シルバー・ローニン(5)

文字数 967文字

 私は……いわゆる「強化兵士」……古代種族「古代天孫族(ヴィディヤーダラ)日の支族(スーリヤ・ヴァンシャ)」を再現した存在だ。
 高い記憶力・論理的思考能力・頭の回転の速さ・身体能力・高速治癒能力などと引き換えに、いわば「燃費が悪い」。
 食事の量は常人より多い。
 だが……。
「どれだけ食う気だ?」
「だって、育ち盛りだもん」
「それにしても多過ぎる」
 TCAから来た2人は、露店でとんでもない量のお菓子、焼きそば、タコ焼き、牛肉の串焼き、焼きトウモロコシ、その他、中華料理に韓国料理にエスニック料理を食い続けていた。
「あなたも食べればいいでしょ」
菜食主義者(ベジタリアン)なんでな」
「え〜、それだと男の人に嫌われるよ〜」
「同性愛者なんで関係ない。大体、何故、食べ物の好き嫌いが多いと男に嫌われる?」
「デートの時に行けるお店が無い」
「安心しろ。私が好きな相手も菜食主義者(ベジタリアン)だし、今では菜食主義者(ベジタリアン)向けの店も増えている」
 ……いや……私が故郷に帰った時……私の故郷にはデートに使えるような「レストラン」は残っているのか?
 そして……同性愛者同士のカップルが「デート」など出来る状態にあるのだろうか?
 良い方向か悪い方向かは別にして、これから世の中が大きく変るのが確実な時に、私は故郷を離れ……それ以来、故郷についての情報は……ほぼ入って来ない。
 私が帰った時……私が愛した女性は、まだ生きているのだろうか?
「すいませ〜ん、梅ヶ枝餅、二〇個」
 あの少女の声が、私を現実に引き戻した。
「誰か知ってたら、教えて欲しい。精神操作能力者は、食事の量も多いのか?」
『聞いた事もない』
「2人合わせて私の5倍は食ってるぞ」
『育ち盛りなんだろ』
 後方支援チームからは、つれない返事。
他人(ひと)の金だと思って……」
「あ〜あ〜……」
「あ、ま〜君がアレ欲しいって……」
 そこは……おもちゃを多く置いてある土産物屋だった。
 そして……彼女が指差していたのは……。
「男の子って、あんなのが好きなんだよね……」
「女でも好きな人は、いくらでも居るぞ」
「そうなの?」
「そうだ」
「変なの」
 リモコン式の恐竜のロボットだった。
 かなりデカい。
 そして、かなり高価(たか)い。
「買ってもらえる?」
「ちょっと、お金が足りない」
 足りなくは無いが買ったら今月分の小遣いの残額の八〇%近くが消える。
「え〜……」
「あ……私が出しときますよ……」
 その声の主は……。
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