第6話

文字数 876文字

「やった。できた」

 由美は思わずガッツポーズをする。彼女は自分の使える魔法がまた一つ増えたことをとても喜んだ。

 リングを潜って、家に着いた由美。玄関を開けると彼女の母がやってきた。母は彼女の朝の様子を見て心配していた。先に口を開いたのは由美だった。

「ただいま」

 元気な口調で挨拶をする。

「おかえり」

 心配していた母だったが、彼女の言葉を聞いて安心する。彼女の母は何も言わずにただ、“おかえり”と言うだけだった。そこには確かな繋がりが存在している。

 由美は自室に戻ると今日感じた思いを書き残すために、そして、大好きな作家を弔うためにパソコンを立ち上げて、ブログを綴った。

「できた…… 」

 ブログを書ききった彼女は満足していた。そして眠りについた。


 朝が来た。スマホのアラームが鳴り響く。スマホを魔法で手元に持ってきてアラームを止める。リビングに行きテレビを見ながら、目玉焼き入りのトーストとコーヒーをいただく。準備を整えた由美は玄関を出ようとする。今日もまた魔法教習所での講習だった。玄関を出る時、彼女は元気よく挨拶をした。

「行ってきます」



日付:5月4日
タイトル:緑彩花に捧ぐ

 今日の朝、私が尊敬する作家の緑彩花が亡くなったというニュースが飛び込んできた。
 彼女の死を悲しんでいるファンも多いと思う。私も彼女の死がとても悲しくて、この悲しみをどこへ持っていけばいいのか、私は彼女を弔うために何ができるのかを一日中考えていた。
 そんな中、友人が思いがけない答えをくれた。“残された者にできる弔いは悲しむことだけじゃない。亡き人が残してくれたものを大切にすることも私たちにはできる。”という友人の言葉に私は気づかされた。
 私にできることは、彼女の残してくれた数多の作品を、メッセージたちをこれからを生きるための力にしていくことで、私は彼女が作品を通して教えてくれたものを受け継いで、人の役に立てるようなことをしていきたい。
 それが、私にできる作家、緑彩花への弔いだと思っている。
 緑彩花先生、今までありがとうございました。 
 これからもよろしくお願いします。
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