一人

　一人でも生きていける
　一人こそ最良の環境

　そう言えるのは
　それを言える余裕がまだあるから
　本当の孤独を経験していないから

　一人でも生きていける…
　本気でそんなことを思うと
　いざという時に踏みとどまれず
　そのまま飲み込まれてしまう
　排水口か何か
　とても暗く陰気な何ものかの中へ
　クルクルと舞いながら
　まるで枯れ葉やゴミくずのように
　汚水とともに
　跡形もなく

　僕はあの日
　もう少しで消えてしまうところだった
　まるで枯れ葉さながらに
　汚いドブ溝の傍らで
　一人
　惨めな踊りを舞っていた
　ああこのまま消えてしまう
　暗い何かの中へ
　汚水とともに
　跡形もなく

　でもその時温もりを感じた
　微かな光の中に差し伸べられる手を見た
　僕は夢中でその手にすがりついた
　
　僕にはまだ頼れる人がいる
　思いを共感してくれる人がいる
　それを実感できて
　熱を感じて
　それだけで救われた

　どうせ死ぬ時は一人…
　以前の僕なら
　そんな陳腐な言葉にさえ共感していただろう
　でも今ははっきりと言える
　それがこの世で一番恐ろしいことだって