第11話 みずぶくれはハガし所がムズカシイ

文字数 674文字

 アキレス腱を手術して1ヶ月も経った頃。

 左足につけた保護装具のせいで、足の裏の皮がひどい水脹れが何ヶ所もできてタイヘンだったけれど、皮膚科でもらった薬が効いてきたのか、ようやく傷が塞がり水脹れが剥けて下の皮が再生されてきた。とは、言うものの、風呂上がりの足裏は、皮がふやけて白い皮の膨らみが、足裏のあちらこちらにできていて、自分で見ても痛々しい。

 少し汗がひいてくると、妻が薬を塗ったりケアしてくれるのだが、この日は遊びにきていた孫娘が妻の横に座り心配そうに眺めている。皮が剥がれて、ボロボロの足裏は怖いだろうと、遠ざけていたのだが、僕を心配して、妻に言われるまま消毒液をかけるのを手伝ってくれる顔は、真剣そのものだ。

 妻は、薬を塗るために、横になった僕の足側に座り、ふやけて柔らかくなった皮を丁寧に剥がしてくれる。皮の引っ張られる感触に、血が出そうな怖さもあるけれど、風呂上がりでまだ温かい足裏に消毒液がかかるのは気持ちいい。


 首を傾けてテレビを見ていた僕が、少し強めの”引き”に

「あ、ちょっと痛いわ」 と、声をかけると

見当違いの方向から声がした

「え、どうしたん?最後に薬塗るから、ちょっと待ってて」

テッシュを取りに行ったらしい妻が台所で応えた。

え!

足元を見ると、孫娘が大きな皮を剥がそうとしていた。

「ああ、待って!剥がさんといて!」 思わず声が出た!

『大丈夫。できるから』 元気な返事が怖い。

妻が声に気付き、孫娘の手を押さえてくれた。

無邪気で優しいだけに怖かった。

ポツリ言う
『痛そうやったから』 

確かに優しい、でも怖かった。
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