スカーレット・モンク(8)

文字数 1,003文字

 あたしは自分の体に「隠形」の呪法を念入りにかけていた。
 それによって(てる)が操縦するATV(四輪バギー)の後部に積まれてる死体から吹き出し続ける悪霊・魔物には、あたしの「気」は見えてない……筈だ。
 でも、少しもリラックス出来ない状態なのも確かだ。
 あたしのATV(四輪バギー)の後部にも、後方支援チームが後で調べたいと言ってきたので、「脳改造『魔法使い』」の死体が積んであるが……こっちは死ぬ直前に剣呑(ヤバ)悪霊(もの)を呼び出す呪法をわざと暴走させるのが間に合わなかったみたいで……単なる「頭に謎の電子機器を埋め込まれた魔法使いの死体」だ。
「よ……よく、こんな事考え付くな、おい……」
「まぁ、この死体から吹き出してる『何か』を認識出来ていたら、思い付きもしなかっただろうがな」
 (てる)が着装している強化装甲服(パワードスーツ)「護国軍鬼」は……ほぼ全ての魔法的・霊的な攻撃を無効化する効果が有る代りに、着装者は、これまたほぼ全ての魔法的・霊的な存在を認識出来なくなる。
 「護国軍鬼」を量産していないのは、エネルギー源である「幽明核」の大量生産が困難なだけでなく「チートだが運用の幅がおそろしく狭い」代物だから、と云う理由も有る。
 「魔法使い」「超能力者」系が着装したら、着装者にとって、あまりに当り前の感覚……早い話が「霊感」……と自分の能力・技能を封じられてしまう。
 そして、魔法的・霊的なテロや災害の発生時には……「着装者は悠々と生き残る事が可能だが、魔法的・霊的なテロや災害に巻き込まれた一般人の救助には支障が出る」羽目になる。なにせ、そんなケースでは、一般人を危険に晒している魔法的・霊的な「何か」を認識出来なくなるので。
 なので、瀾師匠の引退前には「護国軍鬼」の着装者は、あたしのような「魔法使い」系とチームを組むと云う運用が行なわれるようになっていた。(と言っても、護国軍鬼を含めた「対神鬼動外殻」の着装者や、その原型である改造人間「対神人間兵鬼」は、全世界に合わせて一〇人以上一五人以下だろうか)
「後方支援チーム、市街地は避けて軍事組織か警察機構の拠点に、この悪霊を吹き出し続けてるらしい死体をプレゼントしたいのだが、どこか良い場所は有るか?」
『旧・飯塚警察署が、現在、筑豊TCAの警察機構と軍事機構の総合庁舎になっている。そこへの一般住民の住宅地を避けたルートを今から指示する』
 あたし達は、後方支援チームの指示に従い、国道二〇〇号線から脇道に入った。
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