第4話

文字数 7,708文字

 窓からの眩い光が顔を照らし、アトラスは目を覚ました。目をこすり、外を見ると、そこには春がいた。長い間厚い雲に覆われていた空からは雲が消え、どこまでも続く青い空と太陽が町を見下ろしていた。アトラスは急いで階段を駆け下り玄関ホールの扉を開けると、屋敷の前からも白い雪は消え、見渡す限りの草原が顔を出していた。
「やった……! 春が来た!」

 イオンとレオンが目を覚ましダイニングにやってくると、アトラスはウキウキとオートミールを用意していた。なんだか様子がおかしい。レオンはダイニングに腰掛けながらアトラスに声をかけた。
「アトちゃーん、何かあった?」
「春が来ました!」
「「春ぅ??」」
 イオンとレオンは顔を見合わせて首をかしげた。春とはどういう意味だろう。だが、レオンは気が付いたのかニヤニヤしながら聞いてみた。
「いい人できたの?」
 すると、アトラスは苦笑した。
「違いますよ、その春ではなく、季節の方の春です」
「「なーんだ……って春!?」」
「そう、春ってお嬢様方もちろん知ってますよね?」
 イオンとレオンはテーブルに手をついて立ち上がった。その反応にアトラスは首をかしげたが、イオンとレオンは首を縦に振り、横にも振った。
「知ってるけど」
「初めて!」
「どういうことです?」
「私たち目が覚めてから春を見たことがないの」
「秋と冬しか見たことがない!」
「ん? 待ってください? 目が覚めたってどういうことですか?」
「あれ? 知らなかった?」
「私たち意識取り戻してから今日で半年くらい経つんだよ」
「い、意識……!?」
 アトラスは頭が混乱した。意識がなかったということは、その間意識不明のまま眠っていたということか? それで春を見たことがなかったのか。どれくらい眠っていたのだろう。アトラスはふたりが哀れに思えてきていた。でも、初めての春。良い体験をさせてあげたい。
「なら、ご飯食べた後外に行きましょう!」
「「外!?」」
 アトラスの提案にイオンとレオンは青ざめた。
「ダメだよ! 外は危ないんだよ!」
「そうだよ! パパも外に出ちゃだめだって」
「ちゃんと許可は取ってあります! あの時に約束したでしょ?」
 アトラスの得意げな表情に、イオンとレオンはガタンと座り込んだ。本当にこの兄ちゃんやってのけた!
「で、でもどうやって」
「それがぁ……」


 アトラスは冬の間に一度戻ってきていたオーナーに話しに行った。すると、オーナーはにこやかにこう答えた。
『え、春になったら外に出たい? いいよ! その時はアトラスも必ず傍にいてあげてね』


「って」
「軽いな!」
「でも外に出れるんだ……!」
 レオンはつっこみ、イオンは目を輝かせた。なんだかんだ嬉しいみたいだ。アトラスは安心した。以前、地下図書館では外に出るのを怖がっていた節があった。でも、この分なら大丈夫そうだ。アトラスはそう思っていた。

しかし。
「お前が出ろよー」
「レオンが出てよー」
 ふたりともお互いの服を掴みあい、相手を外に出そうとしていた。これは……図書館で教えてもらったスモウというやつか? どう見ても泥仕合にしか見えない。アトラスはため息をつき、ふたりの横を通り抜け外に出た。アトラスの手にはいくつかの棒があり、日当たりのいい場所を見つけては、物干し台を作っていた。
「はー! やったぁ! 雪かきはもうしなくていいし、天気はめちゃくちゃいいし! 平和だなぁ……」
 アトラスの表情はとても晴れやかだった。春が来たら町にもたくさん出かけられる。そうすれば、イオンとレオンが知りたいことも知ることが出来るし、何より人とのふれあいも時には大切だ。だから、外に出てほしいのだが。物干し台を組み立て終わったアトラスは、洗濯物を取りに家の中に入った。ふたりはまだスモウをしていた。
「イオン様レオン様、いい加減覚悟を決めたらどうですか」
 しかし、ふたりは首を振った。
「だってぇ!」
「怖いんだもんっ!」
 必死の形相で恐怖を語られても困る。
「外に出れないと世界の秘密わかりませんよ」
「「でもぉ」」
「少しずつでいいから慣れていきましょう、ね?」
「「わかった……じゃあ、あなたからどうぞ!」」
 今度はお互いに譲り合い合戦を始めた。アトラスはずっこけたが、ふたりを置いて洗濯物を取りにいった。洗濯かごを持って戻ってきて、かごを下ろしてから扉を開ける。そこから外の空気が屋敷内に流れ込んできて、青臭い爽やかなにおいが充満した。アトラスは扉を開けたままにし、かごを持って外に出た。アトラスが鼻歌を歌いながら洗濯物を干していく。
「なんだか楽しそうだね」
「うん」
 ニコニコの笑顔で洗濯物を干すアトラスの様子にイオンとレオンはだんだん興味を持ってきた。外は明るくて、草もあって、太陽もあって。それに対し、屋敷は暗く、床は固くて、明かりは少し。前にシャンデリアを掃除してからは、明かりは増えたが、太陽の光の方が強く負けてしまっている。どれだけ太陽の光は眩しいのだろう。空はどれだけ広いのだろう。草はどんな感触だろう。
「一緒に外に出ない?」
 イオンが声を上げた。レオンはすぐさまイオンの方を向いた。
「え、行きたいの?」
「うん、レオンは嫌?」
 イオンの顔は晴れやかだった。決心がついたみたいだった。それを感じて、レオンも決心した。イオンがいくなら、私も。
「ううん、一緒に行こう」
 ふたりは手を繋ぎ、扉の境界線の前に立った。一緒にしゃがみ込み、

「「せーのっ」」

 ジャンプした。ふたりは高く飛びあがり、扉の外へ着地した。すぐに気づいた。家の中の空気と全然違う。爽やかな風、柔らかくてあたたかい。それに土のにおいに草のにおいが漂っている。これが、外か。
「「外に出たどー!」」
「まだ屋根があるでしょうが! もう一歩前へどうぞ、お嬢様」
 アトラスに誘われて、もう一歩歩み出た。自分たちを照らすのは太陽という光の塊。あまりにも眩しくて直視が出来ない。周りを見ると、草がそこら中に広がっていてこれが草原なのかと実感した。正直図書館で見たどの写真よりも、綺麗だと感じた。
「これが」
「外……!」
 ふたりの目はキラキラしていた。すぐにパァと笑みが広がり辺りを駆け回った。
「外だー! 外だー!」
「外に出れたんだー!」
 駆け回っていくうちにふたりはぶつかって地面に転がった。アトラスは慌てて駆け寄ったが、ふたりは笑顔だった。
「痛いけど!」
「これが土!」
「大丈夫ですか!? 怪我は」
「「大丈夫! 楽しい!」」
「大丈夫って、こら! 土の上でわさわさしないでください! お召し物が汚れるじゃないですか!」
「「いいのいいの!」」
「良くなーい!」
 アトラスが大声を上げると、ふたりは笑いながら鳥になって上空に飛びあがった。ふたりは上空から自分たちの家を見下ろした。
「これが! 空か!」
「レオン、それが言いたいだけでしょ。それよりも、空から見てもおうちでっかいね!」
「そうだな! おっ、向こうに町がある!」
「いつか行けるかな」
「行けるよ。アトラスが連れてってくれるだろ」
「近くに森があるね」
「入れるかな?」
「流石に聞いた方がいいんじゃ……なんだか怖そうだし」
「でも、人いるよ? ほら」
 イオンとレオンの眼下には、森を歩いている人間が少なくとも二、三人見えていた。
「せっかく外に出たんなら人に会わないと」
「えぇ、そんなの怖いよぉ」
「しょうがないな」
 イオンとレオンは下降し、アトラスの両肩に止まった。アトラスは洗濯物を干していた。
「ねえねえ、アトちゃん」
「森に行っていい?」
 すると、肩に乗った鳥の正体に気付いたアトラスはダメだと告げた。
「森には怖い動物たちや人間たちがいますからね。決して近づかないように」
「ちぇー」
「それより空はどうでした?」
「広かったよ!」
「町があった!」
「そうですか。しっかし、いろんなものに変身できるのはいいですね。他にも何ができるんです? ライオンや鎧など見てきましたが」
「他? んー例えば……」
 レオンは自分の近くにアトラスの耳があるのを見つけた。そこに羽を伸ばし、姿かたちを変えていく。それは丸いイヤリングだった。
「イヤリングとか?」
「イヤーカフもいけるよ!」
 今度はもう片方の耳にイヤーカフが乗る。アトラスは両耳に重量感のあるものが括り付けられるのに慣れていないせいか気になってしょうがない。そもそも装飾品を身に着けたことがなかったので、窓に歩み寄り鏡代わりに見てみた。なかなか悪くない。
「付けるとこうなるんだ」
「なかなかお似合いですよお客さん」
「そうだ! この柄はいかがですかお客さん?」
 イオンとレオンがそれぞれ自分の姿にしているイヤリングとイヤーカフの柄や形を様々なものに変化させていった。星柄や月柄、真珠の付いたネックレスやチェーンがついたイヤーカフにも変身した。凄まじい変化っぷりにアトラスは驚きを隠せなかった。
「こんなに変身できるとは……!」
「「すごいでしょー!」」
「でも、他の人の前で変身はしてはいけませんよ!」
「「なんで!」」
「他に出来る人いませんし、みんな驚くどころかこの町から追い出されかねませんよ! これからは人と生きていくのですからそのくらいは守ってもらわないと」
「少し残念」
「不思議なことに慣れてない人の方が多いですからね。怖がられると最悪ご飯も買えなくなっちゃいますし、少しずつ理解していきましょうね」
「「はーい」」
 返事はしたものの、レオンは森にいた人々が気になってしょうがなかった。あの場所で何をしているんだろう。本によると、森の中には食べ物がたくさんあり、それらを採りにきたのかなと頭を回していた。だが、アトラスからそろそろお昼にしましょうと、家の中に促されふたりは昼食を取ることにした。

 食後、レオンはイオンと何するか相談した。
「レオン、何したい?」
「家の周り回ってみようよ!」
 その言葉でイオンは察した。
「まさか森に行くとか言わないよね……」
「行かないよ。外から見るだけ! さっきは空からしか見てなかったから歩いて見てみようよ!」
「それなら……」
 レオンは早速アトラスに許可を貰いに行った。アトラスは外に少しでも慣れてくれればとOKを出し、レオンはイオンを連れて外に出た。

「家でかいねー」
「家の中も広いと思ってたけど、外から見ると威圧感あるなぁ」
「そうだねー」
「それにしてもいつ端に着くのかなー」
「わかんなーい」
 あははと笑いながらふたりは家の横を歩いていく。周りは緑色なのに、家は黒くてとても目立っていた。空を飛んだときに見えた町の建物はどれもログハウスのような木が目立ったものが多かった。それに比べたらイオンとレオンの家は異様に見えたが、ふたりはそれも個性だと思って何も言わなかった。
 歩いているとついに家の端っこまでたどり着いた。家の裏を少し歩くと、そこは崖になっており、そこからは海が見えた。海はキラキラと輝いて、そのキラキラはイオンとレオンにも届いていた。
「すっごく綺麗……」
「すげー……これが海か」
「私海好きだな」
「なんだか似てるもんな、髪色とか」
「えへへ」
「ここ、あとでアトラスにも教えよ!」
「うん!」
 イオンとレオンは海を右手に家の壁に沿って歩き始めた。すると、目の前に森が見えてきた。森の手前は明るいが、奥に行くにつれて鬱蒼としており、それだけでイオンを怖がらせるのは容易だった。イオンはレオンの袖を引っ張った。
「レオン、早くここ通り過ぎよう? なんだか怖いよ」
「大丈夫だって! ほら、通り過ぎれば怖くないから」
「うん……」
 レオンはイオンの手を引っ張り、森を通り過ぎようとした。だが、森の中からカサカサッという音が聞こえた。レオンが音の方角へ目を向けると、人影が見えた。その人影は森の奥へと入っていった。
「あれ……?」
「どうしたの?」
「なんか人いなかった?」
「えぇ!? 人!?」
「ちょっと見に行ってくる」
「だめだよ!」
 イオンはレオンの手を握った。その手は震えていた。
「アトラス言ってたでしょ! 森に入っちゃダメだって」
「でも、気になるじゃん。少し覗くだけだって」
「でもぉ……」
「大丈夫! なにかあったら私が守るよ!」
 ね? とレオンはイオンの手を握り返した。イオンは、本当は嫌だったが、ため息をついた。
「わかった……でも、本当に覗くだけだからね?」
「よし! じゃあ、行こう!」
 レオンはイオンと森の中へ入っていった。人影を追っていくと、少し開けた場所に出た。そこには屈強な男が四人ほど立っていた。特に大柄な男がひとり、茶色いジャケットを着た男がひとり、出っ歯な男がひとり、そしてあとから来た小柄な男。イオンとレオンは見つからないように草陰に隠れた。
「おい、いたか」
「いや、見つからなかった」
「確かに外に放たれたんだよなぁ?」
「でも、依頼にないやつがいんだよ」
「関係ねえだろ! 早く探し出せ!」
「くそっ」
 男たちは何やら探しているようだった。何を探しているかわからないが、イオンは何かお手伝い出来ないかと考えた。それをレオンに伝えようとして横を向いた。
「レオ」
「しっ!」
「誰だ!」
 イオンとレオンは体を震わせた。出っ歯の男がだんだんふたりの元に近づいてくる。ふたりがいる草むらの前に立ち、乾いた笑いを見せた。
「なんだ、こんなところにいたのかお嬢ちゃん」
 バレた。見上げると、男がこっちを見て笑っていたが、その笑みでふたりは凍り付いた。
「お、俺たちはね、君たちのパパに言われてきたんだ」
「ぱ、パパ……?」
「そう! 俺たちとパパのところに行こう」
「パパのところに? それなら」
 イオンは立ち上がってついていこうとしたが、レオンがそれを遮った。
「騙されるな、イオン! 本当かどうかもわからないのに!」
「でも、パパの知り合いなら」
「パパに知り合いなんていた? 本当のことかもわからないのについていっちゃだめだ!」
「黙れ、小娘! さっさとついてこい!」
 出っ歯の男はイオンの手を引っ張った。レオンと引き離される。レオンは出っ歯の男に掴みかかろうとし、他の男たちに押さえつけられ羽交い締めにされた。そのまま森の奥に連れて行かれそうになる。
「離せ!」
「痛い! 離して!」
 だが、男たちは離さずずんずんと森を進んでいく。このままじゃまずい。レオンはとにかく獰猛なライオンに変身しようとした。だが、出来ない。恐怖が体にまとわりついて変身させてくれない。あぁ、ごめんなさい。安易に森に近づいたからこんなことになったんだ。イオンとレオンは涙を流した。
「「助けて、アトラス!」」

 その声は、アトラスの耳に届いていた。彼らの助けを呼ぶ声を聞いたアトラスは洗濯物を置いて、すぐに走り出した。

 男たちはイオンとレオンを連れて森の奥を歩いていた。目的地までまだあるが、これだけ順調なら大丈夫だろう。依頼通りの場所へ連れて行けば……。その時だった。
 出っ歯の男の隣にいつの間にかスーツを着た黒髪の男が立っていた。出っ歯の男が振り向くと、男は顔面を殴った。出っ歯の男と一緒に倒れそうになったイオンの腕を引っ張り自分の体に引き寄せる。イオンを捕まえていた男はピクッピクッと痙攣したまま動かない。その姿に、いや突然現れた黒服の男に誘拐犯たちは戦慄した。
「な、なんだお前は! お前はいったい」
 レオンを取り押さえながら叫ぶ茶色いジャケットの男の背後に回って、手刀でトンと叩くと、男は気絶し、小柄な男は怯えた。
「兄貴! こいつだ! もうひとりいたやつ!」
「レオン、立てるか」
「う、うん」
「イオンと一緒に俺の後ろに、いやさっきのイヤリングとイヤーカフに変身できる?」
「で、できる!」
 男が騒いでいる間に、イオンとレオンはアトラスが来てくれたことで安堵し、恐怖心を和らげることが出来た。ふたりはそれぞれイヤーカフとイヤリングに変身し、彼の耳にくっついた。そうこうしている間に、大柄な男がアトラスの前に立ち塞がった。
「おめぇ、人の品物に手ぇつけるたぁいい度胸じゃねえか。仲間もこんなんにしちまってよぉ」
「品物?」
 アトラスは眉をひそめた。初めからイオンとレオンを狙っていたみたいだ。
「おっと、ここからは言えねえな。守秘義務ってやつだ。でも、邪魔したやつは殺す!」
 大柄な男が大きな拳を振り降ろした。しかし、そこにアトラスはいなかった。なぜなら、上空にいたからだ。アトラスは大柄な男の顔を回し蹴りし、着地した。大柄の男はそのまま動かない。小柄な男は大柄な男の元へ駆け寄ったが、アトラスに睨まれ怯んだ。
「この際お前でいい。ここへ何しに来た。言え」
 だが、小柄な男は何も答えない。
「女の子を怖がらせて、何がしたい」
 アトラスは拳を更に握り締めた。
「お、お、俺たちは頼まれ」
「おい! それ以上はダメだ! 引くぞ!」
 いつの間に起きていた出っ歯の男は懐から水晶を取り出した。男たちは、倒れているやつも含めて、急に姿を消した。シュンッと綺麗に消えたので、アトラスはしばらく驚いて動けなかった。それはイオンとレオンも同じだった。しかし、すぐにふたりのお腹の音がなった。
「ねえねえアトちゃん」
「おうちに帰りたい……」
 アトラスは両耳についているふたりをそっとなでた。
「わかった、うちに帰ろう。ふたりともよく呼んでくれたな。偉いぞ」
 すると、イヤーカフとイヤリングから水が流れてきた。
「ううううっ!」
「怖かったぁ!」
「こらこら泣くな。耳と服が濡れる」
「「あと敬語じゃないぃ!」」
「あぁ! すみません! すっかり抜けちゃって」
「「そのままでいいよ……」」
「そう言うなら……」
 アトラスはふたりを連れて屋敷へ戻った。夕方になるまで時間はあったが、まだ他に男たちのようなやつらがいるかもしれない。アトラスは洗濯物を取り込み、中に入った。ランドリー室で洗濯物を畳んでいるときも、食事を用意しているときも、イオンとレオンはアトラスの横にずっといた。正直邪魔でしょうがなかったが、今日の出来事が相当ショックだったようで、そばを離れようとしなかった。その気持ちはアトラスにも痛いほどよくわかっていたので、何も言わなかった。
 それにしても、あいつらは一体何なのだろう。イオンとレオンを品物と呼んだ訳は? どうして狙った?
「ただいまー!」
 玄関ホールから声が聞こえた。すると、イオンとレオンはアトラスから離れ走り出した。
「「パパ―!」」
「ただいま! 我が子どもたちよ!」
 アンノウンズ氏が帰ってきたのだ。イオンとレオンは父親に抱きついて、泣きだした。オーナーはその様子に驚いて、あとから来たアトラスを見た。
「アトラス、これは一体どうしたんだい?」
「はい、聞いてほしい話があります」


「そうか……そういうことかー」
 イオンとレオンが寝静まった後、オーナーの部屋でアトラスは昼間にあった出来事を話した。オーナーはその話を聞いて、うんうんと頷いた。
「ついに動き出したんだね」
「動き出した?」
「そうさ」
 オーナーはアトラスをじっと見つめた。
「だから私は君をここに呼んだんだ」


END
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