第5話

文字数 13,986文字

 馬酔木と金蓮は食事を終え、食堂を出て牛車に乗った。
 牛車は金蓮が指定した区域に向かった。
 一輝は牛車のスダレを通して外の景色を見た。街道を行き交う人は少なく、道は粗い。ブリッジ状の建物が遠くに見える。
「墓は廟にあったのと同じか」一輝は金蓮に尋ねた。
「遷都の時に突貫工事で作った施設だから、結構粗いよ」
「遷都」一輝はオウム返しに尋ねた。
「皇都を引っ越すって意味だよ」
 一輝は眉をひそめた。「何で遷都なんかしたんだ」
「あたしも知らないよ」
 一輝は馬酔木に目を向けた。
 馬酔木は眉をひそめた。「私に振っても分かりません。決めたのはお祖母様ですから」
 一輝はうなった。
 牛車はブリッジ状の建物がある区画に到着した。
 一輝達は牛車から降りた。周囲に人はなく、門は固く閉ざしている。
 金蓮は門の前に向かった。直方体の柱が門の脇にある。柱のスロットにカードを差し込むと、門が自動で開いた。スロットからカードを取り出し、先へ進んだ。
 一輝と馬酔木は金蓮に続いた。門は自動で閉まった。
 門から先は整った庭園があった。
 一輝達は道をたどり、ブリッジ状の建物に来た。
 建物は複数の階と屋根を骨で支えるだけの構造になっている。
 金蓮は階段を上がり、広間で立ち止まった。
 一輝は周囲を見回した。ホールの観客席と同じ構成で、青白く鈍い光を放つ墓石が、観客席の代わりに並んでいた。
「急造の置き場、ですか」馬酔木は金蓮に尋ねた。
 金蓮は馬酔木と一輝の方を向いた。「境界を封じてから出生して死んだ、子供の墓だよ」
 一輝は驚き、周囲を見回した。墓石は無数にある。
 馬酔木は慄いた。
「何でもいいから読みなよ。何で死んだか分かるから」
「何でもって、死因は皆同じなんですか」
「大体ね」
 馬酔木は金蓮の言葉に疑念を覚え、近くにある墓石の天辺にあるスロットにカードを入れた。墓石が二つに割れ、薄い本が現れた。馬酔木は手を触れ、念を込めた。手から光が漏れ、本から文字が浮かび上がった。
 浮かび上がった文字は周囲に拡散し、光を放つ。光は映像に変わって再生を始めた。



 幼い磯女の子供は、部屋で寝込んでいる。親や医者が布団の脇に集まっていた。
 医者は子供の体に触れて症状を確認した。高熱で素早く手を離した。
 子供の意識が遠のく。
 目の前に金色の輪が浮かんでいるのが見えた。金の輪はゆらぎ、子供の興味を刺激している。手を伸ばして浮かび上がる金の輪をつかむ動作をした。金の輪は子供の手の動きに合わせて周りだす。面白さを覚え、手を動かして金の輪をいじった。触れた感触はないが、手の動きに合わせて動く。金の輪は床に落ちて転がり、子供から離れた。子供は手を伸ばすが、金の輪に届かない。体を動かして金の輪をつかむ。金の輪は黒くさびつき、粉々になって消えた。周りは黒く染まり、何も見えなくなる。
 親は子供の手を握りしめた。
 子供の意識は暗闇に染まっていた。再び金の輪が現れ、暗闇の世界を遠くへ転がっていく。立ち上がり、金の輪を追いかけた。意識が遠のいていく。
 子供の瞳が大きく揺らいだ。満足げな笑みを浮かべ、息を吐くと安心した表情をして目を閉じた。



 映像が消え、元の光景に戻った。
 一輝は目を開いた状態で固まっていた。死の受け止め方が分からない。
「非情ですが、子供が病気で死ぬのは珍しくはないです」
「今の状況では生き残る方が珍しいよ」金蓮は淡々と答えた。「ヒトと交わらず、体に残ったヒトの血だけで産んだ子供は不完全だ。9割以上が稚児になる前にに死ぬ」
 馬酔木の表情が強張った。
「ヒトの血が薄すぎて、磯女の弱い体を子供の状態で引きずってしまう。仮に成長しても子供を産む体力はない。親も同じで、ヒトの血を取り込まずに薄めるから命を縮めるんだ」
 一輝は金蓮の言葉に眉をひそめ、墓を見回した。「命を縮めてでも子供を産むのか」
「未来で生き残る為だよ。誰でも死ぬから、誰かが引き継がないと今まで築いた文化も、場所も、命も、あたし達が生きた証が消えてしまう。可能性が低くても、他にないなら賭けるしかない」
 馬酔木は徐々に怒りを覚えた。「お祖母様は酒を滅ぼす為に境界を封じたのですか。なんて勝手な」
「勝手じゃないよ」金連は言い切った。「大皇の決定は常世に住む磯女、皆の決定でもあるんだ。私情や勝手で政を決めないよ」
「皆が滅びに同意しているのですか。貴方も大皇、いえお祖母様の決定に納得しているのですか」馬酔木は金蓮に尋ねた。
 金蓮はうつむいた。
 馬酔木は言葉がでかかったが、飲み込んだ。追及するにしても、感情からくる反発しか出ない。
「オニの死体は」一輝は二人に尋ねた。「子供が産めなくて滅びるのは分かった。オニの死体と何の関係があるんだ」
 二人は一輝の方を向いた。
 一輝はたじろいだ。「自分勝手だけどさ、僕が来た理由は常世の事情を知る為じゃない。オニの死体の正体を知る為だ」
「あたしは知らないし、子供達も外を知らない。だから、今いる場所に手がかりはない」金蓮は明瞭に答えた。
 一輝は落胆した。子供の墓に来たのと、オニ鬼の死体とは何も関係がない。
「大皇は外に出て何かを知ったんだ。だから封をかけた」金蓮は墓を見つめた。「封をかけた原因が星宮、君の言うオニの死体にあるなら、原因を取り除けるのは外を知っている君しかいない」
「互いに協力しろと」
「大皇は外で何を知ったのかは分からない。あたし達は外に出てないんだからね。星宮は逆に外を知っているけど常世を知らない。お互いに別の世界の事情を知らないんだ。今、外との断絶は常世を、磯女を徐々に締め付けている。限界が近いんだ。だから外に行かなきゃ存続は出来ない。星宮、君だけが頼りなんだ」
 一輝は判断に迷った。磯女の未来の為に来た勇者ではない、オニの死体とは何かを知る好奇心で来ただけだ。墓石に目を向けた。墓石から放つ青白い光が、未練を訴えているかに見える。墓石に触れてなでた。ざらついた閑職がした。「何で、監視をしているのに協力するんだ」
 金蓮は笑みを浮かべた。「外には美味しい料理がたくさんあるんでしょ」
 一輝はあ然とした。
「星宮が持ってきた料理、外に一杯あるんでしょ。封を解除すれば、好きな時に外に行って食べに行けるでしょ」
 一輝は力が抜けた。金蓮の食への執着から、ウソはないと確信した。「分かった。次に何をするんだ」
「次と言いましても」馬酔木は周囲を見回した。「封をかけたのと同世代の磯女を調べるのは」
 金蓮は広場にある円柱の一つに触れ、スロットにカードを差し込んだ。
 円柱は台に変形した。台の上には百科事典に匹敵する分厚い本が乗っている。
 金蓮は本を開いて眺めた。立体墓地に埋葬している磯女と親元の身分が詰まった文体で書いてある。「封をかけてから産まれた子供だけでも膨大だよ。皇の呼び出しまで2日もないのに調べきれるの。まして魂鎮は一つ一つが一生分、数百年もあるんだ。せいぜい数百人しか調べるなんて出来ないよ」
 一輝はため息をついた。いざ協力すると言っても、頼りない。
 馬酔木はがく然となった。「やはり最悪の事態に備えますか」
「最悪の事態って」
「明後日の立会で、お祖母様に勝つんです。万全を期した装備を整えます」
「勝つって」一輝は困惑した。対しただけで威圧で動きが止まり、汗が吹き出る。戦って勝つなど無謀だ。不安から金蓮に目を向けた。
「武器探すなら、いい店知ってるよ」金蓮は本を閉じ、スロットからカードを抜いた。台は元の円柱に戻った。
「まともにやって勝つなんて、無理だって」
「やる前に投げちゃ駄目だよ。最悪の事態を想定するのは、作戦の常識なんだから」金蓮は階段に向かい、降りた。
 一輝は馬酔木に目を向けた。馬酔木は不敵な笑みを浮かべている。反論しても聞かないと悟った。
「入り口で待っています」馬酔木は階段を降りた。
 一輝は墓を見回してから、階段に向かって降りた。
 馬酔木達は墓宮を出て駅に向かった。既に到着していた列車に乗り、見世のある駅へ移動した。
 駅は簡素な駅舎と石畳で構成している。プラットホームにいる人は規模の割に多い。
 一輝達は改札を通り、駅舎を出た。
 駅舎から先には朱色に染まった商店が立ち並んでいた。看板に張り付いているオブジェクトが歯車とプーリーで動いていて、客の興味を引いている。
 一輝は見世の規模に驚いた。
「見世に来るのは初めてですか」馬酔木は一輝の挙動が気になった。
「初めても何も」一輝は曖昧に答えた。見世は常世でなくても存在するが、実際に見た経験はない。
「店は近いんですか」馬酔木は金蓮に尋ねた。
「すぐだよ」金蓮は人々をかき分けて通りの奥へ進んだ。
 馬酔木と一輝は金蓮に続いた。
 一輝は商店を眺めた。見知らぬ食料や工芸品を軒下に並べ、店員が立ち寄る客に説明している。店に売っている根付に興味を持ち、足を止めた。根付には鈴と共に竜が鏡の縁に絡み付いた、親指程の大きさをした金細工が付いている。金細工に興味を持ち、手に取って眺めた。丁寧に彫り込んであり、鏡も汚れがなく光を反射している。
 馬酔木は一輝の隣に来た。「興味があるのですか」
 一輝は根付から手を離した。
 馬酔木は一輝が手に取った根付を手に取り、店員に差し出して会計をした。会計を終えると、一輝に根付を差し出した。「勝利祈願です」
「別にいいのに」
「験担ぎは重要です」馬酔木は一輝を諭した。
 一輝は釈然としない表情で、馬酔木から根付を受け取った。
 金蓮は二人に駆け寄った。「二人共何してるの、店に行くよ」一輝の手を取り、店に向かって駆け出した。
 馬酔木と一輝は金蓮について行った。
 金蓮は見世の奥にある、武具を売っている店に入った。一輝と馬酔木も店に入った。
 店内の壁には、サヤに入った打刀や薙刀が飾ってある。長押には幼い子供の遺影があり、隅にはタイプライターに似た計算機が乗った卓がある。
 戸が開いたままの部屋から、店長がのれんをくぐって現れた。「納めでない客か。久しいね」落ち着いた表情で3人を見回した。
「客はお嬢ちゃんか童か、両方かな」一輝に気付いて顔を近づけた。瞳孔に大皇の印が埋め込んである。顔が強張り、金蓮と馬酔木に目を向けた。
「大皇が目をつけててね、明後日、勝負をするんだけど」
 店長は一輝を観察した。「ヒトの童かい」
 一輝は動揺した。
「体格が磯女と違う。直ぐ分かるよ」店長は金蓮の方を向いた。「外のヒトとは珍しい、封を外したのか」
「迷い人と言いますか、何と言いますか」馬酔木は曖昧な調子で話した。
「60年位か、見かけなかったから久しいね。大皇も童を痛めて楽しむとは、相当溜まっているのかね」店長は真剣な面持ちになった。「童、得物は」
「薙刀だけど、服と防具は」一輝は周囲を見回した。防具の類いは見かけない。
「単衣は動きにくいかい」店長は一輝に尋ねた。
 一輝は軽く体を動かしてから回った。単衣は見た目の割に動きを阻害せず、重さも意識しない限り分からない。
 店長は腕を組んで一輝の動きを観察した。一輝の表情に変化はない。問題はないと判断した。「大丈夫だね。軽めにして袖はタスキで結ぶと良い」
「単衣でやるんですか」
「無論だよ。試合と言っても、実戦と同じ形式だからね」店長は一輝の体を触った。肩から鎖骨に触れた時、骨格と筋肉が磯女と違う。額に顔を近づけ、匂いをかいだ。香油でごまかしているが、わずかに欲をかき立てる匂いがする。「確かに本物だ」
 一輝は店長を見て、眉をひそめた。「ヒトを知っているのですか」
 店長は笑った。「子供の時に親が外に連れて行ってくれてね、ヒトの子供に会って遊んだよ。最も、ヒトの親が突き放したんで一度きりだっただけどさ」
「外に行ったなら、オニの死体って分かりますか」一輝は店長に尋ねた。
「初めて聞いたよ。他にオニの死体を口にした磯女に会ったかい」店長は戸を開け、奥の部屋に入った。
 一輝は店長の期待外れな返事に落胆した。
 金蓮は一輝の肩を軽くたたいた。一輝は金蓮を見てうなづいた。
 3人は店長に続いて、奥の部屋に入った。
 奥の部屋には大きさの異なる防具や小袖が並んでいる。奥は畳が敷いてあり、試着室の仕切りがある。
 店長は棚から適当な大きさの単衣を取り出し、一輝に渡した。「軽い奴だ、着てみると良い」
 一輝は単衣を受け取り、隅にある仕切りに向かい、つり下がっているカーテンを引いて試着室に入った。
 店長も一緒に入った。
 一輝は店長に戸惑った。
「着替え、出来るのかい」店長は一輝に尋ねた。
 一輝は苦笑いをした。「ですね」試着室を見回した。井桁が置いてある。単衣を脱いで井桁に引っ掛けた。
 店長は手慣れた動作で着替えを手伝った。一輝は瞬く間に単衣の着替えが進むのに安心した。着替えを終え、仕切りから出た。
 馬酔木と金連は一輝の姿を興味深い表情で見つめた。
 単衣は淡い青を基調として、白く透けた千早をまとっている。先程まで来ていた単衣より軽く、袖も腕の動きを阻害しない。
 一輝は二人の目線に恐怖を覚え、無意識に引き下がった。
 店長は一輝の前に来た。「どいた、童はおもちゃじゃないんだ」一輝に目を向け、袖とほつれかけている帯ひもを引いて締めた。
 一輝は店長の手際の良さに感心した。
「買ってはいいかい、足は上げてみて」延長は穏やかな調子で一輝に尋ねた。
 一輝は軽く足を上げた。簡単に上がった。普段着ている稽古着より軽い。「大丈夫です」平然と答えた。
「大丈夫ならいい」
「すみません、薙刀は」一輝は我に返り、口をつぐんだ。店長の態度に安心し、無意識に要求を突き出したのに気付いた。
「焦らずともよい、少し待っとれ」店長は部屋から出た。
「ねえねえ」金蓮は一輝に声をかけた。
 一輝は金蓮を見た。動物の耳を象ったアクセサリーの乗った服を持っている。
「動き易くて、きやすい服を見つけたんだけどさあ」金蓮は履物を脱いで試着室に入った。
「金蓮、止めなさい」馬酔木も試着室に入った。
 一輝は二人が入ってきたのに困惑した。「何を」
 金蓮は一輝に顔を近づけてにやけた。「大丈夫だって、ちゃんと戻すから」
 一輝は寒気を覚えた。逃げ出すにしても道筋はない。
 馬酔木は試着室を仕切る幕を閉めた。
 金蓮は勢いに任せて、一輝の服を店長が持ち込んだ服から着替え直した。
 一輝は抵抗出来なかった。するにしても着替えの手順が分からない。
 着替えを終えた。
 金蓮と馬酔木の目が輝いている。着替えた服は巫女装束に近く、単衣に比べて薄い。一見して動きやすいのは確かだ。頭につけた狐の耳がついた髪留めが気になる。軽くなでた。耳が軽く震えた。「意味あるの」
「大有り、大事な感覚期だよ」金蓮は興奮気味に食って掛かった。
 馬酔木は勢いよく試着室を飛び出し、別の服を持ってきた。派手な色をしている。「次はもっと機能が上です」一輝に服を差し出した。興奮気味に息を荒くしている。
 一輝は二人を見て嫌な予感がした。勝負に着る服を持ってきているのではない、コスチュームプレイを楽しんでいる。二人の熱に悪寒がした。
 試着室の幕が開き、店長が入ってきた。「止めなよ。ウチは人形問屋と違うんだ」
 金蓮と馬酔木は渋々試着室を出た。
 店長は一輝を観察した。「変わった服が好きなのかい」
 一輝は首を振った。
 店長は笑った。「冗談だよ、さっき着てたのでいいかい」
 一輝はうなづいた。
 店長は笑みを浮かべた。「ならいい」試着室の幕を閉め、元の単衣に着替えるのを手伝った。
 一輝は店長の落ち着いた態度荷安心し、身を委ねた。
 着替えを終えた。
 店長は立てかけてある白木の薙刀を両手で抱えて現れた。「お前さんの体格に合ったのを出した。裏に案内するから振ってみな」部屋を出た。
 一輝達は店長に続いて外に出た。
 店の裏側は路地になっていて、溝の深い川が道の中央を通っている。
 店長は一輝に薙刀を渡した。
 一輝は薙刀を受け取り、持ち手を軽く擦った。柄はざらついていて持ちやすい。穂は早夜との修練で使っていた薙刀と似ていて、柄はわずかに短い。中段に構え、足を踏み込むと同時に軽く振り下ろす。重みがあり、勢いを保ったまま振り切った。力を入れ、勢いを止めた。
 店長は一輝の動きと薙刀の調子を、冷静な眼差しで観察している。
 一輝は薙刀を引き、素早く八相の構えに移ってなぎ払う。薙刀は振り下ろす時と同じく、軽く力を入れて腕をわずかに動かすだけで勢いよく動いた。軽く力を入れ、勢いを止めた。
 金蓮は一輝の動きに感心した。「結構いけるね」
 一輝は息を吐き、構えを解いた。
 店長は一輝に歩み寄った。「使い勝手は」
「すぐ止まるからいいけど、少し重い。柄も少し短い気がする」
 店長は顔をしかめて薙刀を見つめた。「ご名答だ。柄を1寸だけ切り詰めて小回りを利かせている。童の体格だと長いと扱いに困るからね。代わりに重い材で作っている。力を入れずとも素早く振り回すのが容易だ。代わりに止めるのに難儀するが、辛いかい」
「少し重いだけだ、すぐ慣れる」一輝は薙刀を見つめた「ヒトの自分が重いって感じるなら、磯女だと相当重くなるよな。扱える磯女はいたのか」
「力を失っているんなら、普通の磯女でも同等だよ。扱いに困るのは変わらないから倉庫で放ったらかしだ。場所を食って仕方ない。金はいらないから持って行ってくれ」
 一輝は困惑した表情をして、手元を見つめた。立派な造りの薙刀だ、代償を払わずに持って行くのにためらいがある。
「検非違使が大量に買い取ってるんだ、一振り位くれてやっても赤にはならんよ。大体、生きのいい男がいい武器持たずに抵抗するんじゃ、格好が悪い。大皇に活でも入れてやりな」
 一輝は眉をひそめた。
「大皇が操を狙っているって、分かるの」金連は店長に尋ねた。
「磯女がヒトを相手にするのに、他に理由があるのかい」店長は平然と答え、一輝の方を向いた。「気に入らないなら、別のを持ってくるよ」
「十分すぎますよ」一輝は構えを解いた。
 店長は薙刀に触れた。「袋に入れるから、一旦返しとくれ」
 一輝はうなづき、薙刀を店長に渡した。
 店長は薙刀を両手で受け取って抱えた。「お前は着替えて置いといてくれ、届け先は」
 馬酔木は店長に近づいた。懐から記帳と矢立を出して書き込み、切り取って店長に渡した。
 店長は切れ端を受け取って眺めた。「明日には届ける。薙刀は持って行け。触って慣れておかないと困る」
 一輝はうなづき、防具が置いてある部屋に向かった。
「着付けは出来ますか」一輝は立ち止まった。
「何だい、相手がいないと着替えも出来ないのか」
「仕方ないよ、外から来たんだからさ」金蓮は店長に話しかけた。
「楽しまんでくれよ、処理が大変だ」
 一輝は眉をひそめ、部屋に入った。
 馬酔木は店長の言葉に不快を覚えたが抑え、一輝を追って部屋に入った。
 店長と金蓮は部屋に入った。
「タダで薙刀を渡すなんて、気前が良いね。あたしのもボロボロだから、タダでもらっていい」金蓮は店長に甘える口調で訴えた。
「お前はガサツだから、すぐ壊す。持って行くなら安いのにしな」店長は奥の机に向かい、棚から袋を取り出して薙刀を入れた。
 金蓮は不満げな表情をした。
「溜まっているとは言え、大皇がヒトにけしかけるなんて相当だね。封をかける前にも迷い人はいたけど、すぐに追い返していた」店長は鋭い目で金蓮に目を向けた。
 金蓮は腕を組んでうなった。
「今は封を抜けたヒトが現れ、排除せずにけしかける。何もかも例外ずくめだね」
 金蓮は苦笑いをした。
「童に現状を話したかい」
 金蓮は眉をひそめた。「何で」
「事情を知らずに動かすのは酷だよ」
「一応だけど、話はしてるよ」金蓮は明瞭な口調で答えた。
「ならいい」店長は一瞬、遺影に目を向けると稽古着をまとめる袋を取り出した。分からずに進んだままで曲がり角にぶつかれば、自分の意志と押し付けた意思の間がせめぎ合い、自我に傷がつく。異種と言えど壊れるのは、聞くのも見るのも辛い。
 元の単衣に着替えた一輝が、馬酔木と共に店長の元に来た。
 店長は薙刀の入った袋を一輝に差し出した。
 一輝は薙刀の入った袋を受け取った。「ありがとうございます」
「大皇に挑むのなら、勝つんだよ。年端もいかない童を弄んで食べるなんて、悪食の極みだからね」
「食べるって」一輝は店長の言葉に寒気を覚えた。やはり磯女は食人鬼なのか。
「ありがとうございました」馬酔木は店の外に出た。
 一輝は店長へ丁寧に頭を下げ、外に出た。
 空は暗い青に染まっていた。提灯が光を放ち店の前に連なっている。
「宿に戻りますか」
 一輝は馬酔木の案にうなづいた。
 3人は見世を出て駅に向かうと列車に乗り、皇都の宿に戻った。馬酔木は明日は殿で調査をすると話し、別れた。一輝と金蓮は宿に戻った。
 金蓮は宿に向かうまでの間、一輝に他愛ない話を持ちかけた。一輝は適当に相づちを打ちながら話を聞いていた。
 宿に到着した。
 金蓮は宿に入る時に受付を通して給仕を呼び、部屋に向かった。一輝が荷物を整理している間にレトルトパックを取って釜戸に向かい、調理をした。
 一輝が金蓮の元に来て、調理が出来ているか観察した。
「星宮、キニナルの」金蓮は一輝に尋ねた。
「まあね」一輝は曖昧に答えた。
 レトルトパックの中身は白飯とユッケ丼の具で、見た目の奇妙さに困惑しつつも食べた。未知の味と食感に馴染めなかったが、量に満足した。
「美味しかった」一輝は金蓮に尋ねた。
 金蓮は首を傾げた。
 一輝は金蓮の反応に戸惑った。
 金蓮は笑みを浮かべた。奪った景品と言っても、レトルトを不味いと答えれば失礼になる。配慮したのだと察した。「知らない味だから何ともね。食べ続けたら分かるかも」
 一輝はうなづいた。
 二人は部屋に戻った。一輝は浮かない表情をしている。
 金蓮は一輝に顔を近づけた。「星宮、何かあった」
「別に何も」
「明後日の試合が不安で、避ける方法はないかって模索してるんでしょ」
 一輝は渋い表情をした。
 金蓮は笑い、一輝の額を小突いた。「図星だ」
「だから何だよ」
「先なんて、ほとんど外れるんだから意味ないって」金蓮は押し入れから囲碁の盤と碁笥を取り出した。「やろ。袋の料理もっと欲しい」
 一輝は金蓮の言葉に苛立った。「もう少ないよ、追い打ちをかける気かよ」
「勝てば取り戻せるよ」
 一輝は金蓮の言葉に渋い表情をした。挑発に乗れば終わる。昨日の勝負で痛い目を見ている。
 金蓮は一輝に顔を近づけてにやけた。「あたしと勝負する勇気がないのに、大皇と戦うの。一回でも勝ったら取ったの全部返すのにさ」粘り気のある口調で一輝に話しかけた。
 一輝は金蓮の言葉に苛立った。「やるよ」自棄になって声を上げた。
 金蓮は笑みを浮かべた。
 一輝は金蓮と囲碁を指した。序盤は追い込むが終盤になると決め手に欠け、守りに入った。一方で金蓮は攻めに入り、地を取っていく。
 金蓮は一輝の調子を見て、眉をひそめた。「星宮、勝ちを意識していると勝てないよ」
 一輝は返事をしない。早夜の指摘と同じだ。分かっているが勝ちを意識して周りを見ず、相手の急所に目を向けてしまう。
「勝って何の意味があるの」金蓮は一輝に尋ねた。
 一輝は眉をひそめた。「勝ったらレトルト、返してくれるんでしょ」
 金蓮は一輝の答えに困惑した。「返して欲しいなら素直に言えばいいよ、返すから」
 一輝は眉をひそめた。欲しがっていたレトルトを簡単に手放すのか。要求して素直に渡してくれたとしても、プライドが納得しない。「勝負をするからには勝って取る。検非違使ってのも同じで、勝たないと出来ない仕事だろ」
「仕事に勝つなんて感情はないよ。出来なかったら作文を作る仕事が増えるけど、上も無理を承知で頼んでるんだから仕方ないで終わりだよ」
「仕方ないって、随分適当だな」
「仕事はやるかやらないかだけだからね。結果なんて妄想から出た欲望でしかない。過剰に求めれば、何でもしてしまうよ」金蓮は盤をひっくり返した。盤に乗っている碁石が散らばった。
 一輝は金蓮の行動に驚いた。
「でも星宮、君は逃げずに規則に則って勝負をする。勝ち負けより重要なのは、挑む意思と自分への信頼だ」
「信頼って何だよ」
「自分に賭けるって意味かな。決まった枷から何をするか迷わず、意識しないで決める意思が大事なんだ」金蓮はうなった。「大体、勝っても負けても終わるんだ。終わるまでに何を出し切るかが重要だよ」
「終わるか」一輝は金蓮が吐き出した言葉をつぶやき、碁石を拾った。「勝負を頼むよ。勝ったら奪った食い物は返してもらうけどな」
 金蓮はにやけた。「勝ったら、残りをもらうよ」一輝と共に石を拾った。
 二人は石を拾い終え、ゴケに入れると囲碁を指し直した。以前より優勢になったが、大局に変化はない。一輝が攻めに出ても金蓮が簡単に回避し、石を取ってしまう。
 囲碁を打ち終えた。
 一輝は盤を見つめた。詰めが甘いのが石の並びから分かる。
「惜しいけど、負けは負けだね」
 一輝はため息をつき、バックパックからレトルトパックを取って金蓮に投げた。
 金蓮は笑顔でレトルトパックを受け取った。「毎度」
 夜がふけてきた。二人は囲碁を打ち続けた。
 一輝は疲労で目がうつろになっている。
 金蓮は一輝の調子を見て、心配になった。「寝る」一輝に尋ねた。
 一輝は意識を取り戻した。盤を見て即座に一手を打った。直後に悪手だと気付いて我に返ったが、手は戻せない。
 金蓮は一輝が打った手に驚いた。一輝は今まで予想通りの手を打ってきた為に対処は容易だった。今打った手は予想していない。攻めの手を打って地を確保するか、守りを取って手を封じるか。一輝の方を向いた。
 一輝は眠気と戦っていた。
「星宮」金蓮は大声を上げた。
 一輝は意識を取り戻し、体が震えた。
 金蓮は一輝の驚きと恐怖が混じった表情を見てあきれた。「もう休む」一輝に尋ねた。
 一輝は素直にうなづいた。眠気は増大する。今は耐えても、先の勝負は無理だ。
 金蓮は盤面を見た。一輝が打った一手は先が読めなかった。眠気が取れていて局が状態で進んでいたら、流れが変わり負けた可能性がある。顔をしかめ、息を飲んだ。立ち上がるときびすを返して押入れに向かい、自分と一輝の布団を敷いた。「布団敷いたよ」一輝に声をかけた。
 一輝は立ち上がり、敷いてある布団に目を向けた。布団は丁寧に並んで敷いてある。「ごめん、自分でやらないと駄目なのに」
「気にしなくていいよ」金蓮は一輝に顔を近づけた。「何なら、一緒に寝る」
 一輝は金蓮の言葉に寒気を覚え、嫌な顔をした。隙を見て食べる気だ。布団に潜り込んだ。
 金蓮は苦笑いをして一輝の隣に敷いた布団に入った。
 一輝は曖昧な意識で天井を見つめ、今日の出来事を振り返った。和御魂のない墓の隣に立っていた墓は、ヒトである矢作の墓で間違いない。矢作は王族と同等の待遇だ。遺体は廟に安置してある可能性が高い。となれば、奥宮にあるオニの死体は矢作である可能性は低い。
 同世代の坂城や師範、門下生が鬼の死体ではないか、と疑うが彼らがオニの死体に加工する程の重要な存在だったかと言えば否だ。
 墓宮で見た記憶には鬼の死体なる名前も伝承も一切なかった。隠していた可能性を除けば、オニの死体は矢作がいた後の世代に生きた人間だ。
 一輝は渋い表情をし、ため息をついた。鬼の死体は誰なのか、何故矢作なる者の墓と記憶が常世に存在するのか、隣りにあった墓の記憶がないのか。謎だらけで行き詰まった。隣の布団で眠っている金蓮の姿を見た。満足した表情で寝息を立てている。天井に目を向けた。謎が解けなければ花苗と戦うよりない。眠気が諦めと同時に頭から瞬く間に全身に広がり、意識を沈めた。



 翌日、一輝は目を覚ますと布団から出て金蓮が寝ている布団を確認した。金蓮の姿も布団もない。困惑しつつも起き上がり、開いている窓に目を向けた。雨が真っ青な天から降っていた。布団を押し入れに入れ、バックパックの脇に置いてある薙刀を手に持った。
 金蓮が戸を開けて部屋に入ってきた。
 一輝は驚いた。「何してたんだ」
「何って、給仕に朝食の連絡だよ。いけないの」
 一輝は金蓮の返答に気難しい表情をした。監視をしていながら、対象から離れるとは職務放棄ではないか。
 金蓮は一輝が持っている薙刀に目を向けた。「星宮は何をするの」
「手に入れてすぐだから、馴染む為に練習しに行く」
 金蓮は押入れに向かい、一輝から奪ったレトルトパックを手に取った。「付き合うよ」
「付き合うって、いいのか」
「あたしは検非違使だよ」
 一輝はうなづいた。検非違使なら、武術を心得ている。相手には申し分ない。
 金蓮は裏庭にいる旨の張り紙を書くと戸に張り付けた。
 一輝と金蓮は戸から出た。
 金蓮は一輝より前に出た。階を降りて受付に向かった。「預けてた薙刀お願い」受付の磯女に声をかけた。
 受付は立ち上がり、奥に向かった。すぐに薙刀を出して金蓮に渡した。
「ありがとね」金蓮は薙刀を受け取った。治安維持の手前、殺傷は禁止しているので穂は木製になっている。
 金蓮は傘立てに置いてある傘を手に取り、裏庭に向かった。一輝は傘立ての傘を見つめた。
「雨降っとるよ、好きに使うと良い」受付は一輝に声をかけた。
 一輝は受付の方を向いた。「ありがとう」傘を手にとってさし、裏庭に向かった。
 宿の裏庭に着いた。
 金蓮は傘を畳んで柱に置いた。
 一輝も傘を畳み、同じ場所に置いた。
 金蓮は釜戸に向かい、水瓶から水をくんで釜に水を入れた。一輝は手伝いを買って出たが、断った。火をくべて水が沸騰すると、釜に持ち込んだ二つのレトルトパックを入れた。
 一輝は軽く運動をしてから薙刀を構え、素振りを始めていた。当初は重方が、次第に慣れた。
 金蓮は薙刀を手に取り、一輝の前に立った。一輝は素振りを止めた。「早速やるよ」
 二人は同時に軽く礼をして、中段に構えた。
 一輝は金蓮に向けて薙刀を打ち込む。手数は多く洗練しているが、動きが単調だ。
 金蓮は突きや払いを柄で受け止め、簡単に払う。簡単にいなしているのに苛立ちを覚えるが抑え、薙刀を持つ手を滑る要領でずらして構えを中段から八相に切り替えてなぎ払う。一輝の払いを簡単にいなし、即座に脇構えに移行して突きを放った。
 一輝は柄を先端に合わせて弾く体勢に入った。
 金蓮は一輝の動きを想定していた。弾く前に薙刀を引き、一輝の柄を自らの薙刀の柄に絡めて弾いた。一輝の薙刀が大きく上がる。
 一輝は力が上に向いたのに焦った。薙刀が重い分、一輝の腕を強く引っ張る。
 金蓮は一輝が体勢を戻す前に突きを放ち、穂の先端を一輝に突きつけた。
 一輝は動きを止め、息を飲んだ。
 金蓮は薙刀を下げた。
 一輝は構えを解いた。衛士に勝てたのは偶然だったのか。
「動きはいいんだけど、簡単に次に何が来るか読めるんだよね」
「変則な動きをもっとしろって意味か」
「囲碁やってる時も同じだよ、意識している限り次の手が見えるんだ。昨日、寝かけた時に打った感覚はないの」
 一輝は金蓮の言葉に困惑した。「寝てたら打てないんだけど」
 金蓮は苦笑いをした。意識が落ちる直前に打ったのか、昨日の囲碁で見せた一手が分かっていない。
「もう一度だ」一輝は片手を薙刀を握り直し、手を見つめた。小夜も金蓮と同じ指摘をしていた。的確な箇所を意識して行動する為、相手には簡単に読めてしまう。慣れない動きはぎこちなく、対処は容易に出来る。以前と異なる構えや動きをして模索してみたが、金蓮は尽く対処してさばく。次々と攻撃をさばく金蓮を見て、廟で衛士と対峙した時との違いに疑念を覚えた。
 暫く経った。金蓮は薙刀を下ろした。
 一輝は金蓮が急に薙刀を下げたのに困惑し、薙刀を下げた。
「時間だよ」金蓮は薙刀を立てかけ、釜に近づいた。湯は泡立っていて、レトルトパックは沈んでいる。
 一輝も金蓮が立てかけた場所に薙刀を立てかけた。
 金蓮は備え付けの箸でレトルトパックを取り出した。一つは白飯で、もう一つはカレーだ。両方を皿にかけた。白飯は問題ないが、黄土色と刺激のある匂いを放つ物体に違和感を覚えた。見た目と匂いが不味くても、味は別かも知れない。箸でカレーの乗った白飯をすくい、一口入れた。刺激のある味が舌から全身に伝わり、汗が噴き出た。
 一輝は金蓮が硬直したのを見て、心配になった。「大丈夫か」
 金蓮は箸でカレーと白飯を拾っては口に入れた。刺激のある味は慣れると信じたが、なかなか慣れない。
 2人の給仕が朝食を持って二人の前に現れた。一人は食事を持っていて、もう一人は二人がぬれない為に傘をさしている。傘を畳んで金蓮に近づいた。「金蓮様、既に食事を取っているのですか」
「ついでだよ、置いといて」やや呂律の回らない口調で指示した。
 給仕は食事を調理台に置き、傘をさして去った。
 金蓮はカレーを半分程食べると手を止め、一輝に差し出した。外の食べ物は何でも美味しいとは限らない。「食べる」一輝に尋ねた。
 一輝は食器を受け取り、箸でカレーをすくった。見た目は普通のカレーだ。辛口や賞味期限切れの商品を持ち込んだのか、疑念を覚えたが一口食べた。辛めな点を除いて普通のカレーだ。常世に来てから食事を取っていなかったのもあり、食が進んだ。
 金蓮は調理台に向かい、給仕が置いた朝食を食べ始めた。
「なあ」一輝は手を止めて金蓮の方を向いた。
 金蓮は給仕が持ってきた食事を半分食べ終えていた。「何か」
「おかんって人に会えないか」
 金蓮は食事を止め、せき込んだ。
「おかんは人を襲ってたって言ってたよな。男を襲ってたんなら、外に出てたってのは確かだ。オニの死体について知っているかも知れない」
「おかんは怖いよ、ヒトは野蛮だって連呼してたんだから、星宮がヒトだって分かれば殺しかねないよ」
 一輝はうつむいたが、すぐに顔を上げた。「何もしないよりいい」
 金蓮は一輝の目を見て、眉をひそめた。言っても聞かないと悟った。「分かったよ。でも死んでも知らないからね」適当に答えた。
「かかる時間は」
「墓宮と同じ位かな」
「なら半日位で帰れる、馬酔木との連絡も問題ない」
「だといいんだけど」金蓮は不安な調子で答えた。
 一輝と金蓮は食事を食べ終えると片付けて部屋に戻り、出かける準備をした。
 金連は一輝がぎこちなく着替えているのを見て、手伝った。
 二人は荷物をまとめ終え、共に部屋を出た。
 金蓮は受付は出かけるので荷物は部屋に運び、馬酔木が来た時には夕方に会うと伝言した。受付は伝を了承した。
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