デュエル

文字数 2,152文字

「俺が先攻だぜ!ドロー!『小さなゴブリン』を召喚!ターンエンド!」
「次は俺だぜ!ドロー!『嘆きの亡霊』を召喚!このモンスターは召喚した直後に破壊する代わりに、相手のモンスターも墓地に送ることができる効果を持っている!よってお前の『小さなゴブリン』も墓地に送られる!」
「ちょっと待って」
「どうしたの?」
「それ酷くない?」
「なんで?」
「なんでって、それ自殺教唆でしょ。いくらデュエルを有利に運ぶ為とはいえ、命をぞんざいに扱うのはどうなの」
「いや、でも、亡霊だよ?」
「ああ、そっか。じゃあ大丈夫か」
「とりあえずOKってことにして、ターンエンドね」
「俺のターン!ドロー!『ベビードラゴン』を召喚!ターンエンド!」
「ちょっと待って」
「どうしたの?」
「ドラゴンとはいえ赤ちゃんでしょ?バトルフィールドに一人きりで召喚するのはあまりに危険でしょ」
「それもそうだ」
「託児所とかないのかな」
「ないなあ。でも一人きりにしておくわけにもいかないよね」
「そもそも保護者はどこ行ってるんだろう」
「迷子になっちゃったのかな。とりあえず安全なところで預かっておいて、保護者が来るまで待とうか」
「それがいいよ。ターンエンドでいい?」
「いいよ」
「俺のターン!ドロー!フィールドカード『託児所』を使用!」
「早速現場の問題を解決しようとする姿勢、すごく良いと思う。でも場所だけあってもどうかな」
「モンスター『保育士』を2体召喚!」
「なるほど。資格を持ったプロがいれば子供だけでなく利用者も安心するし、ワンオペで負担がかかりすぎないように2人用意したわけだ。預けられる子供が増えないとも限らないし、仮に子供がお漏らしとかしても対応しやすいもんな。良い手だ」
「場を整えたところで、ターンエンド!」
「俺のターン!ドロー!モンスター『妖艶な人魚(マーメイド)』を召喚!」
「ちょっといいかな」
「どうしたの」
「このカードの絵さ、明らかに人間の女性をベースに、足を魚っぽくして人魚って言ってる感じじゃん。でも上半身はビキニみたいな感じで、明らかに露出過多だと思うんだよね」
「人魚姫のイメージが強いんじゃない?」
「まあそうだと思うけど、そこまでエッチくする必要あるかな?しかも妖艶って」
「確かに、このカードゲームのターゲットは俺らみたいな小学生男子だもんね。それに、女性的な服装を好まない女性人魚も絶対いるだろうし、少しステレオタイプすぎるデザインかもね」
「そうだね。玩具メーカーに進言してみるわ。アイテムカード『電話』を設置、玩具メーカーのお客様センターに接続!」
「すぐ行動に移す姿勢、素晴らしいと思う」
「もしもし、『激闘デュエルターボ ブースト圧1.5gf/cm2』のユーザーなんですけど、『妖艶な人魚』というカードのイラストについてお聞きしたいことがありまして。小学生男子をターゲットにした商品のデザインとしては肌の露出が多すぎると思いますし、男性の人魚もいると思うので、もう少し肌の露出を抑えたイラストにして頂くか、中性的なデザインを採用するのが適当かと思うのですが。…はい。そうです。…なるほど、それもいいですね。ご丁寧にありがとうございます。…あはは。こちらこそ、楽しませていただいてありがとうございます。月末に発表される新しい要素も楽しみにしています。では失礼いたします」
「電話すごくちゃんとしてるね。小5とは思えないよ」
「上半身の水着を長袖にすることを検討してみるって。新しいスクール水着みたいな感じの」
「なるほど。流石は天下の玩具メーカー『KP61スターレット』だね」
「あ、ごめん。お前のターンだったのに勝手に行動しちゃったわ」
「いいよ。元々ターンエンドするつもりだったし。というかドローした?」
「あ、してない。していい?」
「いいよ。なんならターンやり直してもいいし」
「ありがとう。ドロー!あ、ゴミカードだったから、やり直さないでそのままでいいわ」
「ちょっと待ってよ。ゴミはないでしょゴミは。カード1枚作るのにどれぐらいの人が関わって、どれぐらいの労力がかかってるのかとか、ちょっとは想像しなよ。あまりにも失礼だよ」
「ごめん。でも、本当にゴミなんだよ」
「ちょっと見せてみて」
「ほら」
「あ、本当にゴミだ。というかカードですらないじゃん。ただの裏紙に買い物のメモ書いたやつだね。でも、これ無いとお母さん困るんじゃない?」
「いや、これもう買ってあるし、うちは買い物するのはお母さんじゃなくてお父さんなんだよ」
「そうか。ステレオタイプのイメージで話しちゃったわ。意識をアップデートするよ」
「その姿勢、素晴らしいと思うよ。ターンエンドね」
「俺のターン!ドロー!モンスター『ストロングドラゴン』を召喚!」
「あれ?もしかして」
「どうしたの」
「このドラゴン、もしかして赤ちゃんドラゴンの保護者じゃない?」
「あ、そうかも。バトルフィールドから託児所に移動!」
「どう?」
「やっぱりお母さんだったみたい。一件落着だね」
「よかった」
「『ストロングドラゴン』をバトルフィールドに移動!プレイヤーに直接攻撃!俺の勝ちだ!」
「え」
「えじゃないよ」
「そういえばこれ、デュエルだったね」
「そうだよ。何で忘れてたの。しかもただのデュエルじゃなくて、命を賭けた闇のデュエルだよ」
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