは、あらゆる筆記男子から羨望と憧れの対象になっています

万年筆の申し子、万年筆子

伝統と格式を備えたお嬢様

四色ボールペンの申し子、四色

黒、赤、緑、青、の色を持ち、かつ一人で四役もこなす器用な方

チョークのチョー子先生

いつも体操着姿で教育熱心な先生。チョーク投げが得意です。

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