第4話

文字数 351文字

「……本当に、できるのか?」
「できる」
「痛かったり苦しかったりとかは?」
「ない」
「俺は影になるとどうなる?」
「どうもならない、影になるだけ。影の俺みたいに強く願わなければ言葉だってしゃべれないし」
「……実質、今の俺は、しぬ?」
「息をしない意思がないのをしぬというなら、しぬ」

 俺は、雲に覆われた空を見上げた。

「……しにたかったし、いっか」
「じゃあ、手伝うよ、そのままでいて」

 苦しくも痛くもなく、この現実から逃れられるなら。
 十六歳で生涯を終えて、異世界にでも転生してやり直そうとしたけど、俺は、影に変わるらしい。

 春雨は、柔らかく俺の体を溶け込むように濡らす。

「これが春雨じゃー! 濡れて帰ろうー!」

 ハイテンションのマサトは、スキップしながら家路についた。
 俺は自動販売機から離れ、闇に溶け込んだ。
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