第1話 三百円ショップのセーター干しネット

文字数 992文字

 セーターを干すとき、みなさんどうしてますか?
 物干し竿に掛けると、のびてしまう。困ったな。
 と思っていたら。
 この前三百円ショップでセーター用の物干しネットが、売っていました。
 二段になっていて使いやすそうだし、なにより三百円!
 これはいい! 便利グッズだ! 

「これ買おう!」

 私は意気込んで言いました。
 すると、父も意気込んで言いました。

「イカが干せるしな!」
「イカ!?」
 
 ……。
 イカですか。
 そう、先日、鮮魚売り場でイカを買った父は、それを干して焼きイカを作りたかったよう。でも、干す為の適当なものがなくて、未だに冷蔵庫の中にイカが眠っていたのです。

「イカを干したらセーターが臭くなるから干さないよ」
「ちょうどいいのになあ」

 イカは干さないと釘を刺しておいて、そのネットを買いました。

 家に帰ってきてから袋をあけてネットを見ると。
 二段のセーター干しネットが、一袋に三個も入っているじゃないですか。

 え? これ三個で三百円だったんだ。
 安くないですか?!

「三個入ってたから、一個はイカ用でいいよ」

 ということで、二個はセーター用(それでも十分)、一個はイカ干し用として使う事に。

 さっそく冷蔵庫の二杯のイカをあらってベランダに干します。
 曇りだったけれど、乾燥しているので半日でいい具合に乾いてきました。

 肝心のセーターは、冬が終わるころ、まとめて洗う事にしましょう。

 で、イカ。
 パリパリになる前の、しっとりした感じになるまで干し、それを魚焼きコンロで焼きます。
 これもいい具合に焼けてきて、香ばしいイカの匂いがしてきました。
 そう、よくお花見に行くと屋台で焼いている、イカの匂いと同じです。

「いい具合に焼けて来たな」
 
 父はご満悦です。

「ほんと、いい匂いがする」

 コンロを覗きながらイカの焼き具合をみます。

「できた!」

 そして焼きたてのイカをお皿にもって実食。

 柔らかくて、丁度いい塩加減のイカです。
 匂いも美味しそうだけど、味も申し分ない。
 
「おいしいねー」

 と言いながら、わたしたち家族はみんなでそれをバクバクと平らげました。

 セーター干しネットは意外なものに使えました。

「それ、イカにつかったセーター干しネットは、イカ用って書いておいてね」

 イカを食べながら、私は一応また釘を刺しておきました。

 間違っても、イカに使ったネットでセーターは干したくないですからね。 



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