第3話

文字数 577文字

と、想像を逞しくしたくなるくらいに、現在のクズという植物に対する僕らのイメージは、「侵略的外来種」である。

温暖な気候に適していて、数十年前までは見られなかった地域にも、昨今のいわゆる温暖化のせいか繁殖を拡げている事が、そうした移入先での駆除対象としてのイメージと重なってるのかもしれない。

最初に書いた様な、太古から日本において利用されてきた有用な在来種である事実を、現代人は忘れる前に知らない。

また、クズやワラビからよりもっと手軽なでん粉質の精製が一般的となった事で淘汰されている現実も大きく関わっており、繊維や肥料ももっと手軽な物に取って代わられている。
そして、それらは総じて海外、特に敗戦後主な戦勝国である北米から押し付けられたモノであるという事は、本質として問題にされていないのではなかろうか。

かわいそうなクズ。

ほんとは役に立って、繁盛を喜ばれる未来があったかもしれない。
全体が歪んだ構造にある中、そこに埋没し、否定的に捉えられた個性。
それ自体は、変わらないものなのに。
キモノや薪、瓦屋根。
そうした生活に大きく関わるものだからこそ、より僕らに影響を与え、その変容は知らずにヒトを変えていく。

文化的生活の宿命。
その象徴のひとつとして、このクズが、どうにも愛おしく感じるのは、果たして僕みたいな捻くれ者の妬みによる八つ当たり的感情でしかないのだろうか?
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