4 理事種族アモンの意見

文字数 1,077文字




「しかしまた、帝国内には穏健な意見も数多く存在することを、忘れてはなりません。現在、帝国本土防衛司令官である〝強健侯〟アモンは、かつて現皇帝の軍事部門副官でしたが、大戦初期に最愛の友好種族カイムと戦う悲運に見舞われました。両者は同じ赤色巨星のもとで進化を遂げた姉妹種族であり、永く紛争を続けていましたが、(たゆ)まぬ努力の末にようやく和解を達成しました。彼女達は帝国加入を認められ、以後は協力して発展の道を歩んだ結果、最先進種族となって軍高官の地位を得ました。しかし、中枢種族バラキエルからサタン殺害を命じる(にせ)の皇帝勅命を受けたアモンが、異議を唱えて再確認を求めた時、その討伐に派遣されたのはカイムだったのです」

「帝国の処断を恐れたカイムは一切の通信を断ち、その可動母星ごと奇襲をかけてきました。アモンはあらゆる交信手段を通じて停戦を求め、遂には絶望的な努力として、自らの光線(ビーム)兵器の出力を下げ、かつて共にした母なる恒星の色彩波長に合わせて発信しました。結局、彼女は攻撃を制止できず、やむなくカイムの惑星を破壊したのですが、後にカイムも、相手を完全には破壊しないよう攻撃を制限していたことが判明しました。アモンは平素、任務においては私情を交えず、凶悪な犯罪種族や組織に対しても敢然と職務を遂行する一方、社交においては彩り豊かな感情に溢れた種族です。しかし、救援に到着した我が艦隊に勝利を告げた彼女の通信は、一大種族の集合意識と思えぬ暗黒の悲嘆と、漂白されたかのような虚脱を示していました」

「幸いにも、後にカイムの修復可能な破片が発見された時、現皇帝はアモンとの一時的融合と、失われた情報の収集・復元によるその再生を勧め、アモンも喜んでそれに従いました。かかる温情は旧帝国では考えられないものだったので、アモンと同様、彼女の内部で復活したカイムの人格もまた、新皇帝への支持を誓いました。アモンの精神は生彩を取り戻し、その士気・能力と共に、旧帝国への変革を求める意欲は劇的に高まりました。しかしアモンは、そうした苦難を経てもなお、逃亡政権種族の討滅や文明剥奪等の過酷な処分は望まず、むしろ相手方の自暴自棄により、さらに同胞相討つ悲劇が繰り返されることを恐れ、戒めています」

アモンは(ふくろう)、カイムは多数の触手を持つ蛇のような基本個体を持ち、共通個体は人類から見れば悪夢のような姿だ。しかし、両者の悲劇は多くの種族に参戦をためらわせ、新個体は両種族の情愛と新帝国の平和を示す象徴になった。人間型の映像としては、男の子のような短髪の、健康的で実直そうな少女が映し出されている。
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