第2話 事務所の立地の説明から始めるね

文字数 782文字

私は、とある田舎で行政書士という仕事をしている。名を、井手一清という。一清で、「かずきよ」と読む。

私はいわゆる、代書屋だ。市役所とか、警察に出す書類を、手数料をもらって代わりに書いて出すという仕事をしている。たまに契約書を書いたりもする。

落語でも代書屋という演目があるらしいが、識字率が高くおまけにオンライン申請が普及した現在、文字通りの代書はほとんど無いかもしれない。まれに、ラブレターの代書を頼まれることがあるが、そういうのは正直自分でやってほしいと思う。

弊所のある場所は、田舎なので20時を回るとスーパーは閉店。店によっては19時半で終わり。田んぼ優先なので、道路の電灯は変な色と向きだし、慣れるまではなんだか不思議な場所だなと思った。慣れたらこれが普通だ。

我が事務所には野鳥が勝手に巣を作って、家族まで増やしている。朝からピヨピヨと餌をねだる声が響く。ここでは野生動物が、妙に堂々としている。自然が豊かと言うより、もはや豊かすぎて暴力的だと思う。平気でその辺のものを壊したり取っていったりする。

アフリカなら、シマウマとかキリンとか、派手な柄の動物がバシッとサバンナで決めているのだろうが、ここらの動物は全体的になんだか茶色い。煮物みたいに茶色。映えない、といったら怒られるだろう。

さて、このような田舎、一寸先は山、反対側は広々とした巨大な湖という立地の我が事務所。弊所は、私と、アルバイト君1名の2人体制で運用中。さらに、「係長」という名前の猫が、私の息子のおもりをしながらのんびりと暮らしている。

この小説では、事実とは全く関係の無い、完全創作のさまざまな事件を紹介する。
特に実在する地名や人名は、全く関係が無い。もちろんこの事務所自体も架空の事務所だ。

代書屋は、たまに他人様の人間ドラマを見てしまうことがある。色々な人生があり、申請内容があって、面白い。
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登場人物紹介

井手一清(38歳)。かずきよ行政書士事務所所長。息子と猫とのんびり暮らしている。

妻とは2年半にわたる調停をしたあとに、離婚。

係長という名前の猫(5歳)。気が向くと人間の女に化ける。

政行(7歳)。小学1年生。一清の息子。

バイトの田中さん(20歳)。滋賀商業高校卒業。働きながら通信制大学に通っている。

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