第8話

文字数 927文字

「え?」
戸惑う俺に、先輩が微笑んだ。

「お前の言う通りだな。願いは叶えてもらうもんじゃない。叶えるもんだ。
だから、俺も勇気を出してみた。」
先輩は、はにかみながら続けた。
「俺は、意気地無しだから、手紙を下駄箱に入れた。
お前が好きなおまじないに見立てたラブレターを。
でも、怖くて本音どころか、名前も書けなかったんだ。」

やっと、何かが繋がった。
「あの、愛の秘薬の手紙…」
そう、あの手紙は橘先輩が書いたものだと言うことだけは、俺にもやっとわかったのだ。
ただ、注意書きからは、コーヒーがこぼれて読めなかった。
だから、俺は気がつかなかったのだ。

そして、橘先輩は続けた。
「俺はラブレターにこう書いた。
「おまじないが好きなあなたへ。
明日は、何十年に一度の流星群が見られる日。
流れ星に願いを叶えてもらいましょう。
この液体は、愛の秘薬。
好きな人に飲ませ、流星群に願いを言うのです。
必ずあなたの願いは叶うはず。」

注意書き、この秘薬の中身はブラックコーヒーです。
私は、あなたにずっと愛の秘薬を渡していました。
私は意気地無しです。
名前は名乗れませんし、悪い答えを聞く勇気すらない意気地無しです。
だから、あなたが私の思いを受け入れてくれるなら、どうか次はあなたが私にブラックコーヒー(愛の秘薬)を持って来てください。
そして良かったら、私と流星群を見て欲しいのです」
この文章だ。
俺は男だし、お前より弱い意気地無しだ。
きっと、気持ち悪いと思うだろう。
だから、手紙にこんな形でしか書けなかったんだ。」
「でも、お前は手紙の答えとして、ちゃんとブラックコーヒーを持って来てくれた。
タイミングが悪く、お前を苛める輩がいたから、受け取れなくて悪かった。」

俺は、やっと先輩の気持ちがわかった。
泣いたらいけないとあれだけ言い聞かせたのに、また(涙)が込み上げる。

「先輩は、何を願ったのですか?
俺は、こう願いました。」
(護、橘)「愛する人が、幸せになります様に。」
同時に二人が同じ願い事を答えた。

俺は、今日初めての笑みを浮かべると、先輩は俺を抱き寄せた。
「好きだ。」
「俺もです。」

優しい流れ星は、二人の願いを知っていたのだ。
「星に願いを」
END
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み