42 その結論に絶叫?
文字数 1,666文字
「これは振り出しに戻ったと考えるべきなのか?」
担当に話を聞き終えた和宏と優人は駐車場へ向かっていた。
「どうだろうね、むしろ事件の全体像が分かった……もしくは真相に辿り着いたといっても良いと思うんだけれど」
と、優人。
車に近づき鍵を向けると、ロックが外れる音がして続いてエンジンがかかった。
「先に乗っていて。ちょっと確認したいことがあるから、新聞社のお姉さんに電話する」
「ああ」
優人に言われた通り助手席に乗り込み、運転席側の屋根に腕を置き合コンでで会った新聞社の女性に電話をかける優人に視線を向ける。
我が弟ながら、惚れ惚れするほどに様になっていた。
映画のワンシーンでよくある光景だなと思いながら、和宏はカーナビに手を伸ばす。
──気遣いには二種類の方向性があると思うんだ。
カーナビを操作し音楽がかかりだすと、和宏はレモンについて考えていた。
『勝手にレモン論争』は云千前年前からある。
もう五千年代だというのに。
合コンの時など『男性に出来るアピールをするために、勝手にレモンをから揚げにかける女性がいる』問題について激論をする、勝手にレモン論争。
カーナビで音楽をかけるのも同じだと思った。
ここで気を利かしてかける曲によって、どちらかに分かれるだろう。
自分の好きな曲をかけるのか。
相手の好きそうな曲をかけるのか。
「残念ならが、俺たちは趣味が変わらない」
性格が真逆で、五つ離れた弟と兄の自分。
そんな自分たちは映画と音楽に関しては趣味が同じであった。優人が自分の影響を受けたと言っても過言ではないだろう。
──と言うよりも、俺の真似ばかりしていたな。
失踪した新聞社の女性には双子の兄弟がいたという。
上か下かは分からないが大差ないだろう。
単に腹から出てきた順番の差でしかない。
二人もどちらかがどちらかの影響を受けたのだろうか?
「でも、片織が十年前の事件の時、まだ入社していなかったんて……」
それは片織の最初の嘘なのだろうと思った。
初めから自分たちはミスリードさせられていたのか?
それとも別の目的があったのか。
「待たせてごめん」
優人が通話を終えたのか、運転席のドアを開けながら謝罪の言葉を述べる。
「待ってないよ」
と和宏。
その言葉に何故か彼が驚いた顔をする。
「なんだよ?」
「いや、面白いことを言うなあと思って」
彼はくくくっと笑うとシートベルトに手を伸ばす。
和宏がシートベルトをしていることを確認するとアクセルを踏み、
「見えるところにいて、明らかに待たせているのが分かっている状況で『待ってないよ』って言う人ははじめてだよ」
と言う。
「そうか?」
「まあ、いいけどね。それよりも」
「ああ。何か判ったのか?」
優人は公道に出ると、カーナビの地図にチラリと視線を送る。
「あの日、社に届けに来たのはその兄弟で間違いはないよ。ただ、あの記事は何処の社でも知っている情報として掲載したつもりだったらしい」
「つまり、信ぴょう性について確認は怠った?」
と和宏。
フェイクニュースだった可能性が出てきたということだ。
何のためなのか?
そこが問題だ。
「これは俺の憶測だけれど、その兄弟は彼女が失踪したことをいち早く気づいていた。だから、事件が起きてすぐに原稿を作り社に”直接”持っていった」
優人の言い方にひっかかりを感じた和宏。
「このご時世にか?」
「そこなんだよ」
デジタル化された世の中で、わざわざ持っていったとなるとパソコンも所持したままいなくなったというのか?
「家にデスクトップくらいありそうなものなのにね。俺はあえて持っていったと考えるなら『まだ家にいると見せかけたかった』んじゃないかと思うんだよ」
それはどういうことなのだ? と和宏は頭を整理しようとした。
「結論から言うと、その兄弟から誰かに宛てたメッセージなんじゃないかなと思うんだ」
整理する前に結論を言われ、
「え?」
と埴輪顔になる和宏。
「いい? これは突飛かもしれないけれど、その兄弟が片織さんだ」
「えええええええ」
和宏は狭い車内で絶叫したのだった。
担当に話を聞き終えた和宏と優人は駐車場へ向かっていた。
「どうだろうね、むしろ事件の全体像が分かった……もしくは真相に辿り着いたといっても良いと思うんだけれど」
と、優人。
車に近づき鍵を向けると、ロックが外れる音がして続いてエンジンがかかった。
「先に乗っていて。ちょっと確認したいことがあるから、新聞社のお姉さんに電話する」
「ああ」
優人に言われた通り助手席に乗り込み、運転席側の屋根に腕を置き合コンでで会った新聞社の女性に電話をかける優人に視線を向ける。
我が弟ながら、惚れ惚れするほどに様になっていた。
映画のワンシーンでよくある光景だなと思いながら、和宏はカーナビに手を伸ばす。
──気遣いには二種類の方向性があると思うんだ。
カーナビを操作し音楽がかかりだすと、和宏はレモンについて考えていた。
『勝手にレモン論争』は云千前年前からある。
もう五千年代だというのに。
合コンの時など『男性に出来るアピールをするために、勝手にレモンをから揚げにかける女性がいる』問題について激論をする、勝手にレモン論争。
カーナビで音楽をかけるのも同じだと思った。
ここで気を利かしてかける曲によって、どちらかに分かれるだろう。
自分の好きな曲をかけるのか。
相手の好きそうな曲をかけるのか。
「残念ならが、俺たちは趣味が変わらない」
性格が真逆で、五つ離れた弟と兄の自分。
そんな自分たちは映画と音楽に関しては趣味が同じであった。優人が自分の影響を受けたと言っても過言ではないだろう。
──と言うよりも、俺の真似ばかりしていたな。
失踪した新聞社の女性には双子の兄弟がいたという。
上か下かは分からないが大差ないだろう。
単に腹から出てきた順番の差でしかない。
二人もどちらかがどちらかの影響を受けたのだろうか?
「でも、片織が十年前の事件の時、まだ入社していなかったんて……」
それは片織の最初の嘘なのだろうと思った。
初めから自分たちはミスリードさせられていたのか?
それとも別の目的があったのか。
「待たせてごめん」
優人が通話を終えたのか、運転席のドアを開けながら謝罪の言葉を述べる。
「待ってないよ」
と和宏。
その言葉に何故か彼が驚いた顔をする。
「なんだよ?」
「いや、面白いことを言うなあと思って」
彼はくくくっと笑うとシートベルトに手を伸ばす。
和宏がシートベルトをしていることを確認するとアクセルを踏み、
「見えるところにいて、明らかに待たせているのが分かっている状況で『待ってないよ』って言う人ははじめてだよ」
と言う。
「そうか?」
「まあ、いいけどね。それよりも」
「ああ。何か判ったのか?」
優人は公道に出ると、カーナビの地図にチラリと視線を送る。
「あの日、社に届けに来たのはその兄弟で間違いはないよ。ただ、あの記事は何処の社でも知っている情報として掲載したつもりだったらしい」
「つまり、信ぴょう性について確認は怠った?」
と和宏。
フェイクニュースだった可能性が出てきたということだ。
何のためなのか?
そこが問題だ。
「これは俺の憶測だけれど、その兄弟は彼女が失踪したことをいち早く気づいていた。だから、事件が起きてすぐに原稿を作り社に”直接”持っていった」
優人の言い方にひっかかりを感じた和宏。
「このご時世にか?」
「そこなんだよ」
デジタル化された世の中で、わざわざ持っていったとなるとパソコンも所持したままいなくなったというのか?
「家にデスクトップくらいありそうなものなのにね。俺はあえて持っていったと考えるなら『まだ家にいると見せかけたかった』んじゃないかと思うんだよ」
それはどういうことなのだ? と和宏は頭を整理しようとした。
「結論から言うと、その兄弟から誰かに宛てたメッセージなんじゃないかなと思うんだ」
整理する前に結論を言われ、
「え?」
と埴輪顔になる和宏。
「いい? これは突飛かもしれないけれど、その兄弟が片織さんだ」
「えええええええ」
和宏は狭い車内で絶叫したのだった。
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