Introduction

文字数 312文字

 こうやって背負うのだから、とケースを立ててみて、位置を決めて取っ手に紐を通す。紺色のケースと黄緑のフェルトは格別に似合う組み合わせというほどでもないが、外したくなるような違和感も特にない。ストラップにしては大きく、縦に十二センチほどあるから目立つことは目立つし、目に留まれば、目を引きそうだ。
 バイオリンのケースに下がるフェルトのバイオリン。
 手に取って、弦をそっとなぞる。白いテグスだ。先端の左右に二粒ずつ並ぶ白いビーズがペグ。本体の横には明るい緑色の弓が縫いつけてある。
 素人目にはわからない工夫も隠れているのだろうか。それは流石(さすが)に、夢を見すぎか。一つ余さず、理解したいと——望んでいることを自覚して、頬が熱くなった。
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