第12話  続・これって、本当に「作った話」じゃないんだよ。 

文字数 847文字

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 ぼくが歯を抜いた日の一週間前に、5歳になる孫の男の子も歯を抜いたんだ。
 歯医者さんではなくて、大学病院で全身麻酔をしての手術なんだよ。

 上側に3本の歯が隠れていて、放置していると歯が2列になるみたい。
 小さい時に抜いておくほうがいいとのことで、3日間入院していたんだよ。

 全身麻酔をしての手術だというので、ぼくは心配していたんだ。
 でも、男の子は別に怖がっていなくて、お医者さんにゲーム機のスイッチを持って来てもいいと言われて喜んでいた。

 実際に持って行ったところ、ワイファイが繋がらないので遊べなかったんだけど、お医者さんの「駄目だ」と言って子どもを怖がらせない気遣いのようなものを感じたよ。

 入院初日は、息子が付き添って泊まった。
 家に2人の子どもがいるので、ママは忙しいんだよ。
 翌日にママと交代した息子(パパ)が、我が家に朝食を食べにきたとき、
「夜に、泣かなかったか?」と訊くと
「泣いたよ」との答え。

 やはり、手術を怖がっているのだなと思ったんだけど、
「ママがいい、ママがいい」
 一緒に泊まるのが、パパでは嫌だと泣いたということなんだよね。

 あぁ、そういえば、大昔に目の前にいる息子も似たようなことで泣いたことがあったなと苦笑してしまったんだ。

 パパはつらいのだ。
 こんなことを言うと、世の中のママに猛反撃されそうだな。

 孫の姉の小学5年生によると、麻酔から覚めると集中治療室のベッドの上。
 いろんなチューブで点滴を受けていて、身動きが出来ない。
「爆弾の部屋に閉じ込められて恐かった」
 と思ったそうなんだ。

 爆弾に見えたのは、病室の片隅にある円筒形の酸素ボンベ。
 任天堂のゲームで同じような形をした爆弾が、爆発したシーンがあったみたいなんだよ。

 5歳のリアルな感情で、いつ爆発するか恐かっただろうな。

 でさ、ぼくが歯医者さんで「抜歯」した日に、孫が大学病院で「抜糸」。
 良い歯」の日、4月18日が二人の「ばっし記念日」になったんだよね。

 これって、本当に「作った話」じゃないんだよ。

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