第1話

文字数 622文字

もうそろそろお迎えが来るようだ。
黙って逝ってしまおうと思っていたが、誰かには伝えた方がいいのではないかと、今更ながらに強く思う。これが正しいことだったのか、誤りだったのか。判断するのは未来の人々。その材料が残っていないことには、どうにもならないだろうからな。それで今もゴシップに冴える記事を書く、優秀な記者である君に来てもらった。心して記録しろ。

政財界に影響力のあるドン。そんなのは昭和の話だと思うだろ? そんなはずはないだろう。令和初期にはNHKだってそれを認めたよな。鎌倉幕府だって最初から操りの構造だ。裏に何が控えているのか、考えろよな。

まあ、そうだ。信じられないかもしれないが、俺がそういう存在だった。いや、その一人だった、という方が正確か。今が誰か、なんてことはさすがに教えられない。調査しろよ。それが君らの仕事だろう。

さて、俺が言いたいのは、今回の世界遺産登録のことだ。
この制度が始まって以来の、国家まるごとの認定だ。名誉なことじゃないか。嬉しいだろ? 

登録理由が面白いだろ?
「世界の潮流に背を向け、二十世紀的な価値観を保ち続けた列島とその国家」だと。
俺は平成の頃から考えていたんだ。この国が生き残るための手段を。

最新のものを作り出しても、欧米がルールを変えてしまい、それが無駄になる。
同じアジアからは何十年経っても目の敵にされる。
国内は批判と監視にまみれ、出る杭は打たれまくる。
これでどうやって日本を守っていけばいいんだ? とね。


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