第3話 コミュ障殲滅戦
文字数 1,281文字
「だいじょぶっすか」
汗だくで、ぜえぜえしながらコンビニ突入したからだろうか。
ほかに客がいなかったこともあり、店員ちゃんからそんな声がかかった。
僕は無言の笑顔で首を振る。血の味がひどくて返事は返せなかった。
店員ちゃんは困った天使営業スマイルで対応してきた。さすがにレジ内からは出てこない。
ただ、声をかける前振りとしては十二分すぎる状況を演出できただろう。
これだけ意味ありげに全力疾走演出してコンビニに舞い戻ったのだから。
引っ越し用の何かしらが必要だが、何かそれっぽいものを探した。直接的には関係なかったが、履歴書を買ってみた。ガムテ、使い捨て食器、そして履歴書。雰囲気的に、今いる状況から離脱または変化を求めている感は出ているはずだ。これならいける。
履歴書なら特に、だ。
店員ちゃんの前のレジに履歴書を出す。
「買い忘れちゃって。はは」
はは、という笑い声をはっきり口にしていた。不自然しかない。
「そうなんですか」
店員ちゃんも愛想笑い。ぴっ。「213円です」
「お恥ずかしい限りです。はは」
213円ぴったり出す。
「ですねー。ありがとうございましたっ」
「はーい」
履歴書のみが入ったコンビニ袋を受け取る。指は触れない。
「・・・」
「・・・」
沈黙だけが流れる。5秒流れた。10秒が経過してしまった。
恐怖の時間だ。
喋れない。会話終了。店員ちゃんから話を広げてくれることを期待しまくっていた僕の心からは、これ以上一切単語が出てこなかった。やはりもっと弱キャラくんを読み込んでくるべきだ。まだ一巻の途中までしか読んでいないからこういうことになるのだ。どうしよう。困った。
店員ちゃんが笑顔で首をかしげる。会計も終わり、会話のような言葉の投げ合いも終わったのに、いつまでたっても動こうとしないからだろう。通報5秒前かもしれない。すんごいとれにくいらしい塗料のつまったボールを投げつけられるかも。
だがしかしここから離脱したら、またコンビニへ突入するには勇気だけではなく、ガチで交番勤務の警察官相手にガチ逃走中を繰り広げる勇気が必要だ。
だけど。
僕には何を言えばいいのかまるで分らなかった。多少の予習はしていたはずだが、文字通り頭真っ白状態だった。何も考えつかない。思いつかない。
困惑顔に少し引きつり気味の笑顔になった店員ちゃんを、身長の関係から、見下ろしているだけだ。
なんだか。ほんと。申し訳ない。
僕は首を振る。
本当に手紙でも書いてくればよかった。よくよく考えればあれは人類の発明した最高の発明の一つだ。なにせ口下手なストーカー野郎の気持ちですら愚直に相手に伝えることができるのだから。ほんとう調子に乗りましたすみません。でも僕には最後の手紙を書く勇気すらなかったのだすみません。
「すみません、ちょっとなんでもないっす。じゃあ」
全力不審者な言葉を残し、僕は早足にコンビニを出た。不審者ストーカー確定だ。通報されても彼女を責められないぐらい。
敗北感を背負い、コンビニを出た。
汗だくで、ぜえぜえしながらコンビニ突入したからだろうか。
ほかに客がいなかったこともあり、店員ちゃんからそんな声がかかった。
僕は無言の笑顔で首を振る。血の味がひどくて返事は返せなかった。
店員ちゃんは困った天使営業スマイルで対応してきた。さすがにレジ内からは出てこない。
ただ、声をかける前振りとしては十二分すぎる状況を演出できただろう。
これだけ意味ありげに全力疾走演出してコンビニに舞い戻ったのだから。
引っ越し用の何かしらが必要だが、何かそれっぽいものを探した。直接的には関係なかったが、履歴書を買ってみた。ガムテ、使い捨て食器、そして履歴書。雰囲気的に、今いる状況から離脱または変化を求めている感は出ているはずだ。これならいける。
履歴書なら特に、だ。
店員ちゃんの前のレジに履歴書を出す。
「買い忘れちゃって。はは」
はは、という笑い声をはっきり口にしていた。不自然しかない。
「そうなんですか」
店員ちゃんも愛想笑い。ぴっ。「213円です」
「お恥ずかしい限りです。はは」
213円ぴったり出す。
「ですねー。ありがとうございましたっ」
「はーい」
履歴書のみが入ったコンビニ袋を受け取る。指は触れない。
「・・・」
「・・・」
沈黙だけが流れる。5秒流れた。10秒が経過してしまった。
恐怖の時間だ。
喋れない。会話終了。店員ちゃんから話を広げてくれることを期待しまくっていた僕の心からは、これ以上一切単語が出てこなかった。やはりもっと弱キャラくんを読み込んでくるべきだ。まだ一巻の途中までしか読んでいないからこういうことになるのだ。どうしよう。困った。
店員ちゃんが笑顔で首をかしげる。会計も終わり、会話のような言葉の投げ合いも終わったのに、いつまでたっても動こうとしないからだろう。通報5秒前かもしれない。すんごいとれにくいらしい塗料のつまったボールを投げつけられるかも。
だがしかしここから離脱したら、またコンビニへ突入するには勇気だけではなく、ガチで交番勤務の警察官相手にガチ逃走中を繰り広げる勇気が必要だ。
だけど。
僕には何を言えばいいのかまるで分らなかった。多少の予習はしていたはずだが、文字通り頭真っ白状態だった。何も考えつかない。思いつかない。
困惑顔に少し引きつり気味の笑顔になった店員ちゃんを、身長の関係から、見下ろしているだけだ。
なんだか。ほんと。申し訳ない。
僕は首を振る。
本当に手紙でも書いてくればよかった。よくよく考えればあれは人類の発明した最高の発明の一つだ。なにせ口下手なストーカー野郎の気持ちですら愚直に相手に伝えることができるのだから。ほんとう調子に乗りましたすみません。でも僕には最後の手紙を書く勇気すらなかったのだすみません。
「すみません、ちょっとなんでもないっす。じゃあ」
全力不審者な言葉を残し、僕は早足にコンビニを出た。不審者ストーカー確定だ。通報されても彼女を責められないぐらい。
敗北感を背負い、コンビニを出た。