【4日目 8月4日】

文字数 781文字

今朝は、横川さんと3人で朝食をとっている。
昨日の夜の出来事は、既に浩二には伝えてある。浩二もだいぶ驚いたようだが、胸のつかえも降りたようだ。
哲也といえば、相変わらずで、昨夜の事は何もなかったように、物凄い食欲で朝食を食べている。
すでに食事を終えた横川さんは、哲也の食欲を見ながら話し掛ける。
「今回君達には、本当にお世話になりました。君達と組んで仕事が出来た事は本当にラッキーだったと思います」
「いやいや、こちらこそ有難うございました」哲也は食べている物を飲み込んで。
「終わってみれば案外たのしかったし、こんなホテルにタダで泊まれて、美味しい物も食べられて、僕らの方がラッキーどす」
「そう言って貰えると嬉しいよ。そうそう忘れないうちに渡しておくよ」
そう言うと、封筒を二つ取り出し、僕らの前に差し出した。
「今回のアルバイト料だよ」
「ありがとうございます」
「おおきにどす」
「また縁があれば、どこかでご一緒したいね」
「いつか本物の《合奏》を見てみたいです。横川さん見つけてくださいよ」
「ああ、私も見てみたいよ」
食事を終えて朝食会場の入り口で横川さんとお別れをした。
「壮太、ええバイトやったろう」
「そうだね、哲也は、やっぱたいしたもんだよ」
「いやいや、壮太がいてくれたさかいできたんだよ。さあ、部屋に戻ってチェクアウトの準備するか」
「そうだね」
エレベーターホールに向かう途中、振り返ってロビーに目をやると、石の壁に風景画が飾ってある。ここに来た時と同じだ。
明日にはフェルメールの《合奏》が飾られている筈だ。
思わず足を止めてロビーの吹き抜けに目をやると、窓から夏の日差しが射し込んで来ている。今日も暑くなりそうだ。
「壮太、エレベーター来たぞ」
哲也の声で我に返る
「OK,今行く」僕はロビーを後にした。

         完
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み