男の子の幽霊

文字数 699文字

 近所の空き家に
 小さな男の子の幽霊が出る…
 最近そんな噂が広まっている

 去年のある寒い雪の日
 家に不幸な事故が起きて
 男の子が亡くなった
 事故のあと
 家族は悲しみのあまり家を去り
 今では空家になっている

 この後からだ
 妙な噂が広まりだしたのは

 肝試しに家に入った女子学生の一人が
 突然ゲラゲラ笑い出したかと思うと
 男の子の声に豹変し
 狂ったように髪を振り乱しながら
 仲間の男子学生たちに掴みかかり
 お前たちを…してやる…
 と口走ったとか

 夜中に前を通り過ぎた時
 ふと何かの気配を感じて振り返ると
 閉まっているはずの家の門から
 小さな男の子が這い出てきて
 目が合うなり
 四つん這いのまま追いかけてきたとか

 或いはまた…
 興味半分に空き家の写真を撮って
 後で見てみると
 誰もいないはずの窓の向こうから
 外を見つめる男の子の姿が写っていたので
 怖くなって慌てて削除したんだけれど
 消しても消しても再生され
 遂には写真の窓の向こうから
 恐ろしい形相で何やら喚きだしたので
 スマホごと供養に出した…
 …とか

 でもね
 絶対に全部嘘だよ
 どれもこれも見事な作り話
 ダメだよ
 こんな質の悪い嘘ついちゃ
 ちゃんと男の子に謝んな
 
 僕ね
 その男の子をよく知っているんだ
 とても優しくて本当に良い子だった
 大好きだった
 絶対にあの子そんなことしない
 
 あの子
 寂しいのかな
 誰か会いたい人がいるのかな
 お母さん…かな
 もしそうなら連れていってあげたいけど
 ごめん
 今はそれは無理なようだね

 代わりにと言っては何だけど
 もし僕でよかったら
 ちゃんとお話し聞かせて
 必ず最後までお話し聞かせてもらうって
 約束するから
 
 
 
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