第1話:堀越彦一の誕生と成長

文字数 2,054文字

 堀越家は東京の一等地に居を構えていたが1945年「昭和20年」3月の空襲で屋敷は燃え落ちた。そして、主人公の堀越彦一の父、堀越和男は、1949年「昭和24年」8月、堀越英治と堀越節子の長男として熱海で産声を上げた。堀越英治の実家の近い親戚に太平洋戦争で史上最強の零戦パイロットと呼ばれた堀越二郎がいた。

 堀越和男は父、堀越英治らと共に静岡の熱海に流れ着いた。そして堀越和男は地元の旅館に世話になり旅館の娘、伊藤美佳と仲良くなった。1970年3月、伊藤美佳20歳の時に結婚した。実の父の堀越和男は堀越の本家から金を分けてもらい資産家になった。そこで高杉旅館の古くなった離れを買い改装して住んで小説を書いた。

 しかし、自分の小説は売れず出版社から小説の賞の審査員として下読みと言って多くの原稿を読んで審査する仕事をした。そのため自分の部屋を出る時は、気分転換の散歩と唯一の楽しみの海釣りだけだった。伊藤虎吉とは正反対の静かな男だった。それでも以前書いた小説で新人賞を取った。しかし、その後は、いくら小説を書いても売れなかった。

 今のように出版社が宣伝してくれたりしてくれないので良い小説が必ずしも売れるとは限らなかった。古い純文学系の正統派小説であり玄人受けするが素人にはスリリング小説の方が人気があった。いつも静かで大声をあげる事はなく、いつも静かに微笑んでいた。その後1972年1月12日に長男の堀越彦一が誕生した。

 そして、その翌年1973年12月18日に長女の堀越百合が誕生し4人家族となった。堀越彦一の方は、理路整然と話をして弁舌も立つので1990年4月に熱海市役所に就職した。役所勤務では給料は安いが定時勤務であり意外と楽だった。また、伊藤美佳の祖父の伊藤虎吉が昔から株取引をして手堅く利益を積み上げていた。

 堀越彦一と、うまがあい仲良くして株の事を教えてくれた。また、伊藤虎吉の奥さんの伊藤多惠さんは以前から旅館を取り仕切って従業員に指示していた。伊藤虎吉さんは外に出て遊んでばかりだとぼやいていた。そして伊藤虎吉は仕事もでき、株で儲け、冬には温泉、それ以外の季節は魚釣りに仲間と出かけた。1991年5月に就職祝いだと言い車で伊東温泉に招待してくれた。

 その翌日、川奈ゴルフ場に連れて行ってくれた。そして、父、堀越和男らと共に4人でゴルフ場でラウンドしながら、ゆっくりと回った。ゴルフを終え風呂から出ると父と祖父は、麻雀室に行き21時過ぎまで仲間達の麻雀卓を囲んで楽しんだ。翌日、堀越和男の運転で浄蓮の滝や「わさびた田」を見学し熱海に帰った。

 車中で祖父の堀越英治が堀越彦一にソニー、トヨタと言った大型優良株の売買をして着実に稼げとアドバイスした。9月、伊藤虎吉は自分の車で堀越彦一を沼津港に連れて行き夜釣りを教えてくれた。釣れる魚は、アジ、イワシ、サバ、タコ、アオリイカ、メジナ、キスなど魚種も豊富だった。そして、夕飯のおかずや坂のつまみに母が魚をさばいてくれた。

 特にタコ、アオリイカの刺身は最高。小アジ、キスの天ぷら、いわしの塩焼き、メジナの煮付けは旨かった。そして伊藤虎吉が株関係の雑誌と本を持って来て、これを読むと良いと言われた。そして、役所を定時に帰ると株の本を毎晩、読んで重要なところは鉛筆で印を付けた。それ程、熱心に熟読した。やがて冬が来て1992年をむかえた。

 堀越彦一は、1月17日、有休をとり、父、堀越和男に連れられて小田原にある堀越家が世話なってるN証券に証券口座を開き百万円を入金した。2月の少し暖かい日、伊藤虎吉とその仲間7人と麻雀をやろうと行くと、堀越彦一が上手じゃないと言うので初心者グループに入った。伊藤虎吉と3人に仲間は真剣モードで麻雀を始めた。

 そして、初心者の2人に雀荘のマスターが基本的な役を教えた。例えば、ピンフ、タンヤオ、ホンイツ、チンイツ、トイトイ、チートイツの形を実際に見せて教えてから麻雀を始めた。すると覚えの早い堀越彦一が初心者グループで連続してトップ2回取った。それを見ていたマスターが君は筋が良いと言われた。18時まで麻雀を楽しみ夕飯を食べて解散となった。

 その後、2月、3月と麻雀に誘われ、4月には、堀越彦一は一般のグループ12人と対戦して、4位になった。そして、伊藤虎吉が麻雀は面白いだろと聞くと最高ですと答えた。1992年8月19日、証券会社の担当者から電話が入りソニー株の気配値が3600円と言われた。そこで4百株成り行き買い注文を出した。その直後、証券会社の担当者からの電話で買い144万円で買えたと連絡が入った。

 その結果、投資残金が6万円となった。その後も毎月、麻雀に誘われて、10月3日には12人と対戦して優勝した。その優勝祝いの席で伊藤虎吉が麻雀の攻めと守りとつきを絶対に忘れるなと言い、これが投資でも役に立つんだと言った時の伊藤虎吉の厳しい顔は、今でも忘れない。その後、伊藤虎吉もソニー株を買ったと後日、教えてくれた。
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