第34話 邪悪な光

文字数 654文字

☆邪悪な光☆
靄がかった太陽のようなぼうっと光が、向かってくる。全身をその光に包まれたようだ。そしてその光からは、邪悪なものしか感じない。僕を呑み込んで、どこかに引きずり込もうとしている。
そう、僕は久しぶりに白い光の夢を見た。

「そうか、弁天殿が店に来たか」
弁天様がいらした翌朝、朝食の席で院長先生にその話をした。先生は両手で持つほどの大ぶりの湯飲みで、お茶を飲んでいる。
「それでサトル君、弁天殿は何と?」
「あ、はい。『気を付けよ。厄災が近づいておるようじゃ』とおっしゃいました」
「なるほどな。弁天殿はああ見えてとても優しいんだよ。おそらく、寿老人殿や布袋殿の話を聞いて、心配してくれたんだな」
「はい、よくわかります。それと…」
「何だい?」
「久しぶりにというか、白い光の夢を見ました」
「何だって!そりゃあ本当かい?」
院長先生は、湯呑を置くと眉間にしわを寄せて腕組みをした。その顔をレイさんがのぞき込む。
「ねえ、パパ。どうしたの?」
「む、何でもない。何でもないが…」
先生はスマホを手に取ると、電話を掛けた。
「ああ、クラマか。少し急ぎの用がある。悪いがうちに来てくれるか。…ああ、レイとミサトを店にやろう。じゃあな」
先生は電話を切ると、レイさんに店に行くよう促した。レイさんは何を聞くでもなく立ち上がり、ミサトさんを呼びに行った。
「サトル君、今日は家から出ないように。なに、大丈夫だと思うが念のため」
先生はパイプに火をつけ、お茶のお代わりを言いつけた。僕は言いようのない不安に襲われた。一体、何が起きているのだろう?
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