第3話 やさしいお兄さん

文字数 763文字

おにいちゃん、大変だったね
うん。男の子って乱暴だよな

でも、えらいよ。キレないでずっとがまんしてるんだもん

ありがとう。今日はお茶入れてくれたり、みんなを案内してくれたり偉かったね。

君は何年生?

わたしは5年生。鈴木早穗っていうの
こんな着ぐるみのおじさんに名前言ったらあぶないよ

おじさんじゃなくてお兄さんでしょ?

わたし悪い人とそうでない人の区別くらいつくよ

じゃ、ぼくは良いお兄さん?

うん、そう。やさしいお兄さん

そんなこと言われたの初めて……のような気がする。
お兄さんの名前は?

ぼくの名前か……。

諸星聖次っていうんだけど、それは警察の人に付けてもらった名前。

本当は自分の名前判らないんだ。

え〜、なんで? それ、記憶喪失っていうんだよね?

なんだかかわいそう

今はまだ思い出せないけど……こうやってバイトもさせてもらってるし。

住むところも世話してもらったから、可哀想じゃないよ。

ところで、早穗ちゃんだっけ? もう暗くなるけどおうち帰らなくていいの?

今帰るとパパがいるから、ママが帰るまで帰りたくない。

パパ、ホントのパパじゃないんだ。大きな声でどなるし、時々叩かれるから

こんなかわいい子を叩くなんてひどいな
早穗、かわいい?

うん。すごく可愛い。でも、ぼくが言うとなんか変な風に思われちゃうよ、きっと。

ぼくはバカだからさ。

バカになんか見えないよ

閻魔様にバカバカって言われたんだ。

……あれ? 閻魔様ってなんだっけ?

閻魔様って地獄の番人だよ。面白いお兄ちゃん

地獄は行ったことないけど。

あそこはどこだったんだろう? 病院??

あ! そろそろママが帰ってくる時間。

お兄ちゃん、またね〜

うん。ありがとう。早穗ちゃん気をつけて帰ってね
さようなら〜
パーーーー パーーーーッ
あ! 危ない!!

キーーーーーーーーーーーッ     ドスーーーーン

きゃーーーーーーーーっ!
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登場人物紹介

オレは煌星星矢(きらぼしせいや)。

なんだか、いきなり死んでしまったみたいだけど、バカは死んでも治らないって。

まぁ、地獄には堕ちなくてよかった。でも天国には行けず、もう一度地上でお勤めすることに?

私は閻魔チャン。要するに閻魔大王ね。人によって見え方は違うの。星矢にはナースの姿に見えるみたい。

あ、それから、他にも閻魔ちゃんがいるって話聞いたけど、私とは違うので混同しないように。

各国の政治は大統領に担当させてるけど、私が全共和国の大王、つまり統一君主なのでお見知りおきを。

ぼくは諸星聖次。ある朝、誰もいない病院の待合室で目を覚ました。でも、その前の記憶がないんだ。世話してくれた警察官が、記憶が戻るまでってことでバイトを紹介してくれた。警察の交通課の着ぐるみのバイトなんだけど、夏は暑くて大変そうだな。

わたしは小5の鈴木早穗。交通安全教室でスタッフさんのお世話係してたの。男子がね、着ぐるみのお兄さんのことを叩いたり、けとばしたり、ひどかったから、終わった後で声かけたんだ。すごくいい人そうだったから。なのに……

私は再生共和国大統領のアドルフ。どこかの国の大統領とよく似てるって? この世界には肉体はないからな。君にそう見えるなら、私のイメージがその男とよく似ているからだろう。

(お詫び:最終話で登場予定でしたが、ブルーバード・ウイルスに感染したため出演は取りやめになりました)

私は鈴木早希。早穗の母親よ。男運は最悪ね。旦那と離婚してから何人一緒に暮らしたかな? 星矢もその中の一人だけど、早穗に暴力振るわなかったのはあいつだけ。でも、星矢は交通事故で死んだって聞いたけど……

私はブッダ、日本語で言うと仏である。いや、フランス人ではない。生まれは今のネパールじゃ。私の姿は人には見えないのだが、姿がないと話にならないので、分かり易いように坊さんの姿にしてみた。

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