木家

文字数 2,018文字

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かってにかきこむ わるいこ だれだ

「レイディーーーース・アンド・ジェントルメン!さて、怪鳥の火の輪くぐり!お楽しみいただけましたでしょうか!」
「残念ながら、あらかた焼け落ちてしまいましたが…これもまた一興!…では、本日のメインステージと参りましょう!」
近くに魔人はいないかなっ、と。

お、丁度いいのがいた。

Verylong_P_coat

「さてさてそれでは本日の主賓!主役!もしくは被害者?イカれた魔人の登場だーッ!」
サーカス会場よりは手狭な、しかしオーディエンスが100人は詰め掛けているであろうマジックハウス。ここは私が好きなようにできる場所でもある。

Verylong_P_coat

ぱちん、と指を鳴らすと一瞬照明が落ち、派手なエフェクトと共に1人の男をスポットライトで照らす!
…!?
今回、私が選んだのは口舌院怪談。口舌院の者ならば、少しは楽しめるか――とは確かに思ったが、招待した主な理由は、「近くにいた」からである。理由なんてそんな者で十分だろう?

Verylong_P_coat

「さて、ここがどう言った場所か、まだ理解はしていないでしょう!我々も鬼ではありません、簡単に説明はさせていただきます!」
オーディエンスから苛立ちと失笑が漏れている。でも、だからこそ、焦らして焦らして、盛大に殺す。それが私の流儀だ。

Verylong_P_coat

「僕は、『レジェンドォォォォ、マジィシャン』!あなたには今から、娯楽のために死んでいただきます!何かご質問はぁ?」
少し、男は―――怪談は、首をすくめた。動揺の色は感じられない。

Verylong_P_coat

そして、億劫そうに…。

Verylong_P_coat

「はぁ、ボクの専門は死人なんやけどなあ。生きとるもん相手取っても、ボクにはなんもできまへんで?」
「おやおや、そうでしたか…これは大変失礼。口舌院の方なら、ある程度はやれるものかと期待したのですが…まぁいいでしょう!今回はプログラムを拷問に変更して――」
「せや。こんなことびた一文にもならへんし、だからここはボクの専門でちゃっちゃっとやらしてもらうわ。」
「…ありがたいことに、ここの客はそういう、人が死ぬところをぎょーさん見とるみたいやしな。さぁて、」
「いかしてもらおか」
ゾクッ、と首元に寒気が走った。

Verylong_P_coat

見ると、足元から延びるは、手。

手、手、手、手、手、手。

手手手手手手手手赤子の手老人の手ひび割れた手赤黒い手。


手。

慌てて指をぱちん、と鳴らす。マズい。奴に喋らせたのは不味かったか。とりあえず、奴の視界外に移動を―。
「ほんま霊ってのは厄介なもので、どこまで行ってもどこまで行っても追いかけてくるんです。そりゃそうってもんですよ。だって死んではるさかい。そりゃ地の獄まで追ってくるってモンですわ。むしろホームグランドってわけで。」
まだ追ってくる。消えて、ついてくるのではなくて。ずっと視界に入っている。まるで、僕自身の虹彩に入ってしまったかのように。
「難儀なモンですわ。可哀想に」
「…それは、僕に言っているのかい?それとも、死霊の方に?」
手は消えない。消えない。消えない。掻き毟る。掻き毟る。血が出る。よかった、僕の血はまだ出る。僕の精神はまだ壊れちゃいない、まだ、まだ、まだ。
「へェ。とっくに意識は切れたと思ったったけど。案外しぶといなぁ。もしかして、自分妖の血でも入っとるん?」
「…!僕は、正真正銘人間だッ!」
指をぱちん、と鳴らす。手は消せない。構造が分からなさすぎる。だから、一刻も早くこいつを殺す…!
降り注ぐのはナイフの雨。僕だけを避けて地面に突き立っていく…!
…その行動に、何か引っ掛かりを覚えたのは事実だ。でも、止めることはできなかった。

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「このっ…汚らわしい手は…っ!不快に過ぎる!」
怪談に突き立っていくナイフ。血が吹き出す。ふと客席を伺うと、歓声は爆発のように響いていた。

その中に、不自然な影を見つける。

Verylong_P_coat

「アホか自分」
気付いた時には、数本のナイフが胸に突き刺さっていて―。
どさりと、倒れた。

Verylong_P_coat

「替え玉トリックや、替え玉トリック。そんなん見抜けへんでよぉマジシャンやっとるなぁ。」
どっ、と歓声が響いた。

Verylong_P_coat

「はぁ、アホくさ。どっから出れんねやろ。」
…さて。

Verylong_P_coat

「おぉーーっとどうしたレジェンド・マジシャン!死んでしまったのかあああ?まったく、情けない!!」

Verylong_P_coat

この中に、

Verylong_P_coat

「…!?」
「なぁんてな!レジェンド・マジシャンは生きている!僕たちは君の復活を見たいんだァ!立ってくれぇぇぇぇ!!!」

Verylong_P_coat

最初から、裏方に徹していた――私の存在に気付いていた者はいるかな?

Verylong_P_coat

「…もちろん、僕は生きてるさ!今回も最高の演出だったろ!みんな、応援本当にありがとう!」
「…は?そんなん、嘘やろ。今のは思いっきり死んで
「ああ失礼、小道具の片付けがまだでしたね。」
ぱちん。
無論、いないだろう。それでいい。

――裏側は、見えないからこそ美しいのだ。

Verylong_P_coat

「これにて、今日はお開きとさせていただきます!では、噺家である彼にちなみまして…」
「お後が、よろしいようで!」
…きっと、まだ続く、ということなのだろう。


この惨劇が。

Verylong_P_coat

そこまでです!!

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登場人物紹介

名前:口舌院怪談(くぜついん かいだん)
性別:男性
設定:



詐術師の家系「口舌院家」の噺家にして葬儀屋。38歳。

喪服姿に黒縁眼鏡、薄笑いを浮かべた口元と全く笑っていない目が特徴的。一人称は「ボク」。

関西圏中心の訛りを含んだひょうきんな喋り方をするが、本人が纏う圧倒的な陰気さが逆に不気味さを強調する。


上方で真打落語家として活動しており、怪談噺を語らせれば右に出るものはいないという実力者。

金に非常に汚い性格で香典から中抜きするのは日常茶飯事、副業として幽霊や死体を裏社会に横流しして稼いでいる外道。財布の紐も堅いが、悪銭身に付かずと言うべきか予定外の支出が多すぎて一向に貯金が増えないのが悩みらしい。


特殊能力:苦々重苦(ジュークボックス)

言霊から幽霊の贋作を作り出す。 

聴衆の没入度や筋立ての完成度によっては生前の人格を限りなく再現することが出来るが、怪談の解釈によって成り立つ創作上の存在でしかあり得ず、それ自体は何の力も持っていない。


他者の認識をかく乱・改変することに長けた口舌院の例に漏れず、あまりに真に入った噺はそこにないはずの死体をあると騙り、生前葬を本物の葬儀に代えてしまうことも不可能ではないという。


作者:翻訳者

名前:レジェンド・マジシャン


性別:男性


特殊能力:『種も仕掛けも』


古今東西、多種多様な手品を操る。


トリックなのか、魔人能力なのか。それを知るのは彼自身のみ。




キャラクター設定:多くのファンがいるにも関わらず、現在まで名前すら判明していないマジシャン。分かっている特徴は、若い男性であることと、黒いタキシードに身を包み、胸元に蝶ネクタイをつけているということ。


不定期で「マジックショー」を開催し、そのフィナーレとして「レジェンドマジシャンvsイカれた魔人」というマッチングを行う。ショーのチケットは高値で取引されている。



相手を倒したい理由:「It’s show time!」


作者:木家

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