第2話

文字数 328文字

「こんなふうにいったら、きみも、よい方向に理解してくれるかもしれない」と、眼球はおだやかな青白いガスをうっすらと揺蕩(たゆた)わせながらいった、「胃まで喰われるやつだっているんだ。骨は残されるかもしれない。だけど、胃や腸まで喰われるやつもいるんだ。お尻の穴も、鼻の穴も、耳の穴すら残らない。
 たしかにきみはイケメンだし、その顔を失うのを惜しむ気持ちは、ぼくにだってわらかないではない。
 でも、きみはやがて年老いる。その顔の肉もたるみ、シワがよって、鏡に映る顔をだましだまし生きるしかない。その顔はぼくが齧らなくても失われるんだよ。
 ところが、ぼくがきみにつながれば、きみの顔は老いることがない。いまきみが目のまえに見ているままの、このとおりの眼球のままだ」
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