第4話 元教師の面接
文字数 1,812文字
慎也が次に面接したのは、荒巻史郎だった。
彼は三十五歳である、教師の経験があり、今は予備校の講師をしている。
予備校では学生を相手にしているが、彼はこの募集を見て応募してきた。
学校の教師をしていた頃には、優柔不断な教頭と反りが合わず、口論の上に喧嘩をして教師を止めてしまった、そんな熱血漢だった。
しかし、今回の募集内容で、ここで壱発奮起し、再びあの頃のような熱い心でチャレンジしてみようと言う気持ちになったのである。
教師のときには、学校でのいじめの問題、生徒の親である激しいモンスターペアレントとの対決等、難しい問題に体当たりで取り組み、彼なりに努力をしてきたと言う思いがある。
あの時は、熱血漢で燃えていた頃であり、良くも悪くも難しい時期だった。
しかし、いつでも彼は生徒たちの味方であり、生徒たちからは慕われていた。
しかし、学校では現在の縮図のような様々な問題を抱えており、彼には心の余裕がなかった。
理想と現実とは大きなキャップがあり、それに悩んでいた。
彼はいつも思っていたことがある。
それは当然彼が携わってきた教育に関することである。
具体的には、今の教育は現実離れしているし、更には教師の負担が多すぎる。
このところ、まるまる休日を自分の時間に使ったことがない。
やれ部活の顧問を押し付けられたり、くだらない出張が多すぎる。
生徒を指導するための自分の勉強もっとしたいのに、ほとんどそう言う時間は無いのだ。
時間的に、また人間的にもそう言うゆとりがないために、教師間でもギスギスしている。これで本当の教育ができるのか、と思わざる得ないのだ。
今は予備校などで、学生を相手にしているので、それほどのトラブルは無い。
しかし、今になってみれば、あの頃の反省が頭の中をよぎる。
こうすればよかった、ああすればもっと生徒たちの力になれたはずなのに、と言う思いが、今更ながら強烈によみがえってくるのだ。
自分の思い込みや、考えだけで突っ走り冷静さにかけていたあの頃。
もう少し生徒の身になって真剣に対応していれば、あの時には、もっと善い解決方法があったなずだと、後悔しきりである。
今、そう言う義憤に駆られている時、苦しみ悩み解消屋という、一風変わった仕事の募集があり、今自分ができる事はこれだと思い、応募したのである。
今こそ、教育に関し、今まで経験したこと、それが人のためになることならば、それに賭けてみたいと言う熱い思いが再び蘇ってくるのだ。
今、面接室の中には面接官の慎也と荒巻史郎が向き合っていた。
「こんにちは、荒巻史郎さん、ようこそ面接にいらっしゃいましたね」
「はい、よろしくお願いします」
慎也が見た荒巻史郎は正に元教師と言うような感じだった。
目鼻立ちがはっきりして眉毛が濃い。
話す声もしっかりしていて、熱血教師と言うことが想像できる。
「あなたは、もと学校の先生だったのですね」
「はい、そうです」
「今は予備校の講師をやっているそうですが、学校を辞められた理由はなんですか?」
「はい、私がいた学校では職員室の雰囲気が悪いうえに、特に教頭が威張り腐っており、大きな声で教師を叱りつけるのを見るに見かねて、言ってやったんです」
「ほう、そんな学校があるんですか?」
「ええ、中にはありますよ、そんな学校が、だから教員が定着しないんです。
私はズケズケと言うので、教頭が私に怒鳴りつける事はありません。
私は我慢をして聞いていましたが、我慢も限界になったので、いってやりました。
そういう人間に限って気が小さいですね。
私の言葉にヒステリックになって、あるまじき言葉を発するので、私の手は思わず彼の頬を叩いてしまいました。それでクビです、アハハ」
そう言いながら史郎は豪快な笑をして頭を掻いた。
慎也は思わず心の中でつぶやいた。
(私の求めていた人間は、こう言う人間なのだ) と。
しかし、それだけではまだ彼の本質はわからない、もう少し話を聞いてみよう。
「なるほど、あなたの気持ちはよくわかります、しかし、教育の場で手を出したらいけません、冷静になった今なら、あなたなら今どうしますか?」
もう既にこのとき、慎也の採用のための人間観察は始まっていた。
「今はもう大丈夫です、冷静になって、いかに良い状態に生徒たちを導いていくことに全力を尽くす、それに尽きると思います」
彼は淡々として、自分の思っていることを理路整然と話した。
後ほど、彼もこの会社の相談員に採用されることになった。
彼は三十五歳である、教師の経験があり、今は予備校の講師をしている。
予備校では学生を相手にしているが、彼はこの募集を見て応募してきた。
学校の教師をしていた頃には、優柔不断な教頭と反りが合わず、口論の上に喧嘩をして教師を止めてしまった、そんな熱血漢だった。
しかし、今回の募集内容で、ここで壱発奮起し、再びあの頃のような熱い心でチャレンジしてみようと言う気持ちになったのである。
教師のときには、学校でのいじめの問題、生徒の親である激しいモンスターペアレントとの対決等、難しい問題に体当たりで取り組み、彼なりに努力をしてきたと言う思いがある。
あの時は、熱血漢で燃えていた頃であり、良くも悪くも難しい時期だった。
しかし、いつでも彼は生徒たちの味方であり、生徒たちからは慕われていた。
しかし、学校では現在の縮図のような様々な問題を抱えており、彼には心の余裕がなかった。
理想と現実とは大きなキャップがあり、それに悩んでいた。
彼はいつも思っていたことがある。
それは当然彼が携わってきた教育に関することである。
具体的には、今の教育は現実離れしているし、更には教師の負担が多すぎる。
このところ、まるまる休日を自分の時間に使ったことがない。
やれ部活の顧問を押し付けられたり、くだらない出張が多すぎる。
生徒を指導するための自分の勉強もっとしたいのに、ほとんどそう言う時間は無いのだ。
時間的に、また人間的にもそう言うゆとりがないために、教師間でもギスギスしている。これで本当の教育ができるのか、と思わざる得ないのだ。
今は予備校などで、学生を相手にしているので、それほどのトラブルは無い。
しかし、今になってみれば、あの頃の反省が頭の中をよぎる。
こうすればよかった、ああすればもっと生徒たちの力になれたはずなのに、と言う思いが、今更ながら強烈によみがえってくるのだ。
自分の思い込みや、考えだけで突っ走り冷静さにかけていたあの頃。
もう少し生徒の身になって真剣に対応していれば、あの時には、もっと善い解決方法があったなずだと、後悔しきりである。
今、そう言う義憤に駆られている時、苦しみ悩み解消屋という、一風変わった仕事の募集があり、今自分ができる事はこれだと思い、応募したのである。
今こそ、教育に関し、今まで経験したこと、それが人のためになることならば、それに賭けてみたいと言う熱い思いが再び蘇ってくるのだ。
今、面接室の中には面接官の慎也と荒巻史郎が向き合っていた。
「こんにちは、荒巻史郎さん、ようこそ面接にいらっしゃいましたね」
「はい、よろしくお願いします」
慎也が見た荒巻史郎は正に元教師と言うような感じだった。
目鼻立ちがはっきりして眉毛が濃い。
話す声もしっかりしていて、熱血教師と言うことが想像できる。
「あなたは、もと学校の先生だったのですね」
「はい、そうです」
「今は予備校の講師をやっているそうですが、学校を辞められた理由はなんですか?」
「はい、私がいた学校では職員室の雰囲気が悪いうえに、特に教頭が威張り腐っており、大きな声で教師を叱りつけるのを見るに見かねて、言ってやったんです」
「ほう、そんな学校があるんですか?」
「ええ、中にはありますよ、そんな学校が、だから教員が定着しないんです。
私はズケズケと言うので、教頭が私に怒鳴りつける事はありません。
私は我慢をして聞いていましたが、我慢も限界になったので、いってやりました。
そういう人間に限って気が小さいですね。
私の言葉にヒステリックになって、あるまじき言葉を発するので、私の手は思わず彼の頬を叩いてしまいました。それでクビです、アハハ」
そう言いながら史郎は豪快な笑をして頭を掻いた。
慎也は思わず心の中でつぶやいた。
(私の求めていた人間は、こう言う人間なのだ) と。
しかし、それだけではまだ彼の本質はわからない、もう少し話を聞いてみよう。
「なるほど、あなたの気持ちはよくわかります、しかし、教育の場で手を出したらいけません、冷静になった今なら、あなたなら今どうしますか?」
もう既にこのとき、慎也の採用のための人間観察は始まっていた。
「今はもう大丈夫です、冷静になって、いかに良い状態に生徒たちを導いていくことに全力を尽くす、それに尽きると思います」
彼は淡々として、自分の思っていることを理路整然と話した。
後ほど、彼もこの会社の相談員に採用されることになった。