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文字数 483文字

放課後。


──といっても、入学式と諸注意、簡易なガイダンスだけの、簡単な日だ。

十二時になる前にはすでに、本日の全行程が終わっていた。

ひよりは、入学式で赴いた体育館に忘れ物をしたと言って、席を外している。

教室には、ワタルのみ。

生徒はまだ十二分に残っていて、好奇心の視線がワタルに刺さる。


居心地が悪いとは思わない。

もうすっかり慣れたものだ。

長いあいだこの視線にさらされてきた。それが、仕事だから。

それでも、“ワタル”のときに好奇にさらされることを良しとしているわけじゃない。

ただ、不快だ。今はただの学生で、“タマキ”としてここにいるわけじゃない。

これからずーっとこの視線の中で息をするのかと思うと、息苦しい。

あのぉ~……。
……なに?
出水タマキさん……ですよね? モデルの。

あの、雑誌、いつも見てますっ。

そうなんだ、ありがと。
小さく笑みを返す。

とたん、わっと女子がわく。

席の周りに人の壁が出来た。

席に座ったままだったワタルは、すっかり囲まれてしまった。

──メンドくさ。
自分のファンなのだろう彼女たちを無碍にするつもりはない。

けど、ミーハーがすぎるヤツに合わせるつもりもない。

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登場人物紹介

東ひより(あずま――) 女 15歳・高校一年

「私、だからって諦める気はないの」


本作主人公。

ふわふわとした柔らかな雰囲気と裏腹な、アクティブな思考の持ち主。

とにかく、行動してから考えるタイプ。

ワタルとは、中学のときから良い友達。

カケルに片思い中だが、とっても不利なよう。

大和泉環(おおいずみワタル) 男 15歳・高校一年

「ボクも大概バカだけど、あんたもドのつくアホだよ」


幼い頃からモデルとして芸能界で活動しているためか、プライドが高い。

きつい言葉使いとは裏腹に、細やかな気遣いができ礼儀に厳しい一面も。

ひよりの相談相手であり、友人。

カケルの弟。ひよりに片思い中。

大和泉架(おおいずみカケル) 男 17歳・高校三年

「僕と話してて面白い? ……それなら、いいんだけど」


落ち着き柔らかな雰囲気を持つが、時折頑固な一面が覗く。

“人付き合いは苦手”だと公言しており、ひとり気ままに過ごしていることが多い。

ひよりのアタックにたじたじ。

ワタルの兄。

シンプルエディタ用。モブの子。

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シンプルエディタ用。モブの子

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