第2話 松島の代筆(加筆修正あり)

文字数 2,126文字

 みいこが執筆作業を放棄した。だから私(松島)が代筆する。そんな必要もないとは思うが、書かないとみいこがうるさいのと、私が非常に暇であることから、今に至っている。
 ただ、私はものを書く習慣がないから、正直何も書きたいことがない。そこで、みいこが今までどんなものを書いていたか、読ませてもらった。読んでいると、度々私が登場している場面を見つけた。そして、その描写ぶりは私を全く知らない人に誤解を生じさせるものだと判断した。それらを訂正していく。そして、今後私が登場したとしても、私の発言と行動は必ずしも正しく描かれていないことを心にとめていただけると幸いだ。では本題に入る。
 
 まず、私が初めて登場した①の第2話について語る。因みに①の第1話に出てくる「他三人」の中に私はいないので、やはり初登場は①の第2話ということになる。ここに関しては、私の情報として猫を飼っていることとカバを飼っていないことしか分からないだろう。また、私が人生の19割損しているというのは、あくまでみいこの主観にすぎない。みいこ理論でいえば、私はもう少し人生を損しているはずだが、今回はそんなことを訂正したいのではない。
 
 さて私がまともに登場するのは①の第4話である。ここで、私は「良く言えば私の分身、悪く言えば私の右腕」と紹介されている。これは意味が分からないので無視する。そして問題の場面は、私が「金川、期末の勉強する気ねえだろ」と言っているところだ。なぜ少女(みいこ)の戯言という題で自分の名前を明かしているのに、ここで仮名を使ったのかは理解に苦しむが、そこはいい。
 私は「ねえだろ」なんて言わない。「ないだろ」と言う。私は男兄弟がいない。だから「ねえだろ」なんて言うはずがないのだ。①の第4話の訂正箇所はこの辺りだろう。

 次に②の第3話で私がぬるっと登場する。私は憶えていないが、みいこの部屋には不法侵入者が多いらしく、その人等をみいこがほったらかしにしており、そのことで私がみいこを叱ったらしい。この件について、私は記憶がないので、断言はしないが、私はこういうタイプの相談の受け方をしない。みいこが本気で困っていたなら、それに寄り添うことはあっても、責めることはしない。このような相談の受け身の取り方を非難しているのではない。私はしないというだけだ。私は人生で人から悩み相談を受けた経験が絶望的に少ないので、ただ聴くことしかできないのだ。
 ここまで読んできて、みいこは私を強い女として描きたがる傾向があるように思える。まあ、完全なノンフィクションではないからキャラ付けや誇張は仕方ないが、私が物申す場を設けてくれたのだから私も言いたいことは言わせてもらう。
 
 さて③の第1話では汲田とみいこと私で話が繰り広げられるのだが、みいこも「面白いものは骨」だと思っていたことは嬉しいような、こそばゆいような感じがした。まあ、私とみいこが本人には言わないだけで好き同士なことなんて、読者は薄々気づいていると思うので、あまり多くを語るつもりはない。さらに、みいこが私のことを「優しい」と評価してくれるのは、素直に嬉しいが、「蛇つかい座」よりも優しいと言われると、それは大げさすぎて、逆にあまり信用できない。これもみいこなりの照れ隠しなんてこともお見通しではあるのだが。

 最後に、④の第2話の田宮とみいこと私のトランプに関する話について書きたいと思う。
一度みいこについて物申すという本来の目的からは逸れるが、みいこが丁寧に説明することをサボっているため、私は読者が気になっていることを明らかにする義務を負わされている。田宮の下の名前は秀逸と書いて、しゅういちと読む。これくらいは憶えていないと人に興味がないと思われかねない。みいこの名誉のために言うが、みいこは人並みに人に興味がある。
 さて、次は私の名誉のために、みいこ視点の話を訂正していく。このトランプをしようとしていた時間、私はあまり喋っていないのだが、その中でこんな発言をしていると書かれている。
「私たちならどんなトランプだってできるよ。ソリティアだって、スピードだって」
 確かに私は田宮を励ますためにこのような趣旨の発言をした。ここだけを切り取ると、励ましたいという思いが先行して、夢物語を言っているように思われるかもしれない。しかし、田宮は常に5セットのトランプを所持しているという事実がここでは隠蔽されている。つまり、田宮・みいこ・私の三人がそれぞれソリティアをすることはできる。また、スピードもトランプが2セットあれば3人でできないこともないはずだ。私は夢見る少女ではないことだけは読者に知っていてほしい。

 みいこは気ままに語っている。だから、私のこんな訂正などものともせずに、突き進んでいくのだろう。スズメバチみたいに。
 みいこのようなことを言ってしまった。みいこの例えはたまによく分からない。
でも、そんなみいこのことが好きだ。

 
 最後の一文はみいこが書いた。

 と書くことで私(松島)は照れ隠しをした。

 この文章はみいこによって書き換えられた箇所が複数ある。

 私はまだまだ素直になれそうにない。

 みいこはうるさい。



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