立体駐車場建設関係者専用駐車場

文字数 300文字

 じじ、と裁ちばさみで布を切るように春の陽気の中を普通列車が走っていく。郊外の、さらに外側へ。
 いくつめかの駅で特急の通過待ちをしている間、外をぼうと眺めると「立体駐車場建設関係者専用駐車場」の文字が目に入った。
 今日、本当は街の大学病院で検査結果を聞くはずだった。すっぽかしたと知ったら夫はなんと言うだろう。きっと、ではなく絶対に私をなじることはしない。そういう理由だけで選んだ相手であっても、悲しい顔をされると、自分の胸も少し詰まるというのは予想外だった。
 ついてきてほしいと言うべきだったのかもしれない。関係者、ねと呟く。それは追い越しの特急が立てた轟音に弾かれるように膝の上にポトリと落ちた。
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