第3話
文字数 1,102文字
終礼の時間、窓からは西日が差し込む時間帯だ。
担任の岡田先生が教卓で連絡事項を説明していた。
「黒い帽子にサングラス、白いtシャツ、そして赤いショルダーバッグだ。見かけたらすぐに逃げろ」
件の通り魔についての注意喚起がなされている。まだ捕まっていないらしい。やや大げさではあるが、それだけ学校側も心配しているようだ。
「じゃあ、各自気をつけて帰るように。日直は田中か?最後のあいさつしようか」
岡田先生にいわれ、田中さんが綺麗な声で「起立」と声をあげ、全員が立ち上がり、「礼」という声に続いてお辞儀した。
「はい、じゃあさよなら」
終礼が終わると、椅子を机の下にガチャガチャとしまったり、お喋りを始める音で教室は一気に騒がしくなる。
私もゆっくりと立ち上がり、椅子を机の下に入れる。
「森川さん」
そう声をかけて来たのは青戸くんだ。
「いっつもさ、裏門から帰ってるよね?今日は正門から帰った方がいいよ」
とだけ言って、私が返事をする間もなく、さっさと友達の方へ歩いていく。
3人の男子で帰ろうとする青戸くんたちに田中さんが他の女子と一緒に「カラオケいかない?」と話しかけ、複数人で教室を出て行った。
私は帰り支度の手を止めて、彼らの背中を目で追っていた。
「かーえろ」
佳奈が私の肩を叩く。
「あ、うん」
一緒に帰る、と言っても私と佳奈は家の方向が真逆である。佳奈は正門から、私は裏門から下校する。つまり、一緒なのは昇降口までだ。
「じゃあね」
靴を履き、そう言って私たちは別れた。
私は青戸くんの嘘を無視して、裏門を出た。
青戸くんの嘘を馬鹿みたいに信じて、言われるがままに騙される自分が情けなかった。
青戸くんたちは今日、クラスの女子たちと遊びに行くのだろうか。
小さなため息が出た。
どうして青戸くんはあんな嘘をついたのか。
どうして私にそんな意地悪をするのか。
私のことが嫌いなのだろうか。
下を向いて歩きながら、自分では答えの出ないそんな問題を悶々とと考えているうちに、住宅街に出ていた。
老父婦の多いこの辺りは夕方でも静かだ。
角を曲がろうというところで、不意に、後ろから肩を叩かれた。
何かを落としたのだろうか、と何の気なしに振り返る。
40代くらいだろうか、男が立っていた。
振り返った私を見て、男はニヤリと笑った。
黒い帽子にマスク、白いtシャツ。赤いショルダーバッグ。
まさか。
ゾッとして、瞬時に動けなくなる。
男はバッグから不気味に光る何かを取り出した。
ナイフだ。
間違いない。
件の通り魔である。
担任の岡田先生が教卓で連絡事項を説明していた。
「黒い帽子にサングラス、白いtシャツ、そして赤いショルダーバッグだ。見かけたらすぐに逃げろ」
件の通り魔についての注意喚起がなされている。まだ捕まっていないらしい。やや大げさではあるが、それだけ学校側も心配しているようだ。
「じゃあ、各自気をつけて帰るように。日直は田中か?最後のあいさつしようか」
岡田先生にいわれ、田中さんが綺麗な声で「起立」と声をあげ、全員が立ち上がり、「礼」という声に続いてお辞儀した。
「はい、じゃあさよなら」
終礼が終わると、椅子を机の下にガチャガチャとしまったり、お喋りを始める音で教室は一気に騒がしくなる。
私もゆっくりと立ち上がり、椅子を机の下に入れる。
「森川さん」
そう声をかけて来たのは青戸くんだ。
「いっつもさ、裏門から帰ってるよね?今日は正門から帰った方がいいよ」
とだけ言って、私が返事をする間もなく、さっさと友達の方へ歩いていく。
3人の男子で帰ろうとする青戸くんたちに田中さんが他の女子と一緒に「カラオケいかない?」と話しかけ、複数人で教室を出て行った。
私は帰り支度の手を止めて、彼らの背中を目で追っていた。
「かーえろ」
佳奈が私の肩を叩く。
「あ、うん」
一緒に帰る、と言っても私と佳奈は家の方向が真逆である。佳奈は正門から、私は裏門から下校する。つまり、一緒なのは昇降口までだ。
「じゃあね」
靴を履き、そう言って私たちは別れた。
私は青戸くんの嘘を無視して、裏門を出た。
青戸くんの嘘を馬鹿みたいに信じて、言われるがままに騙される自分が情けなかった。
青戸くんたちは今日、クラスの女子たちと遊びに行くのだろうか。
小さなため息が出た。
どうして青戸くんはあんな嘘をついたのか。
どうして私にそんな意地悪をするのか。
私のことが嫌いなのだろうか。
下を向いて歩きながら、自分では答えの出ないそんな問題を悶々とと考えているうちに、住宅街に出ていた。
老父婦の多いこの辺りは夕方でも静かだ。
角を曲がろうというところで、不意に、後ろから肩を叩かれた。
何かを落としたのだろうか、と何の気なしに振り返る。
40代くらいだろうか、男が立っていた。
振り返った私を見て、男はニヤリと笑った。
黒い帽子にマスク、白いtシャツ。赤いショルダーバッグ。
まさか。
ゾッとして、瞬時に動けなくなる。
男はバッグから不気味に光る何かを取り出した。
ナイフだ。
間違いない。
件の通り魔である。