2 理事種族ベールの意見

文字数 730文字




「もとより旧帝国では私達は反乱軍とされ、闇の帝国とさえ呼ばれていることは、捕虜の情報から周知の事実です。また新帝国でも、旧帝国側種族に対し、厳格な処断を下すべきだとの意見は少なくありません。例を挙げれば、旧帝国時代から引き続き銀河系外周星域長官の職に在る、〝辺境王〟ベールがその筆頭でしょう」

司令官の隣には、母性的で優しい微笑みを浮かべる、魅惑的な女性の映像が現れた。今後の映像体や分離個体を決める前の、試行的な方法だろう。彼女の本体は、木星のような巨大気体惑星(ガス・ジャイアント)に浮かぶ浮遊大陸だ。液化気体に浮かぶ藻類が集まって生命圏を形成し、そこで進化した多数の生物種に共有神経網を提供して生まれた、天然の種族融合体といえる。

「彼女は永きに渡り、他星域の種族とは基盤元素も文明様式も大きく異なる外周星域諸種族の指導者として、その発展に尽力してきました。また、今回の大戦では両陣営の戦力が拮抗(きっこう)する段階において、道義的理由から私達の陣営に参加してくれました。これは旧帝国の過酷な政策方針からして、敗北時には関係種族絶滅の危険を伴う勇断でしたが、彼女はその人望から外周種族の圧倒的な支持・協力を獲得し、新帝国の勝利に貢献しました。しかし他方では、中枢種族ガルガリエルを中心とした旧帝国軍により同胞種族が甚大な被害を受けたため、戦後処理については旧帝国側の全指導的種族への厳罰を求めて譲らない状況です」

外周種族は、かつて旧帝国との戦争に敗れて併合され、以後も発展を制限され続けてきた。しかし新帝国系種族との交流により、技術革新と経済発展が進み、その政策もいわば情愛深い専制統治から、自由で民主的なものに移行しつつある。今回の強硬な意見には、新帝国の駆け引きに協力した面もありそうだ。
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