第14話:千葉の田舎に就職

文字数 1,694文字

 最終的には村下の2年11ケ月働いたのが、高専卒の連中で一番、長かった。村下は体力だけは、自信を持っていたが、2回目の検診で血尿が見つかり入院。退院後、上司に呼ばれ残業が、できなければ、辞めて欲しいと言われ、嫌気がさし、辞表を提出。辞める時、総務部長が、大阪に新工場を建てる予定で君たちを雇った。

 しかし、その工場建設の予定が、この不景気で取り消しになり苦労をかけ、誠に、すまないと謝り、これが、長時間労働の真相だった。その後、新聞広告を見て、次の会社を探し始めた。1ケ月後、千葉のはずれの鋳物関連化学製品メーカーの従業員募集を見た。社宅付きの条件が気に入り入社試験を受けた。

 その会社には、大卒の化学専攻した工場と機械専攻の先輩2人が、勤めていた。技術課長の6歳年上の山下先輩。化学専攻の大卒の12歳の年上の八木工場長が製品検査をしていた。その鋳物関連化学製品メーカーに入社。村下の使命は、新製品を開発する事。実験の計画、化学薬品の購入、管理、新製品の性能実験も全て任せると言われた事。

 これら等の条件は、責任は大きいものの非常にやりがいがあると思い、入社を決意。その後、多くの材料の素材の性能試験を行った。次に、その材料を混合できるか調べ、混合物の性能試験で半年をかけた。一年が過ぎた頃、新製品候補が、5種類出来上がった。今度は、その燃焼試験「性能試験」をして三種類に最終候補を絞り込み作業に取り掛かった。

 そして新製品を世に出す計画。さて、仕事以外の話もする事にしよう。この工場は千葉の田舎で最寄りの駅まで車で40分という陸の孤島。その工場敷地の中に研究室と三軒長屋と別棟一軒の四軒の木造の社員社宅があった。別棟に技術課長の6歳年上の山下先輩が暮らしていた。山下先輩は、東京六大学出身で、訳あって、夜学を卒業。

 コックのアルバイトを経験していて料理が上手。休みの日は、ポークソテー、ビーフカレーとか旨い料理をごちそうしてくれるた。それが最大の楽しみ。離れの社宅は1部屋は、妻帯者用としてつくられていた。その社宅の6畳の部屋に、麻雀台と四つの椅子を買って来て、仕事を終えた後、休日に麻雀をして楽しんだ。

 その時は、14才先輩の工場唯一の営業担当、坂井課長が得意先から帰って来てよく参加した。 本社から来る、いけめんの本社の営業部長も、よく誘った。これが一番の仕事の息抜きになった気がする。腕の方は、山下先輩が飛び抜けて麻雀が強かった。彼の性格通り几帳面な打ち方で相手が、リーチをかけると、うまく逃げた。

 調子の良い時は、強気で、うってくる。次に楽しかったのは、町内野球大会。年に4回、春夏秋冬に行われた。かなり、この地域では、野球が盛んだ。広い原っぱが多く練習場には困らない。田舎という立地条件が幸いしたのかもしれない。そして、その2人と先輩と訳ありの若手二人、運送担当の人、近所の人など9人を集めてチームを作った。

 その後。町内の野球大会に出場した。ただ、強くはなく最高でも3回戦まで。優勝は、地元の強豪3チームが独占。工場は、従業員が約30名、女性がパートも含めて5人。特に高齢者の兼業農家の人が多い。そして野菜、果物をたまに差入てくれるのがありがたい。その他、隣の茨城県の農家の息子の佐藤さんは、運転が上手で、発送課の専属の運転手さん。

 村下の引っ越しの時も荷物を工場まで運んでくれた好感の持てる6歳年上の農家の末っ子。 村下が、茨城県出身と聞き、親近感を持ってくれ、その後も親切にしてくれた男性で、優しかった。また、工場の若い女性に人気があった。しかし真面目で、女性問題もない野球の上手なナイスガイ。訳ありの若手が2人いて、軽い知的障害を持っている若者で、名前は、塩尻君。

 20代後半で、「エロ・スケベ」と、呼ばれていた。金が貯まると近くの町のソープランドへ行くのが、唯一の楽しみ様だった。発送係のパートの、若めのおばちゃんの尻を触ったり胸を触ったりした。そして、その度、ひっぱたかれていた光景が、微笑ましく思い出されてくる。それでも、いつも笑っている姿が、実に可愛らしのだ。
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