ツキリの姫は孤独な姫

文字数 1,271文字

ツキリへの道を行く三人。突然、目の前にあった岩が動き出しました。
その正体は、魔物の塊。それぞれがそれぞれの形となり、動き出します。
三人でどうにかできる数ではありません。その時……

ドカァァァァン!

大きな雷が落ち、魔物は消え失せました。
そこに現れたのは、剣を持った兵士。
「誰がいると思ったら……。付いてこい。案内する。」
彼は歩き出しました。どうやら、ツキリに行くそう。
行く道で彼に話を聞くと、ツキリの食料を取りに来ていたそう。帰りに地響きが聞こえたため、魔物を封じ込めた岩の所に来てみると、予感通りになっていたようです。
彼はツキリの姫を護衛する兵士。姫に会わせてもらうことになりました。
「姫様。入ります。」
立派な扉の前でそう言うと……
「織か。入れ。」
美しい声が返ってきました。
入ると……………………………
漆黒の髪に漆黒の瞳、美しい姫が玉座に座っていました。
背後にはツキリの秘宝、月女神の短剣と太陽神の盾が置いてあり、さらには星子の兜、銀河の鎧もあります。
彼女はツキリの姫、亜藍。誰も寄せ付けない、孤高の姫です。
「姫様。その背後の物は……?」
巧が聞くと、こう答えます。
「父上から授かった四つの秘宝だ。今は私の物。触ることは禁ずる。」
簡潔に、明快に答えます。
「姫様はツキリ一の剣の腕前なのです。自ら魔物と戦い、勝利したことがあるのですよ。」
侍女がこう説明すると……
「皆同じであろう。つまらぬことを言うな。」
バッサリ、切り捨てます。
三人は目を合わせました。この姫だ。最強の剣士は、亜藍姫だ。と。
人と関わることを嫌い、なれ合うことを嫌い、つまらない話をするのも嫌う。
人間が嫌いな姫だったのです。
「姫様……あの……」
「なんだ。さっさと言え。」
言ってみよう。断られるのを覚悟して。
「わ、私達と共に…旅をしてくださりませんか!」
亜藍は眉を顰めました。
「な、なにをおっしゃるのですか!……申し訳ござりません、姫様。この者たちの処遇は…」
侍女が慌てて諫めようとした時に、
「いいだろう。」
よく響く声が、通りました。
「お父様。なぜですか?人と関わるのは嫌だと、あれほど言ったではありませんか。」
亜藍は表情を崩さずにツキリの王に言います。
本当に嫌と思っている表情ではありません。
「お前は学問も武芸もよく頑張って、すでに王にはなれる身だ。」
亜藍は間髪入れずに言います。
「でしたら旅になどでなくてもよいではありませんか?」
それに対し、王は答えます。
「お前にはまだ王としての器が足りない。人と関わることをおっくうに思ったままでは、この国の王は務まらん。……これは王の命令だ。旅に出よ。」
亜藍は答えました。
「分かりました、お父様。つきましては…ツキリの四つの秘宝、持ち出させていただきます。」
「何をおっしゃるのです、姫様!四つの秘宝を持ち出すなど、あってはならないことです!」
侍女がたしなめようとします。
「もし、四つの秘宝を持ち出してはならぬのなら、私は旅など行かぬ。」
「よかろう。持ち出せ。…旅人たちよ。亜藍を頼むぞ。」
王は最後に、巧達にそう言って、別の部屋へと向かいました。
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