第17話 復帰

文字数 880文字

☆復帰☆
車で、店の手前まで送ってもらった。先生は万事呑み込んでいる様子で、店から見えない位置で車を止めてくれた。夜勤中の店長に、気付かれないようにポストから鍵を取り出し、そっと部屋に帰った。一時間程しか経っていないのに、部屋はいくらかくすんだように感じた。シフトは九時からだから、少し休める。ああ、もうシフトに入ることはないと思っていたのに。そう思いながら、二時間少々の仮眠についた。
八時半になり、目が覚めた僕はなんとなくお湯を沸かした。でも、出ていくつもりだったからコーヒーも紅茶も処分していた。食器はオーナーからの借り物だったので健在で、マグカップを手に取り、お湯を飲んだ。
「さて、と」
八時四十分、意を決して部屋を出た。なんとなく面映ゆい感じで、店のドアをくぐる。
「おはようございます」
店は朝の入荷とお客さんが重なって、一日の中でも忙しい時間帯の一つだ。
オーナーはレジに、もう一人の夜勤リョウジさんは、商品の陳列とレジを掛け持ちしている。
「お、きたか。品出しやって」
タイムカードを切りフロアに出ると、リョウジさんから声をかけられた。リョウジさんは、普段は魚の養殖をしているが、土曜日の夜は店の手伝いに来てくれる、オーナーの親戚だ。ん?また血縁だぞ。でも、今はそれどころじゃない。フロアに散らばっているコンテナを片付けないと。
「オーナー、これ見たことないんですけど」
人気アニメが描かれている、お菓子だった。
「うん、それカウンターに置くから、適当に二つに分けて」
「わかりました」
置き場のわからないお菓子を最後に、コンテナはすべて片付いた。
空になったコンテナを台車に乗せて、コンテナ置き場に持っていった。今度はごみの収集だ。あ、ポットのお湯も確認しないと。
「おはようございまーす」
そうこうしているうちに、レイさんがやってきた。
「ふう、やっと解放か」
レイさんがレジに入ると、リョウジさんが大きな伸びをして制服を脱いだ。
「お疲れさまでした」
「お疲れー」
オーナーとリョウジさんが引き上げ、僕はレイさんとカウンターの中に入った。
こうなったら、今日も一日頑張るしかないか。
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