#3 勝負編

文字数 1,227文字

さあ、勝負が始まるようです。
ラブレターを手書きしたいという中学生のA君です。どうぞ。

「あー、間違いた」

四色ボルツの黒を使って書き始めたA君。緊張のあまり、何度も字を間違えてしまいます。そのため最初から書き直しです。

「A君。私を使って下書きをするのです」
「あっ、そうか」

A君は鉛子に持ち替えて、スラスラと書き進んでいきます。使い慣れた鉛子によって、書き間違えが減りました。

さて、書き終えたところで四色ボルツの出番です。鉛子の軌跡を追いかける四色ボルツは楽しそうです。

「下書きをするなんて、偽りの行為ですわ」

まだ出番のない万年筆子がヤジを飛ばします。しかし誰も万年筆子のことは気にしていないようです。

「書き終えたら消し子で私の軌跡を消して行きなさい」
「うん」
「消し子。あなたの出番ですよ」
「は〜い」

万年筆子は、詰まらなそうにしています。

全然、自分の出番が無い。
所詮、相手は子供なのだから高貴な自分の相手にはならない。そう、ご自分に言い聞かせ拗ねていたようです。

◇◇

やっと、ラブレターを書き終えたようです。
手紙の最後にA君の名前と封筒の宛名を書いて完成です。

「さあ、最後です。心込めて」
「緊張するな〜」
「ちょっと、お待ちなさい」

今まで、その存在を忘れられていたチョー子先生の発言です。いたんですね。

「名前と宛名は万年筆子さん、貴女の出番ですよ」
「そうですの?」

万年筆子は(とぼ)けた顔で言いましたが、内心嬉しくてたまりません。

「オーホホホ。仕方ありませんわね、力を貸してあげますわ」

こうして全員の協力のもと、ラブレターは完成したのです。



「それでは、その手紙。今から届けに行きましょう」
「えー」 x 5

チョー子先生の提案に全員が驚きます。A君もビックリです。そんなことにはお構いなく、チョー子先生は仮想の黒板に絵を描いていきます。森から始まって、のどかな田園を抜け、お城までの風景が描かれました。

「チョー子先生! なんでお城なんですか?」

A君が質問します。何でなんでしょうね。

「A君、いいこと! 貴方にとって彼女はお姫様なのよ。そのお姫様がいる場所といえば?」
「お城だー」
「わかったら、さっさと行ってきなさい」

チョー子先生はスタートボタンをポチります。するとどうでしょう。黒板の仮想世界が展開され、そこへA君、鉛子、消し子、万年筆子、四色ボルツが飛ばされていきます。

「何で私達までなんですかー」
「最後まで面倒を見るんですよー、これも教育で〜す、愛のムチで〜す。いってらっしゃ〜い」

チョー子先生は皆んなの旅立ちを見送りました。そして、何やら着替えているようです。

「フフフ。お城には女王様もいるのよ。それは、わ・た・し」

ラブレターをお姫様に届ける冒険の旅が始まりました。

さあ、続きは『冒険編』でお会い致しましょう。
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登場人物紹介

中学生のA君

同じクラスに好きな女の子がいます

???

少年A君のクラスメイト。大変 人気があります。

鉛筆の申し子、鉛子

芯の強い人です

消しゴムの申し子、消し子

彼女の綺麗好きは、あらゆる筆記男子から羨望と憧れの対象になっています

万年筆の申し子、万年筆子

伝統と格式を備えたお嬢様

四色ボールペンの申し子、四色

黒、赤、緑、青、の色を持ち、かつ一人で四役もこなす器用な方

チョークのチョー子先生

いつも体操着姿で教育熱心な先生。チョーク投げが得意です。

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