第9話「恥ずかしい」

文字数 1,339文字

 二人でハンバーガーを食べて、またショッピングモールを見て回ることにした。
 私たちは中学生なのでそんなにたくさんお買い物ができるというわけではないのだが、見て回るのも楽しい。私たちは服が売られているお店に入った。

「へぇー、夏真っ盛りって感じだね、白石くんはワンピースとか短いスカートとか好み?」
「それを俺に訊くのか……ま、まぁ、嫌いではない」
「あっ、ほんとは好きなんでしょー、隠さなくていいよー」
「ま、まぁ、可愛い女の子は好きというか、なんというか……」

 いつも白石くんに押されっぱなしな気がしていたので、ここは私が押す場面だなと、白石くんをからかってしまった。ふふふ、私ったら悪い女だね。
 恥ずかしそうにしている白石くんをあまり見たことがなくて、こういう一面もあるのかと思った。

「あ、白石くんは兄弟姉妹いたんだっけ?」
「うん、三つ上のお姉ちゃんがいる。今高校生」
「そっかー、いいなーお姉ちゃんか、私は一人っ子だから、うらやましいよー」
「そうかな、お姉ちゃんも俺のことからかってくるから、恥ずかしくて……今日も『デート!? デートなんでしょ!?』ってうるさかった」
「あはは、そうなんだねー……あっ」

 そこまで話して、私は顔が熱くなった。そ、そうだ、これは白石くんのお姉ちゃんが言う通り、デートなのだ……うう、急に恥ずかしくなってきた……白石くんも恥ずかしいのかな、顔をポリポリとかいている。

「……ん? どうかした?」
「あ、い、いや、なんでもない……そ、そうだ、どうして私なんかと一緒に出かけたかったの?」
「あ、その……若月は明るくて元気だから、一緒にいると楽しそうだなって思って……つい。ごめん」

 そ、そっか、一緒にいると楽しそう……か。恥ずかしいが、嫌な気持ちにはならない。私も同じような気持ちだった。

「う、ううん、謝らなくていいよ。わ、私も同じような気持ちだから……」
「そっか、それならよかった。あ、もう少し見て回る――」
「――あれ? 和葉ちゃん?」

 その時、ふと私を呼ぶ声がした。見ると学校で一緒にご飯を食べている友達がそこにいた。

「あ、あれ!? ど、どうしたの? お買い物?」
「うん、親と一緒に来たんだ……って、あれ? 白石くんもいる……あ、ああ、そういうことかー!」

 友達がうんうんと頷いていた。や、ヤバい、デートしているところを見られてしまった……。

「なんだー、二人ともそんなに仲が良かったんだねー、隠さなくてよかったのに!」
「ええ!? い、いや、そういう意味じゃないんだけど、なんというか……あはは」
「大丈夫だよ、和葉ちゃん。このことは内緒にしてあげる! 二人で楽しんでねー!」

 友達はそう言って手を振りながら向こうへ行ってしまった。

「あ、あああ、見られた……ご、ごめんね白石くん」
「あ、いや、大丈夫……仕方ないよ、悪いことしてるわけじゃないんだし。そうだ、もう少し見て回ろうか」
「う、うん……」

 た、たしかに悪いことをしているわけではないが、やはり友達に見られるというのは恥ずかしさもあって……ま、まぁいいか。今度友達にはきちんと話そう。
 その後また二人でショッピングモールを見て回った。でも私は白石くんが『一緒にいると楽しそう』と言ったことが忘れられなかった。
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登場人物紹介

若月 和葉 《わかつき かずは》


中学二年生。バスケ部に所属するスポーツが好きな女の子。勉強はちょっぴり苦手。

特技は寝ること。いつでもどこでも寝ることができるらしい。

白石 悠斗 《しらいし ゆうと》


和葉のクラスメイト。勉強ができてカッコいい男の子。

ノートが綺麗らしい。

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